家庭における2000年問題
経済学科3年4組中山信哉
参考文献 1999.6.6 第3版 北島 健雄 kitajima@asahi-net.email.ne.jp
一、はじめに
コンピュータ2000年問題は、単にコンピュータだけでなく、一般の家庭にまで大きな影響を及ぼすことが懸念されています。
アメリカ赤十字社は、次のようなことを警告しています。
- 少なくとも数日から1週間分の防災物資(食糧、水、薬)を用意すること
- 大晦日までに車のガソリンを満タンにしておくこと
- いくらかの現金を手元に置くこと
- 防寒具を揃えること
- 懐中電灯と予備の乾電池を用意すること
また、アメリカ政府が年末年始の海外旅行を控えるよう、声明を発表しました。
2000年問題は、一般の家庭にどのような問題を起こす可能性があるのでしょうか。
二、コンピュータの2000年問題とは何か
昔、コンピュータが非常に高価だったため、資源節約として、1985年を85のように下二桁で表すことが普通でした。
この方法だと2000年になった時、00となり、コンピュータはこれが1900年(もしくは他の間違った年)と認識してしまいます。
このため、プログラムは、おかしな結果を出したり、異常停止してしまうことになります。
また、他にも、2000年がうるう年であることを正しく認識できないかもしれない問題など、いろいろあります。
最近になって、より大きな問題として現れたのが、埋め込みシステムといわれるチップです。
これは、指先程度の大きさの電子部品なのですが、プログラムが動いています。
パソコンなどと違い、機械や設備に埋め込まれて使用されています。
家電品でも、電気がまなど、「マイコン制御」とあるものは、これを使用しています。
これらの埋め込みシステムの中にも、一部2000年問題を引き起こすものがあることが、わかりました。
三、2000年問題の修正の難しさ
現在、多くの企業、組織で2000年問題の修正作業が行なわれています。しかし、その見通しは楽観できるものではありません。
- 重要なプログラムになるほど、規模が大きく、作業に時間がかかる。
- 対象プログラムが古く、修正に古い技術が必要だが、分かる人間がいない。
- プログラムの修正や作成は、大変時間がかかり、計画通り進みにくい。
- 埋め込みシステムの場合、対象の数が膨大で、しかも機械の中など修正しにくい場所にある。
- 修正したものに、新たなプログラムミスが生まれやすい。
2000年まで1年を切った今では、修正よりも、2000年問題の発生を想定した「危機管理計画」を作成することが重要となっています。
日本銀行も電気等が使用できなくなった事態を想定した「危機管理計画」を作成中です。
四、2000年問題の恐さ
2000年問題の恐さは、現代社会が、コンピュータネットワークに高度に依存していることから起ります。
あなた自身がコンピュータを使っていなくても、あなたの生活はコンピュータネットワークなしには成り立ちません。
水道局のコンピュータシステムが止まれば、水が使えません。
水道局のコンピュータが2000年問題に対応していても、電力会社のシステムがストップすれば、同じことです。
この図式を、世界規模で眺めると、問題がもっと大きな事が分かります。
日本は食糧、エネルギーなどをほとんど輸入に頼っています。
石油原産国の産油プラントのシステムがストップすれば、大変なことになります。
これは、杞憂ではありません。次の具体例をあげておきます。
- アメリカ第4位の石油メジャー「シェブロン」が、2000年対応の修正範囲が広すぎるので、対応不可能を宣言しています。
- 4月24日、自民・自由両党の「コンピュータ2000年問題検討チーム」が中東産油国の2000年問題対策支援策をサミットで議論するように首相に要請。
- 四国電力と沖縄電力が、2000年問題に備えて、火力発電用燃料備蓄量を積み増し。
さらに、プラントが無事でも、港までの輸送、タンカーへの積み込み、タンカーの航海、日本での荷降ろし、精製、各地への配送、など多くのクリアすべき関門があります。
食糧はどうでしょうか。
- FAO(国連食糧農業機関)は、2000年問題によって世界の農業、食糧供給が脅かされているとする声明を発表しています。
FAOは、種子の供給から配送ネットワーク、市場情報システムまでがこの問題の影響を受けやすく、「2000年バグは、長年農民を脅かしてきたイナゴやバッタと同様の脅威となる恐れがある」といっています。
これは、最近の農業は、収量を増やしたりするために、バイオテクノロジーによって作られたハイブリッド種子を使用しているからです。
五、日本での状況
日本での2000年問題に対する危機意識は、驚くほど低いです。
最近ようやく、政府機関や企業などで、2000年問題に関する取り組みを公開しはじめました。たいていは、次のようなものとなっています。
- 修正作業は、2000年までに終了予定。
- プログラム中に時間に関わる部分がないので、問題なし。
残念ながら、これで問題なしとはできません。
- プログラムの修正作業というものは、まず計画通り進みません。
また、修正が終わったプログラムは必ずミスを含んでいるので、さらにテストが必要です。
実際、3月にアメリカのニュージャージー州政府で、修正済みのプログラムを使用して、36億円の生活保護費の支払時期を間違うというトラブルが発生しています。
- プログラム中に時間が関わる部分がなくても、問題は起ります。
時計機能を持っている埋め込みシステムの場合、どう使われているかは関係なしに、2000年問題を引き起こす可能性も指摘されています。
日本より1年は早く対策の始まったアメリカですら、赤十字社が冒頭のような警告を発しています。我々も同じような備えを考えるべきではないでしょうか。
六、何が起るのか?
誰にも分かりません。ただ、現時点では、何も起らないだろうと言う人はいません。
想定しておくものとしては、次のようなものがあげられます。
- 上下水道、ガス、電気、電話のいずれか、もしくは複数が止まる。
- 銀行からお金が引き出せなくなる。
- 自動車、飛行機、電車などの輸送機関が止まる。
- 店頭の食品、必需品の在庫が補充されない。
影響のおよぶ期間に関しては、いろいろな意見があります。
2000年問題を警告している本に、「最悪を想定して、最善を願う。」と言う言葉がありました。まさに、これにしたがって、備えをするべきだと思います。