古賀 雄也
Yuya KOGA
近年,モータリゼーションの進展などの影響から,全国的にバス路線の統廃合が進められている.そのため,高齢者などの交通弱者にとって十分なサービスを受けられない地域が増加傾向にある.本研究では,合志市地域公共交通連携計画における交通社会実験での公共交通サービスについて,フォローアップを行うことで,今後の合志市の地域公共交通のあり方を展望することを目的とする.評価手法として,交通社会実験の各種公共交通手段の利用実績やヒアリング調査,収支分析,またQOM(Quality of Mobility)指標を用いた個々人の交通の質を公平性の視点から客観的に評価する手法などを用いて,平成21年度に実施された交通社会実験の評価を行う.
KeyWords:local public traffic project, community bus, Quality of Mobility, cost balance,
近年,バス事業を中心とした地域公共交通の変化が著しくなってきている.モータリゼーションの進展,少子高齢化の影響から公共交通の利用者数が減少して,経営状況が厳しくなり,バス路線の廃止や見直しなど公共交通サービス水準の低下を引き起こしている.そのため,廃止路線の代替手段として,自治体の補助により運営されるコミュニティバスが増加傾向にあるが,それでは地域が補助する財政負担が大きいことから,公的補助の抑制により,最小限の公共交通サービスにとどまっている.このままでは,高齢者などの交通弱者にとって不便な地区が存在し,地域間格差の増大を招く恐れがある.地方の公共交通の現状から,平成19年10月に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」の施行,平成20年度に「地域公共交通活性化・再生総合事業」が創設され,公共交通に関する考えを収益事業から公益事業へと転換し,法体系の包括や協議会に対する補助・支援をすることで,地域でのより円滑な公共交通計画の策定が可能になった.
合志市についても,同様の問題を抱えており,平成20年5月に「合志市地域公共交通協議会」を設置し,「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」第5条の規定に基づいた「合志市地域公共交通活性化・再生総合事業計画」を実施している.これは,公共交通の空白地区・不便地区の解消し,既存の交通機関を生かしつつ,補完する交通手段を組み合わせることで,公共交通の利便性の高いまちづくりを目指すものであり,今後の合志市のよりよい公共交通体系を検討するために,平成21年度から3年間の期間を設けて,交通社会実験を実施している.
本研究では,平成21年度合志市地域公共交通活性化・再生総合事業計画で実施された交通社会実験で試運行したバスの利用実績や実験期間中に実施した同乗ヒアリング調査による利用者意識調査,各種公共交通手段の収支分析などを実施し,さらにQOL(Quality of Life)のうち移動モビリティに関する指標をQOM(Quality of Mobility)として定義し,個々人の交通の質を公平性の視点から客観的に評価するQOM指標を用いた合志市の公共交通サービスを評価し,合志市の公共交通体系を検討することで交通社会実験のフォローアップを行う.