熊本市中心市街地における来街者の回遊特性に関する調査分析

An analytical study on pedestrian excursion behavior in the center of Kumamoto city

久保 佳乃
Yoshino KUBO

 熊本中心市街地では歩行者通行量や小売販売店舗の減少が続く中,来街者の回遊を促すような歩行空間の計画やエリアマネジメントが求められている.本研究では歩行者通行量に関する実測調査,歩行者の回遊に関するインタビュー調査を用いて来街者の回遊行動の実態を分析することを目的とする.その結果,平日と休日の中心市街地への総入込者数の実態,来街時の利用交通手段ごとの回遊行動の特性などが明らかになった.

KeyWords:excursion behavior, city center, gate count survey

 

 近年,地方都市部では,居住者や商業活動の郊外化による中心商業地域の衰退が指摘されており,来街者の回遊を促すような中心市街地の歩行空間の改善が求められている. 熊本市においても同様に,中心商店街の歩行者通行量や小売販売額の減少,低・未利用地の増加など,都市活力の低下が懸念されている.その中で,九州新幹線鹿児島ルートの全線開業などを見据え,平成23年度までの5ヵ年を計画期間とした熊本市中心市街地活性化基本計画1)をはじめとして, 様々な再開発の計画が議論されており,歴史・文化・既存の都市機能を最大限に活かし,中心市街地の新たな魅力と活力を創造していこうとしている. 図1.1
 本研究の対象エリアは,図1.1に示す熊本市中心市街地活性化基本計画1)の対象エリアのうちの熊本城地区,通町地区,桜町地区,の中心市街地3つのエリアである.熊本城地区は,熊本のシンボルである熊本城や多くの歴史文化施設があり,多くの観光客で賑わうエリアで,通町地区は,上通り・下通りといった商店街が賑わっており,桜町地区は,狭隘ながら魅力的なまちなみが形成されている.
 本研究では,熊本市中心市街地における歩行者回遊行動の実態を,独自に実施した歩行者通行量に関する実測調査と歩行者の回遊に関するサンプル調査から明らかにすることを目的とする.特に来街交通手段別に回遊行動で差があるという仮説のもと分析を進める.これによって,来街者の誘発や,回遊の拡大を促進する施策や施設設置のありかたを検討することができると考える.そのために,2章では,本研究で用いる調査データ,2008年に行われた歩行者回遊行動を把握するための中心市街地内における回遊ルートサンプル調査とそのサンプルを拡大するための断面交通量調査について述べる.3章では,回遊ルートサンプル調査の歩行者通行量の観測値によって拡大する方法を適用し,入込者数などの実数の推計を行う.4章では,主として利用交通手段と回遊行動との関係性を明らかにする.