武蔵ヶ丘団地の開発経緯とOld-Newtown問題の現況に関する基礎調査

A Basic Research on the Progress of Musashigaoka Newtown Development and Recent Subject

石川琢也
Takuya ISHIKAWA

 郊外住宅団地が開発してから30年ほど経過した現在では,人口減少や住宅・周辺施設の老朽化,住民の高齢化,地域コミュニティの減少,公共交通サービスの低下,近隣商業施設の閉鎖,段差等の団地内移動の困難等のOld-Newtown問題が発生している.今後,高齢化がさらに進行すると予測されていることから,問題の深刻化が懸念されている.本研究は武蔵ヶ丘団地を対象とし,開発経緯や地勢,人口や交通,経済活動変化の推移を示した.また,郊外住宅のアンケート調査から得られたデータを比較・分析し,回答者の環境や価値観の違いから生まれる評価の差やコミュニティ形成の評価に対して,どのような要因が影響を及ぼしているか等を明らかにした.

KeyWords:Old-Newtown ,covariance structure analysis,assessment, community, population composition

 高度経済成長期,昭和30年代後半頃から,中心市街地に人口が集中し,一世帯当たりの人数も減少傾向であったことから,住宅の需要が急激に増加した.住宅難解消のため,中心市街地だけでは住宅の供給が追い付かず,郊外に多くの住宅団地が一斉に開発され始めた.その結果,郊外住宅団地の特徴としては,住宅の形式や価格帯等が均一的であり,ほぼ同世代の世帯主や家族構成,特定の所得層が入居する形となった.近年,郊外住宅団地は開発してから30年ほど経過した結果,人口減少や住宅・周辺施設の老朽化,住民の高齢化,地域コミュニティの減少,公共交通サービスの低下,近隣商業施設の閉鎖,段差等の団地内移動の困難等の様々な問題が発生している.これらの問題はOld-Newtown問題と言われ,高齢化が進行することで今後さらに深刻化するであろうと危惧されている.そのため,Old-Newtown問題に関する研究は世界的に進められており,
解決する方法として,1)人口構成の適正化,2)歩いて暮らせるまちづくり,3)コミュニティの希薄化の改善,この3つが重要であろうと考えられている.
 本論文では,熊本市郊外にある住宅団地において武蔵ヶ丘団地を調査・分析の対象地域とした.武蔵ヶ丘団地は県内で開発された住宅団地の中でも20haを超える大規模な団地であり,住宅地として充分な施策を整備することが可能な地域であったため,Old-Newtown問題が最も顕著に表れている可能性がある.本地域とその他の郊外団地でアンケートを実施した.アンケートによって得られた住宅や周辺環境,周辺施設の評価,転居理由は,武蔵ヶ丘団地の住民がOld-Newtown問題を意識している結果になると予測している.本地域の開発経緯や地勢,人口,商業の推移等を調査し,アンケートの分析結果と照らし合わせながら,武蔵ヶ丘団地内で起きているOld-Newtown問題を把握する.但し,アンケート結果だけで提案まで行うことは困難であると考えられるため,本研究では,武蔵ヶ丘において1)人口構成の適正化,2)歩いて暮らせるまちづくり,3)コミュニティの希薄化の改善,この3つの解決法が適用可能であるか、対象地域の基礎的な情報を分析し,問題を把握することを目的としている.