中心市街地の活性化施策に資する回遊行動のモデル化

A study on Pedestrian Excursion Behavior Model for Spatial Planning in the Center of the City

牧 美里
Misato MAKI

 熊本市の中心市街地では居住・商業機能の郊外化が進んでおり,来街者の減少や商店街の衰退などの問題が生じている. これら問題を解決するためには,来街者の回遊行動を促すことによって活性化を促進することが有効である.そのためには, 来街者の回遊行動について深く分析しなければならない.本研究では,中心市街地への来街者がどのような目的で訪問したか, どのようなルートで回遊したか,どのくらいの時間滞在したか,などを表現できる回遊行動モデルを作成することを目的とする. このモデルは,目的地選択モデル,滞在時間選択モデルから成るモデルである.

KeyWords:Central city ,Gate count survey, Migratory behavior, Nested logit model, Weibull distributtion

 近年,熊本市では,居住者や商業活動の郊外化による中心商業地域の衰退が指摘されており,実際に中心商店街の歩行者通行量や小売販売額の減少,低・未利用地の増加等,都市活力の低下等が問題となっている.この問題解決のために来街者の回遊を促すようなまちづくりが求められている.なお,現在,九州新幹線鹿児島ルートの全線開業や,政令指定都市化等,大きな節目を迎えている熊本市は,平成23年度までの5ヵ年を計画期間とした熊本市中心市街地活性化基本計画1)の第一計画を終え,第二期案を策定し,平成24年4月の政令市の移行にあわせて第二期の計画を策定し,これまで以上に・文化・既存の都市機能を最大限に活かして中心市街地の新たな魅力と活力を創造していこうとしている.
 本研究の対象エリアは,図1に示す熊本市中心市街地活性化基本計画の対象エリアのうちの通町・桜町地区である.
 中心市街地の活性化施策の一つとして,来街者の回遊を促すことが考えられる.そのためには,歩行者の回遊行動の実態を把握し,回遊行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることが必要である. 本研究では,中心市街地における回遊行動調査やゲートカウント調査のデータを用いて,歩行者の回遊行動を分析し,中心市街地の来街者がどのような目的で中心市街地を訪れたか,どのようなルートで回遊したか,どのくらいの時間滞在したのか,などを表現できるモデルを構築することを目的とする.
 本研究では,以下の全5章の構成で分析手法と実証例の解説を行う.2章では回遊行動調査の概要とその結果分析によって来街者の回遊行動を把握する.また,3章では回遊行動モデルの理論展開について目的地選択モデル,滞在時間選択モデル,回遊行動モデルデータ拡大に分けて説明する.さらに,4章ではそれぞれのモデルの推定結果について述べ,その考察を行う.最後に本研究の成果と今後の課題について5章でまとめる.