アクティビティ・ダイアリー調査データの分析方法とその活用策についての一考察

A Study on Some Analytical Methods of Activity Diary Survey Data

松尾 紀美
Kotomi MATSUO

 近年,少子高齢化や過疎化といった社会問題が深刻化している中,交通計画においてもこれまでとは違った視点からの対応が求められている.その方策の一つとしてアクティビティ・ダイアリー調査(Activity Diary Survey)を用いた分析が行われている.アクティビティ・ダイアリー調査は,交通行動の意思決定構造の解明や活動連結性の理解に有効とされており,様々な社会問題と関連づけて分析が行われてきた.本研究では,開発から40年が経過して,今やオールドニュータウンとなった熊本市武蔵ヶ丘を対象として,住民に対してアクティビティ・ダイアリー調査を行い,その結果をもとにオールドニュータウンに住む人々の活動の特徴を明らかにすると共に,調査データの分析方法と活用策について検討を行う.

KeyWords:Activity analysis, Activity diary survey, Activity time allocation model, Old-Newtown Selection model continuous activity,

 現在、人口減少・少子高齢化,情報化,環境意識の高まりなど経済社会が大きく変化してきている中で, 都市交通計画においてもこれまでにない視点からの対応が求められてきており,そのために様々な計画ニーズに対応した調査体系・データ活用 ・課題検討が求められている.その方策の一つとして,アクティビティ分析を活用することが考えられる.アクティビティ分析(Activity-Based Approach)の研究は,1970年代以降に欧米の交通行動研究分野において,交通需要を諸活動の派生需要として捉えることを目的に発展してきた.この分析は,世帯交通調査(以下,HTS)の形式の一つとして,1日の活動と交通のすべてを記入する形式のアクティビティ・ダイアリー調査(Activity Diary Survey,以下AD調査) を実施し、分析対象データを入手することが特徴である。
 AD調査では,世帯単位あるいは個人の活動を細かく把握できることからこのデータを用いて,生活活動相互間の関連性および,各活動と交通行動特性との因果関係を把握することによって,各活動を行うための派生需要である交通発生メカニズムの分析へとつなげることが可能である.この考え方に基づき,近年では全国各地でAD調査が行われており,様々な社会問題と関連づけた研究が行われている.
 本研究では,オールドニュータウン問題と関連付けて研究を行う.オールドニュータウン問題とは,高度成長期に開発された住宅団地の多くが,抱えている問題である.開発から40年が経過した住宅団地は,住宅やコミュニティ施設など都市基盤の老朽化が進み,改修や建て替えを必要とするところが多くなっている.また,商業施設などは,モータリゼーションの成熟とともに,求心力も郊外型店舗に奪われつつあり,機能の見直しが求められている.さらに,少子高齢化の中で,特に高齢化率の上昇が他地域と比較して顕著であり,転出入も少ないため,今後さらに高齢化が進むものと予想される.このような多くの問題が,今後さらに進行することにより,将来的にまち全体の機能が低下することが危惧されている.このようなオールドニュータウンの抱える様々な問題を解決する方法としては,1)人口構成の適正化,2)歩いて暮らせるまちづくり3)相互扶助型のコミュニティ形成が必要とされている.これらのうち本研究では,主として3)の現況を明らかにするために,オールドニュータウンに住んでいる人々の活動の特徴を把握する.