荒尾市における地域公共交通連携計画の策定と評価
A study on the evaluation of the cooperation plan of transportation planning in Arao city
一本 将吾
Shougo ICHIMOTO
近年のモータリゼーションの進展や人口減少,少子高齢化,地方部の過疎化等の影響により, 鉄道やバスなどの公共交通機関の利用者数は減少しており,それによって公共交通サービスの低 下に伴い交通サービスに対する地域間格差が社会的な問題となっている.本研究の対象地である 荒尾市もこのような問題を抱えており,この問題に対応するために荒尾市地域公共交通活性化協 議会を設立した.本研究では荒尾市の交通実態を様々な調査を通して把握し,その結果を基に公 共交通連携計画を策定する.また,連携計画を個々人の交通の質を公平性の視点から客観的に評 価する手法であるQOM(Quality of Mobility)を用いて連携計画の評価を行う.
KeyWords:Capability Approach,Quality of Mobility,Transportation service level,Functioning,Fairness
近年,モータリゼーションの進展や人口減少,少子高齢化などの影響により鉄道やバス等の公共交通機関の利用者数は減少しており, それに伴いバス路線の廃止や運行頻度の削減などの公共交通サービス水準の低下が行われている.公共交通の廃止やサービス水準の低下は地域住民の移動に制約を生じさせ, 日常的な買物や病院等の最低限の生活を続けることを困難とさせる.
荒尾市についても同様の問題を抱えており,近年のバス路線の利用者は毎年2~3%減少し,それに伴ってバス路線の運行頻度も減少している. 荒尾市は,この問題に対応するために2012年4月に「荒尾市地域公共交通協議会」を設置して,「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」 に基づいた地域公共交通総合連携計画の策定を2013年3月に行うことを目指してきた.本研究では,本研究室が荒尾市で継続的に実施してきているパーソントリップ調査や住民アンケート, 地域WS,バス乗降調査から得られたデータを基に,荒尾市の地域特性や生活実態等を把握し,地域WSから得られた地域住民の意見を参考にしながら, 連携計画の策定を支援した.さらに策定された連携計画に対して,総合的なQOL(Quality of Life)のうちの移動モビリティをQOM(Quality of Mobility) として定義し,本研究で開発し,有効性が検証され,これまでにその適用実績があるCapabilityアプローチに基づいたQOM分析を適用してその評価を行うことを目的とする.
本論文は全6章からなる.2章では対象地域である荒尾市の公共交通の実態と本研究室で実施・協力してきた一連の交通に対する実態および意識調査について述べる. 3章では2章で行った各調査の調査結果を分析したものを示す。4章では各調査の調査結果を用いて荒尾市の公共交通連携計画案を提案する. 5章では本研究室で開発されたQOM指標の各サブモデルの説明とQOM指標を用いて,提案した公共交通連携計画案の有効性の検証を行う. 最後に6章で本研究の成果と今後の課題についてまとめる.