松本 健志
Kenji MATSUMOTO
熊本市は平成24年6月1日より中心市街地の全駐輪場において有料化を実施した.新たに11箇所の民営駐輪場が整備され, これまで無料で開放されていた駐輪場は有料化もしくは廃止された.本研究では,平成24年10月10日に熊本市中心部を対象とし, ①有料駐輪場の利用実態調査,②駐輪場利用意識調査,③放置駐輪調査を同時に実施した.これらの調査は,駐輪場の利用実態, 駐輪後の利用者の回遊行動,駐輪場有料化や駐輪政策に対する評価,有料化後の活動の変化を明らかにすることを目的としている. さらにこれらの調査データを用いて,自転車利用者の駐輪場選択行動を説明する駐輪場選択モデルの構築を行う.
KeyWords:metered parking system ,illegal parking ,multinomial logit ,the center of Kumamoto City
近年,排気ガスを出さないクリーンで健康的な乗り物として自転車利用を促進する動きが高まっている.また,家計において経済的負担が少ないことも大きな長所であり,主要交通手段としてはもちろんのこと, サイクル&ライドと呼ばれる端末交通手段としての利用も盛んである.大都市でも自家用車から自転車へ交通手段を転換する人が増加しており, 自転車の交通手段としての利便性・経済性の高さに注目が集まっている. 熊本市においても「自転車でお出かけしたくなるまちづくり」を基本理念に,1) コンパクトなまちづくり,2) 中心市街地活性化、3) 低炭素都市づくり, 以上3つを目的として掲げ自転車の利用を促進している.しかし同時に,自転車は都市部において様々な社会問題を引き起こしている. 商店街での自転車の放置,利用マナーの悪さ,交通事故など解決しなくてはならない問題も多い. 市はかねてからこれらの自転車に関する諸問題に取り組んできたが,自転車交通量が多いことや自転車走行空間の整備が未だ十分ではないことから, 問題の根本的な解決には至らなかった.そこで自転車利用環境を整備する目的で,市は平成24年6月1日より1) 放置駐輪禁止区域の拡大,2) 中心市街地の全駐輪場の有料化,の2つの政策を実施した.放置駐輪禁止区域が拡大したこととそれに伴って放置駐輪の取り締まりが厳しくなったことによって市街地の様子は大きく変化した. 路上にあふれていた放置自転車は大幅に減少し,現在ではほとんど見られなくなった. また, 施策により新たに11箇所の民営駐輪場が整備され、市営の5箇所と合わせて計16箇所の駐輪場が稼動を始めた.各駐輪場はそのアクセス性の違いなどからいくつかの料金体系に分かれている. しかし実際のところ,これらの駐輪場の利用実態は利用率や利用時間帯などによって駐輪場ごとに大きく異なっており,個人の駐輪場選択には料金以外にも様々な要因が起因していると考えられる. 本研究では,有料化が実施された中心市街地の全駐輪場を対象として利用実態調査と利用者の意識調査を行い,それらのデータの分析を行うことで、 1) 駐輪場の利用実態と,2)駐輪政策に対する利用者の意識を明らかにする.さらに,3) 自転車利用者の駐輪場選択モデルを推定することにより, 人の駐輪場選択に影響を及ぼしている要因を抽出することを目的とする.