渡邊 浩平
Kouhei WATANABE
熊本市の中心市街地では居住・商業機能の郊外化が進んでおり,歩行者通行量や商店街店舗数の減少といった問題が生じている. これらを解決する案として,来街者の回遊行動を促進することによって,中心市街地を活性化させることが考えられる. そのためには,来街者の回遊行動について深く分析する必要がある.本研究ではまず,中心市街地への来街者がどのような目的で来街し, どのような施設を訪問し,どの程度の時間滞在したか,などを表現できる回遊行動モデルを作成する.その上で,ある施策を行った場合に, 現況と比較して回遊行動がどのように変化するかを予測することを本研究の目的とする.
KeyWords:Central city ,Gate count survey, Migratory behavior, Nested logit model, Weibull distributtion
1.1研究の目的 近年,熊本市では,九州新幹線鹿児島ルートの全線開業や政令指定都市への移行といったように,本市を取り巻く環境が大きく変化している. それによりさらなる都市としての発展が求められている.しかし一方で,居住者や商業活動の郊外化による中心商業地域の衰退が指摘されている. 実際に,商店街通行量調査と熊本市商業統計によると,図1.1,図1.2に示すように平成3年を100とした場合,熊本市中心市街地の歩行者通行量の平均値は平成22年までに約30%減, 商店数,年間販売額も平成19年度までに約30%減少していることが分かる. これらの問題解決のために,熊本市は現在,平成23年度までの熊本市中心市街地活性化基本計画1)の第一計画を終え,平成24年4月から平成29年3月までの5ヵ年を計画期間とした第二期の計画を策定し, さらに政策形成力の向上を目的として平成24年10月に熊本市都市政策研究所を設置するなど,これまで以上に中心市街地の活力を向上させていこうとしている. 中心市街地区域の活性化というような大規模な政策では,事前にその政策を打ち出した場合の効果と影響を十分に検討する必要がある. 中心市街地の活性化させる施策の一つとして,来街者の回遊を促進することが考えられる.そのためには,歩行者の回遊行動の実態を把握し, 回遊行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることが必要である. 本研究ではまず,中心市街地における回遊行動調査やゲートカウント調査のデータを用いて,歩行者の回遊行動を分析し, 中心市街地への来街者がどのような目的で中心市街地を訪れたか,どのようなルートで回遊したか,どの程度の時間滞在したのか, などを表現できるモデルを構築する.その後,ある回遊促進のための施策を行った場合に,現況と比較して来街者の回遊行動がどう変化するかを, 構築した回遊行動モデルを使い予測することを本研究の目的とする.本研究の対象エリアは,図1.3に示す熊本市中心市街地活性化基本計画の対象エリアのうちの通町・桜町地区である.