荒尾市における乗合タクシー導入前後のアクティビティ変容

A Study on The Changes In Activities by Introducing of SharedーTaxi In Arao City In-stead of Route Buse Shared-Taxi in Arao City Instead of Route Buses

田之上 和輝
Kazuki TANOUE

 Arao city started shared-taxi service as an alternative of ordinal route bus servies October 1, 2013. Shared-taxi system is already introduced in Hirai and Fumoto suburb areas of the city. We couducted a survey to evaluate transportation services to clarify the activity of the inhabitants before and after introducting shared-taxi by using Daily-Activity-survey and analyze the changes of activities by the introduction of shared-taxi

KeyWords:Activity-Daily-survey, Space-time prism, Bayesian network-analyze,

Bayes' theorem  

近年の鉄道やバス等の公共交通機関の利用者数の減少に伴い,バス路線の廃止や運行頻度の削減など公共交通サービス水準が低下している.しかし,高齢者の移動手段として公共交通機関はその維持や改善が必要であるが低需要による経営難の現状がある.荒尾市でも同様の低頻度サービスの問題を抱えており,需要が少なかった3つのバス路線を廃止し,2013年10月1日にはその代替サービスとして乗合タクシーの運行を開始した.
 本研究では,乗合タクシー導入地域である荒尾市平井・府本地区を対象に,乗合タクシー導入前後の住民のアクティビティの変容を明らかにするためにアクティビティ・ダイアリー調査(Activity Diary Survey,以下ではAD調査と記す)と交通サービスの評価に関する調査を実施し,乗合タクシー導入によるアクティビティの変容について分析を行う.
 従来のAD調査に関する研究の特徴や今後の課題について,西井1)らは,近年の段階的交通需要予測手法が抱える問題点を明らかにした上で,AD調査の設計やデザインの検討を行い,実際の調査結果をもとに,交通行動分析におけるAD調査データの有用性の検証を行っている.その中で,休日の活動と交通行動における時間利用パターンに着目し,都市圏休日行動に関する時空間特性の具体的な実態把握とその需要構造の解明のための分析モデルとして,8個の活動項目の活動時間を推定するために,活動時間配分モデル化を試みている.その結果,土,日曜日の生活行動の活動時間配分を規定する要因に有意な差が現れたことや,土日2日間を一括して扱うモデルが最も現況再現性が高くなるなど, AD調査によって都市圏休日交通の実態分析に有用な知見が得られることを示している.高比良ら2)は, 活動が行われる場所への移動プランを自動的に検索する機能を交通計画で用いられる時空間プリズムに即した移動制約条件を設定することで,移動時間も含めた活動可能時間を算出し,新たな予定を組むことが可能か判断するスケジュール管理アプリケーションの実装と実験を行った.この研究では,生活行動実態把握としてアクティビティ調査を実施し,解析を行っており,アクティビティデータの収集による交通シミュレーション活用の必要性を示した.
 福田3) ,4)らは,平日活動に起因する要因が休日の時間利用を規定するとした上で,平日の時間利用価値評価からの影響を潜在変数モデルとして表現し,これを時間配分モデルに統合して活動時間価値を推計する方法を提案した.分析を通して社会生活基本調査によるアクティビティ調査を行い,平日の時間利用評価が休日活動の時間配分に影響を与えている可能性,及び,そのような影響を考慮して余暇活動時間価値について検討を行うことの必要性は示唆されたとしている.また,今後増加すると考えられるアクティブ・シニア層の交通行動分析を,シニア夫婦世帯を対象とした活動時間配分モデルに関する基礎的な検討を行った.所得制約と時間制約の2つの制約を考慮した活動時間配分モデルを構築し,社会生活基本調査ら得られた世帯の時間利用データを用いてモデルの有効性を示した.さらに,施策シナリオに対する効用水準や時間利用パターンの感度分析による提案モデルの実用性を示した.
 これらの研究の多くは,AD調査やアクティビティ調査により得られた活動の種類と活動の時間長に着目し,時間や予算などの各種制約条件下で効用最大となる解を求める時間配分理論に基づく分析を行っている.しかし,これらの時間配分理論では,活動の順序や活動間のつながりを表現することができないことを今後の課題として示している.
 そこで本調査では,荒尾市の平井・府本地区の乗合タクシー導入前後の住民のアクティビティ変容を分析するにあたり,アクティビティ分析でよく用いられる時空間プリズムによる活動の広がりのほかに,活動の順序や活動間のつながりに着目したベイジアンネットワークによりアクティビティ変容の分析を行っていく.
 本研究は5章から構成しされている.2章では乗合タクシー導入までの経緯,3章では調査概要,4章ではトリップや時空間パス,ベイジアンネットワーク分析,最後の5章では本研究の結論と課題について述べる.