コミュニティバスの導入・運行継続基準のあり方に関する実証分析

Empirical Analysis in regard to Modalities of Introduction and Service Continuation Standard of Community Bus

尾山 賢太
Kenta OYAMA

 Community bus is operated in Kumamoto city called “YuYu Bus”, and there is a service continuation standard. 30% of income and expenditure rate is the standard, the bus is abolished if inhabitants of the bus route cannot achieve this.
In this study, modeling trip frequency considered composition factor of ICF and individual choice with social interactions. Using these models, I predict demands for community bus, and calculate income and expenditure rates. And I analyze relations of service and roadside condition to achieve a service continuation standard.

KeyWords: service continuation standard, social interactions,roadside condition

 

 モータリゼーションの進展や人口減少により,全国的に公共交通の利用者数は減ってきている.熊本市においても例外でなく,特に路線バスの利用者数は著しく減少している(図-1参照).バス利用者の減少によるバス事業者の経営の悪化は,路線の廃止や運行頻度の削減などのバスの利便性の低下を招き,それによってバス利用者がさらに減少するという悪循環が生じている.一方で,高齢社会が進展する中で,自動車の運転が困難な人のための生活交通を支える,安全で快適な移動手段を確保することが必須となっている.また,自動車から公共交通機関への転換ができるよう,公共交通サービス水準の維・改善が求められている.
熊本市では,公共交通のあるべき機能や役割を明確にしながら利便性の高い公共交通サービスを提供するために,平成21年に熊本市地域公共交通連携計画を策定し,バス路線網の再編や利用促進策を実施している.バス路線網の再編の際に,採算性や効率性の問題から事業者が主体となって路線バス提供できない地域に対しては,コミュニティ交通が導入された.これらの地域は,既存の駅・停留所から500m~1,000m離れた地域を公共交通不便地域,1,000m以上離れた地域を公共交通空白地域と区分され,前者にはコミュニティバスが,後者には乗り合いタクシーが導入されている.本研究で対象とするのは,熊本市の公共交通不便地域を運行する「ゆうゆうバス」というコミュニティバスである.ゆうゆうバスは,熊本市の政令指定都市移行に伴って新たに設置された区役所等へのアクセスや買い物や通院などの生活交通での利用など,地域での公共交通の移動利便性向上を支援するためのコミュニティバスである.また,利用する高齢者の外出促進や外出によって身体を動かす健康増進,地域とのつながりなどへの寄与が期待されている.しかし,ゆうゆうバスは需要の少ない地域を運行しているため,収支率が低い.そのため,運行費用の一部を市が補助しているが,効率性を考えると無制限に補助を行うことはできない.そこで,図-2に示すように,収支率が一定の値を満たすことができなかった場合は,その路線の運行計画の見直し,廃止を行うという運行継続基準が設定されている.事前にゆうゆうバスの沿線住民に提示されており,運行継続のための利用協力を沿線住民に求めている.そうすることで,沿線住民間の同調行動が働き,収支率の向上が期待されている.
 本研究では,ゆうゆうバス沿線住民間の相互作用を考慮した手段選択モデルと沿線住民の外出頻度モデルを構築し,ゆうゆうバスの利用需要の予測を行う.さらに,利用需要の変化から収支率の変化を考察し,適切な運行継続基準を見出すことが本研究の目的である.