山本 真生
Masaki YAMAMOTO
In recent years, car sharing services have been provided in many cities, mainly in Europe and North America, but there are several cities where service provision has been discontinued since they were noprofitable. For that reason, it is important to preliminarily examine in what kind of city and what kind of business should be introduced in the country where car sharing service has not been introduced in earnest.
We apply the simulation model to multiple cities and compare simulation results with traffic characteristics such as urban population size, network structure, OD pattern and so on, and empirically study introduction possibility of car sharing system by sensitivity analysis.
KeyWords: “ one-way type” car-sharing , model analysis , population density , OD pattern ,network structure ,sharing ratio
近年,環境負荷低減意識の高まりから,自動車交通によるCO2排出量の削減や自動車総数の削減が課題となっている.これらの改善策としてカーシェアリング(以後,CSと記す)サービスが,ここ数年で欧州や北米を中心に急激に普及してきている.CSサービスは会員間で車両を共同利用するサービスであり,都市における新しい交通手段として注目され,既存の公共交通との相互利用により,交通サービスの利便性の向上が期待されている.
利用方法としては,サービス事業者のWebサイトで会員登録を行い,スマートフォンのアプリやWebサイトから予約を行う.アプリを起動したスマートフォンか専用のICカードを車両にかざして利用を開始する.利用終了時は,車両を返却場所に駐車させ降車し,開始時と同様にスマートフォンかICカードを車両にかざして返却完了となる.利用料金については,分単位や時間単位が基本であり,都市によって異なるが分単位で30円前後と安価である.
CSサービスは大きく分けて,車両の貸出・返却ステーションが必ず同一であるラウンドトリップ型と貸出・返却ステーションが異なってもよいワンウェイ型が2つに分類することができる.さらに,ワンウェイ型は,車両の貸出・返却場所が専用のステーションに限定されるステーションベース型(以後,SB型と記す)と対象地域内であれば道路の路側帯,公共施設や学校等の駐車場でも可能であるフリーフロート型(FF型と記す)に分類される.
CSサービスは欧米諸国を中心に多くの都市で提供されているが,採算が取れずサービス提供を中止した都市も複数存在する.そのため,いまだCSサービスが本格的には導入されていない我が国においては,どのような都市でどのような規模の事業を導入すべきかをあらかじめ検討しておくことが重要となってくる.しかし,都市によって人口規模やネットワーク構造は異なる.また,ODパターンや分担率,平均トリップ時間などの交通特性も異なることから,CSサービスの利用のされ方も異なってくるであろう.
本研究では,開発済のワンウェイ型のシェアリングシステムへの転換モデルを組み込んだ運用シミュレーションモデル1)を複数の都市圏に適用し,シミュレーション結果と都市の人口規模やネットワーク構造,ODパターン等の交通特性との比較を行うことによってCSシステムの導入可能性をモデル分析によって実証的に検討することを目的とする.
本論は5章から構成されている.第2章では,国内外におけるCS事業展開の現状と既往の研究について述べる.第3章では,ワンウェイ型CSシステムの運用シミュレーションモデルについての説明と既往のシミュレーション分析の結果について概説する.第4章では,分析対象とした3つの都市の特徴について説明する.また,これらの都市圏への運用シミュレーションの適用結果について説明した後,都市の規模とネットワーク構造,ODパターンや分担率などの交通特性とCSシステムの導入可能性の分析を行う.第5章では,得られた成果と今後の課題について述べる.