ICカードデータから推計される市電の発着時刻の信頼性とその活用

RELIABILITY AND UTILIZATION OF THE TIME OF DEPARTURE AND ARRIVAL OF THE CITY TELESCOPE ESTIMATED FROM IC CARD DATA

鵜狩 祥平
Shohei UGARI

 In recent years, the spread of IC cards for transportation has progressed rapidly, and the number of issued cards is increasing year by year. As IC cards become more widespread, different analytical methods of data precedence type are attracting attention. For example, by using the access information, it is possible to grasp the travel locus of each vehicle. In this research, I use IC card data. The purpose is two. One is to verify the reliability of train arrival and departure times estimated from IC card data. The other is to propose a method of bringing train arrival and departure times estimated from IC card data closer to actual values.

KeyWords: ic card data,Kumamoto city train, navigation data, reliability of arrival and departure time

 

 我国では自動車の利用者数の増加による交通渋滞など,自動車交通に起因する問題が深刻になっている.また,利用者数減少に伴う公共交通事業の赤字経営は様々な社会的な問題を発生させている.利用者にとって定時制や利便性の高い公共交通サービスを提供することはもちろん,公共交通事業者側にとっても需要の変動や利用特性を正確にとらえ,それに応じた適切なサービスをいかに設計するかが求められている.しかし,長年行われている乗降客のカウント調査やパーソントリップ調査などのアンケート調査では,ある特定の日の内容や少数の回答者の特性しか把握できないといった問題があった.
 一方,公共交通の乗車券としての交通系ICカードの普及は急速に進んでおり,その発行枚数,利用可能地域は年々増加している.平成28年3月末で累計発行枚数は1.3億枚を超えており,国土交通省の発表1)によると,平成27年2月に閣議決定された「交通政策基本計画」では,平成32年(東京オリンピック開催)までにSuica,PASMO等の全国で相互利用可能な交通系ICカードをすべての都道府県で使えるようにするという目標も定めている.ゆえに,各鉄道会社には利用者属性や利用履歴に関する大量のデータが収集,蓄積されており,今後蓄積されていくデータ数はさらに増加していくことが予想される.このようにICカードの普及が進む中,これまでとは違ったデータ先行型の分析手法が注目されている.
 熊本市では,平成26年3月に全国相互利用可能なICカード「でんでんnimoca」が熊本市電に,平成27年4月に熊本地域振興ICカード「くまモンのIC CARD」が路線バス・電鉄電車に導入された.これにより熊本市交通局には,カードIDや分単位での詳細で信頼性の高い利用履歴データが収集・蓄積されているため,熊本の公共交通の利用実態を把握するデータとして活用できる.また,タップイン・タップアウト情報を用いることで車両ごとの運行軌跡を把握することも可能である.しかし,その信頼性について検討を行った例は少ない.
 本研究では,熊本市電に導入された市電ナビによる全車両のGPS緯度・経度データを用いて,(1)ICカードデータによって推計される市電の各電停における発着時刻の信頼性の検証,(2)ICカードデータから推計される市電の発着時刻を実績値に近づけるための方法を提案することを目的とする.