村上 麻紀
Maki MURAKAMI
Since the redevelopment building SAKURAMACHI KUMAMOTO was opened on September 14, 2019, it seems that the number of visitors to the central area of Kumamoto city and their excursion behavior have changed significantly. The first purpose of this study is to observe the pedestrian traffic volume at many points covering this area and the actual situation of visitors’ excursion behavior. The second pur-pose is to verify the possibility of the future prediction of the excursion behavior model estimated in the past using these two data sets. As a result, it was found that the number of visitors entering this area has increased considerably, the pattern of excursion behavior has dramatically changed, and that the excur-sion behavior model can predict future behavior.
KeyWords: gate count survey, excursion behavior, redevelopment project,
(1) 研究の目的
熊本市中心市街地の歩行者通行量は近年増加傾向にある.しかし,郊外には大規模小売店の立地が進み,その販売額は中心市街地と同程度となっており,中心市街地では小売販売額,販売額の全市に占める割合とも減少している.このように中心市街地は商業面での活力低下が大きな課題となっている.来街者の回遊を促進させることによって中心市街地を活性化させることは,これらの課題を解決するための有効な方策の一つと考えられる.そのためには,来街者の回遊行動の実態を詳細に調査分析し,回遊行動に影響を及ぼす要因とメカニズムを明らかにすることが必要であると考える.
このような中,2019年9月14日には,中心市街地の一角に148の商業施設やシネコンを有する,桜町再開発事業の主要施設であるサクラマチクマモトが開業した.このような大型複合商業施設の開業はまちなかに新たな魅力を創出しまちなかへの入れ込み客数や,まちなかでの人の流れを大きく変化させた.このように,施設や空間の整備は人の行動に変化をあたえることから,施設整備前後の人の来街・回遊行動を調査し,その行動をモデル化することで将来の適切な施設や空間整備の在り方を考えることができる.
本研究では,来街者の回遊行動の実態を把握するために,本研究室で継続的行っている歩行者通行量調査と回遊行動アンケート調査を実施し,得られたデータの経年比較,詳細分析を行う.また,今回の調査結果を用いて開発済みの回遊行動モデルの予測可能性の検証を行うことを目的とする.
本研究の対象エリアは,熊本市中心市街地活性化基本計画の対象エリアである通町・桜町地区と熊本城地区を含む図-1.1に示す範囲である.
(2) 論文の構成
本研究は全6章で構成される.2章では回遊行動実態把握のための2つの調査の説明する.3章では調査結果について紹介する.4章では既存研究により開発された回遊行動モデル(以後,2011年モデル)の概要とその理論,および推定結果について説明した後,2011年モデルに2019年データを適用して予測した2019年の現況再現の方法とその結果を示し,その考察を行う.5章では2011年モデルと今回のデータによって推定した2019年モデルとの比較を行う.最後に本研究の成果と課題について6章でまとめる.