孫田 佳奈
Kana MAGOTA
Ride-sharing taxi have been attracting attention in local cities in Japan. There seems to be possibility that it will become popular as one of new mobility services. From October 1, 2020, Arao "Omoyai-Taxi", which is a shared taxi in a practical sense, has started operation. The purpose of this study is to clarify the actual situation of the use and operation of OMOYAI-TAXI using the reservation log data obtained from the on-demand taxi allocation system. the same time, the user questionnaire survey data will be used to analyze the user's evaluation of OMO YAI-TAXI.
KeyWords: Ride-sharing taxi service, Arao OMOYAI-Taxi, reservation log data, questionnaire survey
本研究では,熊本県荒尾市において2020年10月1日から本格運行が開始された事前確定運賃,かつオンデマンド配車による非定時区域運行型による乗合タクシーであり,実質的には相乗りタクシーの特徴を持つ荒尾市の「おもやいタクシー」について,運行と利用の実態,および利用者の評価に関する分析を行うことを目的としている.
相乗りタクシーとは,同じ方向へ行きたい人同士がマッチングし,同じタクシーで相乗りして移動する新しい交通手段である.相乗りした人同士で料金を折半できるため,通常のタクシー移動よりも安い料金で移動できるという利点がある.さらに,利用時間帯も決められておらず,Door To Door で移動できるため,公共交通空白地域の住民や高齢者,障がい者なども利用しやすい交通手段である.今後,既存公共交通機関を補完する新たな交通手段として,またバスやタクシー事業における運転手不足の問題の解消のための対策として期待されている.しかし,法律(道路運送法第3条の一般乗用旅客自動車運送事業)上,タクシー事業は1個の契約により自動車を貸し切って運送する事業と定義されているため,不特定多数が1運行の間に相乗りすることは禁止されている.したがって,現状ではタクシーの相乗り運送は禁止されている.
そのような法律上の縛りがあるものの,2018年1月には国交省が主導して東京都内で1か月間,2つのタイプの相乗りタクシーサービスの社会実験が実施された.また,2019年3月には東京オリンピック時の輸送能力の増強のための相乗り型タクシーの普及に向けた検討が指示された.さらに,相乗りタクシーサービスに必須である事前確定運賃に関しても2019年10月から適用可能となったことから,今後,相乗りタクシーの導入・普及が期待される.
しかし,導入地域の特徴によって,相乗りサービスは,導入の目的や導入規模などが異なる.有償の相乗りサービスには,自家用車による福祉有償運送サービスがあり,主として過疎地域において導入されているが,荒尾市のような地方都市でのタクシーによる有償の相乗りサービスは現在のところ存在しない.利用者にとっては利便性が高く,事業者にとっては効率的運行が可能な相乗りタクシーサービスは,地方都市においても新たなモビリティサービスの1つとして活躍できる可能性がある.
本研究は5章で構成されている.第2章で荒尾市の公共交通の実態,「おもやいタクシー」導入経緯について紹介する.第3章では,荒尾市の交通実態を把握するために行った荒尾市交通実態調査とあらお相乗りタクシーの選好意識調査を紹介し,それらの分析結果を示す.第4章ではおもやいタクシーの利用と運行の実態,利用者の評価についての分析結果を示す.最後に第5章で本研究の結論と課題について述べる.