街路網評価に対するSS理論の適用可能性に関する2,3の考察

Some Examinations of the Applicability of Space-Syntax Theory to Network Evaluation

本田 竜
Ryu HONDA

 In the present study, the street network where the link that makes the intersection a node is composed is made as a city space analysis method that pays attention to the street network, the distance between links is put, it searches for the shortest route, and it compares it from the original link with the integration value requested from an average distance index and a space synoptical theory from the coming link.

KeyWords:Space Syntax theory, GIS, Convex Space, Pedestrians,Building-use

 近年,全国で中心商業地域の衰退が指摘されており,来街者の回遊を促すような中心市街地の歩行空間の改善が求められている.市街地の活性化を目的として市街地再開発事業,商店街のカラー舗装化,サイン計画,タウンモビリティ等の様々な計画や事業が実施されている.しかしながら,人,文化,交流の結節点としての街の役割の再生には時間を要する.近年の都市再生は,都心に高密度な機能集積をさせて効率的で経済的な発展を図るという側面が強く,それがはたして回遊性の高い賑わいのある街が創られているかは,意見が分かれるところである.賑わいがある回遊性の高い街に必要とされるのが,街の魅力づけである.
 本研究では,屋内スペースや公共空間,街路網などの空間構成の分析方法としてロンドン大学のBill Hiller らによって提唱されたスペースシンタックス理論を中心市街地の街路網構成などの特性評価に用いる.スペースシンタックス理論は,空間を分節し,その隣接関係を解析することで,分析範囲全体の構造や各空間の特性を分析することができる手法である.ただ,簡潔に言えばある空間まで平均で何回で到達できるのかをグラフとして計測するスペースシンタックス理論は,その理論的根拠自体,あいまいな部分がある.また,道路区間の距離勾配などの抵抗値は全く考慮されないなど,回遊という人の行動をその上で記述するネットワーク理論とは若干異なる.距離や標高等の概念に関しては,まったく触れておらず幾何学的な街路網で人間が集まりやすい空間とは断定できない.
 本研究では,1)街路網に着目した都市空間解析法として,交差点をノードとしたリンクの集合で構成される街路ネットワークを作成して,リンク間の距離を考慮した最短経路探索を行い,当該リンクの全リンクからの平均距離であるアクセシビリティ値とスペースシンタックス理論より求めたインテグレーション値との比較を行い,それらの違いや特性をあきらかにする.2)次に,これらの指標と沿線土地利用との相関関係を把握する.さらに,3)アクセシビリティは高いもののインテグレーション値は低いなど,両者の評価指標が相反するリンクを抽出し,その原因を探る.また,そのリンク周辺の道路網をアクシャルラインが簡素化するように改良した場合,街路網全体,あるいは個々のアクシャルラインのインテグレーション値がどのように改善されるかを検証することによって,回遊を促す街路網構成や計画への示唆を得ることを目的とする.