Capability Approachによるモビリティ水準評価手法の合志市への適用
A Practical Study on Applicability of QOM Index to Mobility Evaluation
神谷 翔
Sho KAMIYA
This paper proposes a QOM index which, shows individual’s transportation service level to evaluate, the quality of mobility. The QOM is based on the Capability Approach proposed by Amartya Sen. This model is composed of a model of transportation possibilities and a model of selection possibility, evaluation of QOM model is applied to mobility level by zone in Koshi City and we measure the equity level in mobility by some transportation policy scenario.
KeyWords: Quality of Mobility, Capability Approach, transportation service level, transportation policy,
Possibility model of movement
近年のモータリゼーションの進展や人口減少,少子高齢化などの影響により,鉄道やバスなど公共交通機関の利用者数は減少しており,合志-大津路線や合志-植木路線など,バス路線の廃止や運行頻度の削減などが行われた事例も少なくない.公共交通の廃止やサービスレベルの低下は,地域住民の移動に制約を生じさせ,日常的な買物や病院など最低限の生活を続けることが困難となる.特に地方部では少子高齢化,過疎化の影響からバス路線の削減や廃止が顕著で,交通サービスに対する地域間格差が社会的な問題となっている.この現状から,既存路線の中で赤字路線には補助を与えたり,各市町村ごとにコミュニティバスや乗り合いタクシーなどの新たなコミュニティ交通機関の新設などが行われている.
このような地域公共交通の計画には,経営の視点からの評価にもまして,「どのような人のどのようなことが損なわれており,対策を必要としているのはどの人か」を明確にすることが必要である.比較的交通サービスに恵まれた都市部においても,高齢者や障害者などの移動の自由を保障することが求められるようになっており,誰もが住みやすいまちづくりを目指すためには充実した交通施設整備が必要であると言える.
従来の交通施設整備の評価は,もっぱら効率性基準に基づく費用便益分析によって行われてきた.「道路投資に関する評価指針(案)」では,効率性基準に加えて公平性配慮を求めており,その評価方法として修正費用便益分析や多基準分析による評価手法が提案されている.しかし,これらの手法は,交通施設の有無による効果を評価しているだけで,誰に効果が及んでいるのかを明らかにできない.また,国民全体の生活レベルが向上することによって初めて,施策の有効性を確認することができることから,今後は社会資本整備による便益の最終帰着先である市民生活の状態を測る指標であるQOL(Quality of Life)を計測し,評価はされるべきであろう.本研究では,QOLのうち移動モビリティに関する指標をQOM(Quality of Mobility)として定義し,個々人の交通の質を公平性の視点から客観的に評価する指標とその評価手法を提案し,その適用可能性を検証している.
本論文は全6章からなる.2章ではQOM概念の基礎となるCapabilityApproachの概念について述べる.3章では開発したQOMモデルの枠組みとQOM指標算出のための一連のサブモデルについて述べる.4章では合志市を対象としたモデルの推計を行い,各サブモデルの推定結果を述べる.5章では公共交通改編や人口変動といった幾つかのシナリオについて評価シミュレーションを実行し,その有効例をQOMによって評価する.最後に本研究の成果と今後の課題について6章でまとめる.