松本 健志
Kenji MATSUMOTO
Kumamoto City has introduced Parking Pricing System and extended no-parking zone since June 1st ,2012. Until then, all municipal parking lots for bicycles had to be available for free. To maintain them and regulate illegal parking, Kumamoto City had spent about 200 million yen from its resources (tax from the citizens) each year. In order to decrease the operation and maintenance cost, it had got to carry out this policy.
This paper has three purposes. The first one is to reveal actual utilization situation of bicycle park-ing lot and survey user opinions. The second one is to develop discrete-continuous choice model of bi-cycle parking lots and duration by using data obtained. The last one is to get the optimal solution of the bicycle parking lot capacity according to the demand, which is forecasted by the simulation based on discrete-continuous choice model.
KeyWords: Kumamoto City Center, illegal parking, nested logit, multi-objective optimization
近年,排気ガスを出さないクリーンで健康的な乗り物として自転車利用を促進する動きが高まっている.また,家計において経済的な負担が少ないことも長所であり,主要交通手段としてだけでなく,サイクル&ライドと呼ばれる端末交通手段としての利用も盛んである.大都市でも自家用車から自転車へ交通手段を転換する人が増加しており,自転車の交通手段としての利便性・経済性の高さに注目が集まっている.しかし同時に,自転車は都市部において様々な社会問題を引き起こしている.放置自転車や走行マナーの悪さ,交通事故など解決しなくてはならない問題も多い.
熊本市においても「自転車でお出かけしたくなるまちづくり」を基本理念に,自転車の利用を促進する一方で,自転車が引き起こす諸問題,特に中心市街地における放置駐輪問題の解決に取り組んできた.しかし,自転車交通量が多いことや自転車走行空間の整備が未だ十分ではないことから,問題の根本的な解決には至らなかった.そこで,自転車利用環境を整備する目的で,平成24年6月1日より1)放置駐輪禁止区域の拡大,2)中心市街地の全駐輪場有料化,の2つの政策を実施した.これらの政策によって市街地の様子は大きく変化した.路上にあふれていた放置自転車は大幅に減少し,現在ではほとんど見られなくなった.また,新たに11箇所の民営駐輪場(うち1箇所は原付専用)が整備され,市営の5箇所と合わせて計16箇所の有料駐輪場が稼働を始めた.各駐輪場はアクセス性の違いなどから3つの料金体系に分かれている.これらの駐輪場は利用のされ方が大きく異なっていることが実態調査から明らかになっており,駐輪場の利用者の駐輪場選択には設定料金だけでなく,立地や時間帯などの要因が影響していると考えられる.
本研究では,有料化が実施された中心市街地の全駐輪場とその利用者を対象に利用実態調査と意識調査を行い,それらのデータの分析を行うことで,1)駐輪場の利用実態と,2)駐輪政策に対する利用者の意識を明らかにする.さらに,3)自転車利用者の駐輪場選択モデルと駐輪時間モデルの推定を行い,これを用いたシミュレーションを通して駐輪需要を予測しながら,4)有料駐輪場の最適な容量を求めることを目的としている.本研究は,有料化開始から4ヶ月後の平成24年10月に1回目の実態調査,意識調査を行っており,その後も1年おきに同様の調査を行っている.そのため,利用実態や利用者意識の経年変化に加えて,料金やその他のサービス内容の変更による利用者の駐輪行動の変化を細かく分析できる.また,駐輪場選択モデルと駐輪時間モデルによるシミュレーションによって,現実に近い駐輪需要の予測が可能である.
本論文は6章から構成されている.まず,第2章で熊本市における自転車利用環境整備の課題と取り組みについて述べる.第3章では,利用実態調査と意識調査の内容と実践方法を解説し,これらの結果について説明する.第4章では,駐輪場選択モデルと駐輪時間モデルの推定結果を示す.第5章はそれらを用いたシミュレーションの結果と駐輪場容量の最適化モデルについて説明する.第6章で本研究の結論と今後の課題を述べる.