生活質と都市特性評価に対する身体活動量指標の適用可能性に関する研究

Study on the applicability of physical activity indicator for evaluating quality of life and urban characteristics

穴井 美紗
Misa ANAI

 In Japan, the super-aging society would certainly arrive in 2055 with accounts for about 40% of elderly people of the total population. It is required to understand what kinds of approaches are available for the livable environment creation in the super-aging society near future, for example, good environment for health, or Quality of Life (QOL) evaluation of old people.
 The aims of this study are to carry out the relevant analysis with individual attributes, problems in go-ing out, or physical activities, and to examine the applicability of QoL evaluation by physical activity quantification of old people.
 As a result, it is cleared that physical activities are effective as an index for QoL evaluation. In addition, enhancing the convenience of public transport would rise the physical activities and lead to health.

KeyWords: super-aging society, physical activity, public transportation, QoL, ICF

 

 我が国は2005年を境に人口減少時代に突入しており,未だ世界のどの国も経験したことのない超高齢社会が到来し,2055年には,図-1-1に示すように65歳以上の高齢者が総人口の約4割を占めると予測されている1).このような急速な高齢化と共に,近年では自動車に依存した生活等の生活習慣の変化により,疾病の構造が変化し,疾病全体に占める糖尿病等の生活習慣病の割合が増加している.また,年金や医療など社会保障の給付費が2013年度で110.6兆円に対して2025年度には1.3倍の145.8兆円に達し,2013年では生産年齢人口2.3人で高齢者1人を支えていたが2025年には1.8人で高齢者1人を支えなければならないと予測されている2).今後の超高齢化社会に対応するためには,健康寿命を長期化し,医療費を削減する必要がある.そのためには,生活習慣病の発症を予防し,健康づくりの重要な要素である身体活動を促すことが有効であり,国民の身体活動に対する意識を高め,運動習慣を持つ人の割合を増加させる環境づくりが必要である2)といわれている.このような背景から,人類がこれまでに経験したことのない超高齢化社会を迎えるにあたり,健康に対する環境づくりをしつつ,高齢者のQoL(生活の質:Quality of Life)を評価し,住みやすい環境づくりにはどのようなアプローチが可能であるかを把握しなければならない.
 これまでの身体活動に関する研究は,主に公衆衛生学・予防医学分野において進められてきた.その研究の主題は,身体活動を促進するための方策として個人の心理社会的要因に焦点を当てたものが中心であったが,近年では,個人を取り巻く環境要因の重要性が指摘されるようになり,都市環境をテーマとした研究が急速に増えてきている3).そうした背景により,都市計画分野にお いても,身体活動に着目する研究が増えている.都市環境や交通環境を改善することによって,都市住民が自然に運動するようなまち,また,都市住民が体を動かすのが楽しくなるようなまちをつくることは,これからのまちづくりの要請である3)と考えられるようになってきている.