川口 充洋
Atsuhiro KAWAGUCHI
Due to rapid growth of population and changes in motorization trends, the central urban spaces are decreasing which results in creation of large shopping stores in suburbs. This hollowing out of the central urban areas has become a serious problem in the cities. In this research attempts were made to analyze the changes in the free space (free floor) characteristics between 2006 and 2015 in Kumamoto city. The preferences of convenient stores and other shopping centers were analyzed by using logit model. The results can be summarized as follow: 1) the differences in usage characteristics are dependent on location, 2) the average rent has fallen by 700 yen in 10 years, 3) when a free floor is used again, the probability of being used for the previous purpose is high 4) the properties of the first floor could be sold in a shorter time compared to other higher floors.
KeyWords: downtown, land use, panel data, logit model
(1) 研究の背景と目的
近年,人口減少やモータリゼーションの変化,郊外大型SCの出店といった要因により中心市街地の空き床店舗が増加している地域が全国各所で見られる.図1-1に示すように,熊本市でも,H.24年度をピークに空き床店舗が多い状況であった.そのような中で,熊本市では多核連携都市を目標として掲げられており,中心市街地の役割として社会経済活動の発展をけん引することに加え,九州中央の交流拠点,にぎわい演出といった役割が求められている.このような役割が求められる中で,中心市街地の衰退は大きな問題である.そこで本研究は,本研究室で実施した床利用調査に加え,空き床調査,都市計画基礎調査のデータを組み合わせ,近年の床の使われ方の変化や空き床になりやすい特徴を把握し,今後の中心市街地活性化案を検討する際の一助にすることを目的とする.
既存研究として,建築分野では中嶋1)は中心市街地の床利用についてゾーン,用途別に集計し,用途の数を変数としてクラスター分析を行うことにより,各成分が与える影響を考察している.山口2)は通りに着目したうえで,各通りにある用途をクラスター化し,中心市街地の来訪者に対しても年齢や移動距離,移動時間をクラスター化することにより,どのような属性を持つ人が,どのような回遊方法,場所に来訪する傾向にあるのかを分析している.土木分野でも,河野ら3)は店舗の配置や公共施設の配置がトリップパターンにどのような影響を及ぼしているのかを分析し,その満足度についても分析している.また,商業分野では松井ら4)は小売店舗の密度を仕入れ費用や交通費用を用いて分析し,従来,日本の小売店舗密度が高かった理由を明らかにしたうえで,日本のモータリゼーションの進行が小売店舗密度が減少していることと述べている.また松井5)は,所得の増加により消費支出が増加し,奢侈品を取り扱う小売店舗が増加することで生産性の低い店舗(小売店舗)が、減少していくFord効果について分析したが日本では見られなかったとしている.本研究の位置づけとしては,これまでマクロ的な要素で市街地の用途や小売店舗について分析したのに対して,建物の面積や賃料などミクロ的な観点から分析を行い,空き床の経年変化や2時点での用途変化について分析を行う.
(2) 論文の構成
本論文は6章で構成される.2章では対象となる熊本市と熊本市中心市街地の概要とマスタープラン,中心市街地活性化計画について述べ,3章では使用データと床利用状況についての集計結果を述べる.4章では空き床特性に関する分析を行い5章ではロジットモデルとハザード関数を用いた用途変更モデルを構築し, 6章を,まとめとし,最後に付録として熊本地震から1か月後の,中心市街地の営業状況を述べる.