田村 亮
Ryo TAMURA
This paper proposes the road evaluation method of the road restoration priority rank.
The target is made the Kumamoto earthquake which has occurred in April, 2016. A huge earthquake causes road closed at many spots. A huge earthquake had a big influence on traffic environment by damage of social infrastructure. So we need to repair immediately road closed for efficient traffic.
First ,I simulate the process of restoration in various patterns of road closed and evaluate the restoration priority of road with three priority indices. Second , I apply the road restoration method to the pattern of road blockade at the time of Kumamoto earthquake.
KeyWords: Earthquake, priority index, Restoration simulation
日本は地震大国であり,近年も阪神淡路大震災や東日本大震災をはじめとする大地震が発生している.今後も南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模な自然災害の発生が予測されており,それらの被害を最小限に抑えるための対策が必要である.
巨大地震による路面の陥没や斜面の崩壊によって生じる多くの道路での通行止めは,直後の被災地の人々の物資輸送などの支援活動に大きな障害となるだけでなく,その後の日常生活や経済活動にも重大な影響を及ぼす.特に自動車分担率が高い地方圏では自動車での移動は不可欠であることから,影響は大きいと考えられる.通行止め区間の早急な補修を行い,いち早く通行止めを解除して通常の交通パターンに復旧することが求められる.
しかし,通行止めとなる区間が多数となる大規模災害の場合,全ての道路を直ちに復旧することは財政的にも容易ではない.また,道路被害はどこで発生するか事前に予測するのは困難である上,通行止めとなる道路の組み合わせによって交通環境への影響の大きさは異なる.2016年4月に発生した熊本地震でも緊急輸送道路を含む重要道路が多数通行止めとなり,その後の復旧期には,主要幹線道路はもちろん,補助幹線に相当するような街路でも激しい交通渋滞が継続して発生した.発生から一年半以上経過し,交通パターンがおおむね回復したものの,未だに通行止めが解除されていない道路区間もある.このような大地震に対しては,被災による通行止め区間の数を最小限に抑えるための補強などの事前対策,および被災した道路の復旧順序を迅速に示す事後対策をあらかじめとっておくことが必要であろう.
本研究では,様々な道路閉鎖パターンを想定した上で,閉鎖区間の復旧により得られる金銭ベースの便益に着目した事前及び事後対策に対するリンク優先度決定手法の提案を行う.具体的には,熊本市のネットワークを対象とし,将来想定されているいくつかの地震の予測震度分布から道路閉鎖のパターンを作成する.さらに,作成した道路閉鎖パターンに対し,該当リンクを復旧することで得られる金銭ベースの便益を定義するとともに,復旧順序を決定する方法とリンク復旧優先度の評価指標の提案をする.これらの結果をもとに,最後に熊本地震後の実態と対応させて,本研究の有用性の検証と考察を行う.
本研究は5章から構成される.2章では既往研究のレビューと本研究の位置づけに関して説明を行う.3章では道路閉塞パターンの作成方法と復旧シミュレーションの方法,及び道路の優先度評価指標の開発を行う.4章では熊本地震を対象として本手法を適用し,得られた復旧順序と,実際の復旧順序との比較を行う.最後に本研究の成果について5章にまとめる.