山本 真生
Masaki YAMAMOTO
The concept of car sharing is becoming popular all over the world because it greatly lessens environmental impact and provides individuals with an alternative transportation mode. However, there seems to be no effective method for predicting usage demand and introduction effect before introducing car sharing services. In this research, we set out to verify the possibility of introducing one-way station based carsharing service from both viewpoint of convenience of service user and of profitability of service provider.
KeyWords: one-way station-based carsharing, service size, mitigation of eccentrically located
今後のモビリティサービスにおいては自動運転とシェアリングサービス(以後,SSと記す)は重要なキーワードである.その中,欧州を中心に公共交通における新たなモビリティサービスとしてMaaS(Mobility as a Service)が注目を集めている.MaaSでは,個人の出発地から目的地までのEnd-to-Endの移動をサポートし,複数の移動の選択肢を提示する.それぞれの選択肢には,公共と民間の両者を含めた異なる交通モードの組み合わせが含まれており,これらの選択肢の経路案内,情報提供のみならず予約や決済なども同一プラットフォーム上で行われる交通サービスがMaaSである.このサービスの交通モードには,鉄道やバスといった既存の公共交通に加えて,カーシェアリング(以後,CSと記す)も組み込まれている.
欧米におけるCSは1960年代に誕生しており,それ以降盛衰を繰り返しながらも今日では交通モードの一つとして成立している.わが国においても欧米に倣って導入,普及が進み,図-11)に示すように,ここ数年においては毎年,車両台数は約4,000台,会員数は約20万人ずつ増加しており,会員数,車両台数は急激に増加(2018年3月時点では会員数約132万人,車両台数約2.9万台)している.今後もわが国におけるCSサービスの市場規模はさらに拡大していくことが予想されるが,新たな交通モードとしての認識や成立には遠い状況である.今後数年以内にMaaSがわが国に導入されていくことは容易に予想されるが,既存の公共交通と徒歩,自家用車といった交通モードのみでは,欧州と同等,もしくはそれ以上の利便性を確保していくことは難しいと考えられる.そのためには,わが国においても欧米と同様にCSを交通モード,事業として成立させる必要性がある.
わが国では,MaaSの導入にむけて片道利用が可能なワンウェイ型CSのサービス提供は必至であるが,現在事業化されているのはTimes Car PLUSに代表されるラウンドトリップ型CSのみである.ワンウェイ型CSの中にも2種類のサービスがあり,特定地域内の道路の路側帯等に駐車可能なフリーフロート型CS(以後,FF-CSと記す)は現段階では法的な問題から導入が難しく,返却が専用のステーションや様々な施設の駐車場に限定されるステーションベース型(以後,SB-CSと記す)の導入が現実的である.このSB-CSが事業として成立するためには,利用者側にとっては高い利便性が,事業者側にとっては一定以上の収益の確保が目的となる.これらの相反する2つの目的を満たすためには,適切なステーション配置や事業展開規模が重要であると考えられる.
本研究では,将来的な我が国の地方都市におけるMaaSの展開,インタビューや公開データから行ったパリのAutolib’のサービス中止の要因分析を参考にしながら,利便性と収益性の二つの観点から地方都市における再配車を行わない場合のワンウェイ型SB-CSサービスの導入のためのステーション配置と事業規模についての検討を行う.
本論文は6章から構成されている.まず,第2章ではCSをはじめとするSSの現状とそれらに関連する既存研究,および課題について述べる.第3章では,本研究の分析対象地域,分析手法について説明する.第4章では利便性と収益性の両観点から,都市の違いによる導入可能性の分析を行う.第5章では,実際のサービス展開と運用に際して生じる問題を考慮し,導入可能性の分析を行う.最後に第6章で本研究の結論と問題点について述べる.