吉塚 卓史
Takuji YOSHIZUKA
In recent years, the smart card system is widely introduced to many traffic transportation service. The data which is obtained from this systems generate traffic big data that enables analysis of traffic conditions. In this research, we will analyze the data is analyzed from two aspects using the space state model. So we aim for understanding characteristics of demand for using tram and in how to use tram for individual. In particular, we analyze the numbery passengers and individual choice to get on tram. We assume four factors that affect these characteristics. The first one is the seasonal trend, the others are the “day of the week”, rainy day, holiday effects. As a result, we found the effect of increase in penetration rate of smart card and individual difference of the four factor effect that on individual to get on tram.
KeyWords: traffic big data, smart card data, space state model, Kalman filter, particle filter
日本では近年,人口減少や高齢化によって公共交通利用者が減少しており,現在各交通機関において様々な検討がなされている.熊本市交通局でも,経営の基本方針として「安定的な企業経営の推進」,「安全で快適な運行の強化」,「公共交通機関全体の利用促進」を掲げ,市電ロケーションシステムの導入や,2両連接車両の復活運行といった様々な取り組みが行われている.公共交通が利用者を獲得していくためには,このような利用者の利便性を高めるような取り組みを行う必要があり,そのためには公共交通の需要変動や利用者特性を把握することが重要となってくる.
また,近年携帯電話やICカードの普及によって,バスの運行ログデータや決済データ,個人の移動履歴データなどといったいわゆる「交通ビッグデータ」が注目されている.ビッグデータは毎時毎分データが蓄積されるため,このデータを利用することで,常に最新の情報を抽出することができる.
ビッグデータを利用した取り組みとして,交通分野ではバスの運行改善や交通渋滞の解消など,マーケティング分野では顧客獲得のための消費者行動分析などがある.野上ら1)は,高知市を中心に利用されているICカードDESUKAのデータをもとに,利用回数を用いた単純分析やOD別に集計した利用者数分析し,利用者の変動特性を明らかにした.寺本2)は,首都圏のスーパーマーケットを利用する利用者のブランド選択に関する購買履歴データを用いて,広告などのプロモーションと,利用者の購買行動・コミットメント・ブランドロイヤルティの関係を分析した.このように様々な分野でビッグデータが蓄積され分析されており,有益な情報をもたらしている.
熊本市でも平成26年3月に全国相互利用可能なICカード「でんでんnimoca」を熊本市電に,平成27年4月に熊本地域振興ICカード「くまモンのIC CARD」を路線バス・電鉄電車に導入した.得られるデータは料金の決済データであるが,カードIDや車両番号や乗降車電停,乗降時刻などの情報が含まれており,個人ごとの非集計データを逐次的に得ることが可能になった.これらのデータから市電の需要変動に関する情報を抽出することができれば,これまで主に行われていたパーソントリップデータによる分析よりも短期間ごとに情報を得ることができる.
本研究では,市電で導入されている全国相互利用ICカードから得られる大量の利用履歴データを利用し,状態空間モデルを適用することで,市電利用需要特性の時系列的変動の把握を目指す.ここでは以下の2通りのモデルを構築して分析を行う.1つ目のモデルは,まず日別の乗車人数データが周期変動や数年間にわたる長期的な変動や周期的な変動といったいくつかの成分の和で表現できると仮定する.その後乗車人数データを観測値とし,これを各成分に分解するようなモデル化を行い,各成分の変動を追うことで市電利用者全体の需要変動特性をマクロに分析するものである.二つ目のモデルでは,まず日別の利用者が市電に乗る乗車効用を潜在的変数として導入し,この効用が1つ目のモデルのようにいくつかの成分からなると仮定してモデル化を行う.その後,効用を用いて利用者が市電に乗る乗車確率を非集計ロジットモデルで定義する.最終的に,実際の乗車情報をもとに粒子フィルタを用いて効用の値を補正し,各成分の変動を分析することで個人の利用特性の把握を目指す.