シェアモビリティによるモーダルコネクトが公共交通の選好に与える影響

ANALYSIS ON PREFERENCE FOR PUBLIC TRANSPORT SERVICES CONNECTED BY SHARE MOBILITY

上野 優太
Yuta UENO

 MaaS(Mobility as a Service) is in the concept to provide a more comfortable mobility service than a private car by connecting optimized public transportation. However, local cities have problem so called the first or last-onemile problem public transport service. Therefore, it is nessesary to develop sharing mobility that provides access/egress services.
 In this research, we analize the impact of modal connect by sharing mobility on public transport choice behavior by estimating modal choice model based on stated preference survey.

KeyWords: share mobility, cross nested model, modal connect, MaaS,

 

 欧州を中心に公共交通における新たなモビリティサービスとしてMaaS(Mobility as a Service)が注目を集めている.MaaSとは,公共と民間の両者を含めたあらゆる交通手段を統合し,その最適化を図った上で,マイカーと同等か,それ以上に快適な移動サービスを提供する新たな概念である.MaaSでは, 個人の出発地から目的地までのDoor-to-Doorの移動をサポートし,複数の移動選択肢を提示する.これらの選択肢の経路案内, 情報提供, 予約, 決済が同一プラットフォーム上で行われることから,MaaSの利用によりシームレスでストレスフリーな移動が可能になる. 今後, 国内でもMaaS導入に向けて, プラットフォーム開発のようなシステム面での取り組みは重要である.しかし,それだけでは自動車依存度の高い我が国の公共交通の利用率が向上するとは考えにくい. 図-1にMaaSを構成する事業者の関係性を示す.MaaSは供給サイドにこれまでの交通事業者と新たな交通事業者,プラットフォーム事業者で構成され,中でも以下の理由より新たな交通事業者の重要性が考えられる.公共交通の利用が少ない最大の原因の一つとしてファースト・ラストワンマイル問題が挙げられる.そのため,MaaSを実現する上で既存の交通手段を組み合わせるだけでなく,アクセス・イグレス区間を補完する交通手段の導入が求められるであろう.欧州でMaaSを成功させているサービスに共通する特徴として, カーシェアリング(以後,CSと記す)やバイクシェアリング(以後,BSと記す)のようなアクセス・イグレス区間を補完する交通手段がサービスに含まれており,我が国でもMaaS導入を本格的に進める前段階として,シェアモビリティの整備は最優先されるべきである.
 国内外問わず,CSやBSは市民に浸透しつつあるため,それらのサービスに対する選好意識の分析や需要予測の方法,普及過程や導入効果についての研究が盛んに行われている.しかし,鉄道やバスといった代表交通手段との連携および相乗効果を分析するような研究はほとんどない.一方で,MaaSのフィールド調査や効果分析に関する研究は近年増加しているものの,公共交通とシェアモビリティから成るモーダルミックスに対する選好意識を分析し,その需要を予測するモデルについて検討を行った研究は少ない.本研究では, 1)自動車の代替交通手段としての公共交通利用の端末部分にシェアモビリティを導入した場合の選好意識調査の実施,2)公共交通利用部分の類似性を考慮した手段選択モデルの構築を行う.さらに,3)このモデルを第四回熊本都市圏PT調査データに適用することにより,シェアモビリティによるモーダルコネクトが公共交通の利用需要に及ぼす影響について予測することを目的とする.
 本論文は6章から構成されている.まず,第2章ではMaaSの国内外の現状とモーダルミックスに関連する既存研究,および課題について述べる.第3章では,シェアモビリティを組み込んだ公共交通利用代替案の効率的設定方法と手段選択に関する調査の概要,集計結果について述べる.第4章では,代表交通手段利用部分の類似性を考慮する移動手段選択モデルについて,いくつかの離散選択モデルを推定した結果について説明する.第5章では,得られたモデルと第4回熊本都市圏PT調査を用いたマイカーから公共交通への転換トリップ数の推計を行う.最後に第6章で本研究の結論と問題点について述べる.