近年、道州制の制度設計をめぐり、地方制度調査会や各種団体によって具体的な提案が示されており、今後ますます道州制についての議論が高まることが予想される。
すでに、道州制への移行の第一段階である市町村合併がかなりの程度進んでいる。市町村合併には不可逆性があるため、もはや道州制をゴールとする地方分権の流れを止めることは不可能である。しかしながら、道州制の議論が具体化するにつれ、区割りの問題や州都の問題といった、地域の利害に直接関係する重要な課題での調整が難航することは十分に予想される。
そこで、われわれは経済学の理論に基づいて「地域の利得を最大にするような道州制のデザイン」を提言することを目的に活動を行なうことにした。具体的には
(1) 評価関数を構築し、(2) 各都市や地域間の(交通や情報の)ネットワークを考え、(3)
評価関数に基づいて最適なネットワークのグラフを明らかにする。各都市や地域をプレイヤーとする理論モデルを構築し、同時にシミュレーション分析も進める。プレイヤーの数が多く、しかも非対称なケースでは理論的に最適なネットワークを見出すことが困難となるため、マルチエージェントシミュレーションが必要であると考えている。
このような経済学からの提言が、今後の道州制の制度設計の参考になれば幸いである。
坂上智哉 (研究会世話人)
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