概略

英語のシラブルという概念は、モーラに基づく日本語にもあるかどうかは、よく議論されるし、存在するとしたら、どのように形成されているかも問われる。英語のシラブルにはonset-rimeの構造があるが、Katada (1990)はこれに対して、日本語のシラブルの構造はモーラを反映するonset/nucleus-codaであると主張している。

本論は、日本語のシラブルの概念と役割の視点から、3人の子供(11歳、8歳、4歳)の言葉を反対にするゲームの答えを分析する。答えにはモーラ作戦、リズム作戦、シラブル作戦と回避作戦という4種類の作戦が見られたが、3人の子供はそれぞれ違うストラテジーを利用したことがわかった。モーラ作戦は、11歳の子供が主に利用したが、8歳の子供はあまり使用せず、4歳の子供はまったく使わなかった。その代わり、シラブル作戦や回避作戦は4歳の子供に頻繁に使われ、11歳の子供にはまったく使われなかった。この様にス作戦が年齢によって異なることは、日本語が発達するにつれ、シラブルの認知が先に、モーラを後で認知できるようになることを指示する。また、11歳と8歳の子供がそれぞれモーラ戦略とリズム戦略を主に利用したことは、日本語のシラブルにはモーラを反映するonset/nucleus-coda構造が認知的に存在する仮定を支持する。さらに、これらのストラテジーは4歳の子供に見えなかったことから、この構造を把握する能力は成長と共に発達すると推測できる。これらの結果の一つの要因として、短期記憶(short term memory)のM-spaceの大きさを本論で提案する。