英語の『傘』―― 他文化的言語制度のモデルに近づいて
Judy Yoneoka
要旨
世界の英語を、ネーティブ英語、第二言語としての英語(ESL)、外国語としての英 語(EFL)に分離するKachruのconcentric circlesパラダイムは、world Englishesの 研究分野にかかせない概念となっています。が、この概念は同分野の社会的や政治面 での目的と一致しないところがあります:(1)使用されている用語は、ネーティブ 英語を中心的な場所に置いていること、(2)流動性がなく、諸英語の位置付けを固 定してしまう恐れがあること、(3)各輪の中の構成がなく、各英語を独自的を図る 事が困難であること、です。 本論では、この問題を乗り越えるため、傘をイメージした新モデルを紹介します。 このモデルは、次の5つの部分で構成されます:傘の(1)柄=基本英語(core English)、(2)骨=各種の英語と基本英語とのコミュニケーションネットワー ク、(3)骨先端の留め具=各種の英語(varieties)、(4)紙や布の覆い (covering)=諸英語の背景にある文化や社会、(5)先端部=理想となる「標準英 語」(「standard」English)。このモデルの利点として、その平等性、柔軟性、相称 性や応用力が挙げられます。