労働倫理をめぐる日米言動摩擦
桜内衆院議長発言 (92/1/20頃)
- 「労働者の質の悪さが対日赤字を生んでいる」
- 「米の競争力低下は怠惰な労働者に原因がある」
- 「米国の労働者は働きもしないで高給を受け取り、3分の1は文字を読めない」
渡部外相が米テレビで陳謝
「私の知る限りでは米国の生産性は日本より高く、識字率は99%近いと認識しており、こうした事実を知らないと間違った発言をする。」
宮沢首相の勤労倫理発言
(衆院予算委員会での答弁、1992年2月上旬)
武藤嘉文氏
「人間は働くというところに良さがある。働きすぎはいけないが、与えられた間だけはきちんと働くのは正しい勤労の姿だ。米国の人にわかってもらうよう日本は努力していくべきだ。」
宮沢首相
「確かに今、米国に欠けているのは、ここ10何年、ここに至ったゆえんを見ると、物をつくるというか価値を生むということについての解釈が非常にルーズになってきたと申すか、マネーゲームでも価値を生むには違いないだろうが、額に汗して一つの物を創造していくという勤労の倫理、そういうものが、コンピューターなんかにも関係がありまして、大学を出た若い人が大変な高給を持ってウォールストリートにたくさん入ってしまった。その結果として、物をつくるエンジニアがどんどん減っていったことをみている。そういうことでマネーマーケットが進み、ジャンクボンド(信用度の低い高利回り債権)が登場してきた。ジャンクボンドは危険なもので、LBO(買収先の資産を担保にした借りいれによる企業買収)というものも金を持たずに買収し、その結果倒産してしまう。こういっただれが考えても長続きしないことをここ十年あまりやってきた。その辺のところに働く倫理が欠けていたのではないかとずっと思ってきた。ある意味でわが国のバブルにもそういう要素があった。あれは国民全体に対する教育であったとすら思う。額に汗して価値をつくりあげていくことが大事で、ブッシュさんが教育と言っているのもそのためではないか。」
米3大ネットワークは「米国の労働者が勤労の倫理観に欠けている」との宮沢首相の発言をそろって批判した。
アメリカからの反発の文化的な背景
1904年からMax Weber氏が主張したProtestant (work) ethic (岩波文庫の『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は図書館にある)
"Idle hands are the devil's tools."
"Early to bed and early to rise makes a man healthy, wealthy, and wise."
宮沢発言問題の直後に実施された世論調査ではアメリカ人の88%は日本人の勤勉性に感心し、日本人の88%はアメリカの労働者の豊富な余暇時間に感心していた。
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