お願い
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  熊本県立大学外国人教員の置かれた状況に関する声明  

 熊本県立大学では、いま、外国人教員達が差別に対する抗議の声を上げています。彼らすべてが一人の例外もなく日本人教員と異なり、期限付きの任用によって採用されているからです。「やさしい熊本、差別のないまちづくり」のスローガンに値するよう私たちはこのような状況を一刻もはやく改め、同時に彼ら外国人教員の地位安定を求めるものです。

 1993年、当時の熊本女子大学は現行の熊本県立大学への改組に向けて多数の外国人教員を採用しました。全員、専任教員としての就任を承諾し、県知事宛ての「就任承諾書」に署名し、提出しました。ところが、1994年熊本県立大学設置の時点では、外国人教員のだれ一人として署名をしたとおりの契約を受けられませんでした。うち4人は専任教員としてではなく一年契約の「非常勤特別嘱託」としての契約を提示され、残りの5人は「一般公務員」としての職を提供されましたが、それとて3年という期限付きでした。日本人専任教員はすべて一般公務員として無期限の雇用を保障されているのに対し、外国人教員は任期に制限のある特別職とされたのです。

 常勤としての地位を拒否された4人の教員は「就任承諾書」で合意した専任契約を要求し、特別職としての契約への署名を拒否しました。この4人はそれ以来4年間にわたってこの拒否の姿勢を貫きつづけました。彼らは、大半の「任期3年」の外国人の同僚とともに、外国人教員のみに適用されている期限付きの任期の撤回を要求しました。この時期、あらたに4人の外国人教員が採用されたものの、それらの人々も同様に「特別職」として任用されました。彼らは、いわゆる時間講師としての非常勤講師ではなくフルタイムで、教育研究に従事しており、入試業務(出題、採点、面接など)さえ担当しているのです。

 1997年、ますます煩雑になった契約更新手続きに直面し、また、法的なアドバイスもあって、外国人教員たちは「熊本ゼネラルユニオン」を結成し、全国一般全国協議会に所属することにしました。組合は大学に対し、「国籍にかかわりなく、全員を専任教員として採用すること」を要求しました。正式な団体交渉は1998年1月に始まりました。以来、5回の団交を通して、大学側は、任期つきの雇用慣行は英語ネイティブスピーカーの教員にふさわしいものであるといい、すべての要求を拒絶したのです。1998年1月、団交が継続中であるにもかかわらず、大学側は、一方的に1年契約の教員に対してさらに条件の悪い契約を強制してきました。続く1998年2月には、学長は新たな契約についての議論を拒否し、条件がのめなければ契約の更新はしないと通告してきました。

 組合に属する外国人教員達は、なおも要求を訴え続けて、本年6月24日、一日ストと人権行動を決行し、国籍による差別撤廃を訴えました。この日の行動には、日本各地から関係する市民、他大学の教員、地域のNGOグループ、学生や組合活動家など100人以上の人々が加わりました。

 6月、大学は外国語教育の大学全体での見直しに着手しました。改革案はまだ完成しているわけではありませんが、現行の英語の授業数の削減とさらに総合管理学部のうたい文句であったコミュニケーションに力点を置いた英語教育を方向転換するということのようです。しかし、英語がテクノロジーとビジネスの言語として国際的なコミュニケーションの手段となっている現状に照らして、いま進められている改革の方向はこれから国際社会に参加しようとしている学生にとっても損失をもたらすと言えます。

 いま、私達は、熊本県立大学の状況を注視しております。「専任教員」という表現はふつう常勤雇用と同義と理解されるものであり、「専任教員」を「特別嘱託」として雇用することは不適切であり、変則的なことです。さらに、大学が雇用形態の違いをつける基準として国籍を用いてきたこともはっきりしているのではないでしょうか。我々はこれこそ差別的であると考えるものです。その上、大学は外国人教員に対する「'full time'の専任教員」としての約束を守っていないのです。現在の熊本県立大学の外国人教員の状況を正常化することは、教育の質を高め、熊本県の国際化への努力を実り多いものにすることになるのではないでしょうか。

 いま、全国には、国公立大学を中心にして数百人の同様な雇用形態の外国人教員がいます。契約の更新を拒否されれば職を失い、さらに在留資格さえ失いかねないという不安の中におかれ、熱心に教育・研究にあたっているのです。そのような中で、沈黙を破った熊本県立大学の勇気ある外国人教員の行動に真摯に応えていくことは私たちの社会的責務であり、緊急の課題と考えております。

 熊本県立大学が事態の重要性を認識され、差別のないまちづくりへの範を示されることを求めるものであります。

呼びかけ人

熊本大学医学部助教授  原田 正純
東京大学名誉教授  戸塚 秀夫
中央大学法学部教授  近藤 昭雄
桃山学院大学大学院教授  徐  龍達
大阪経済法科大学法学部教授  本多 淳亮
熊本学園大学社会福祉学部教授  篠崎 正美
熊本学園大学社会福祉学部教授  花田 昌宣
熊本学園大学商学部教授  羽江 忠彦
熊本学園大学経済学部講師  カーク・マスデン
熊本学園大学外国語学部助教授  ジョセフ・トウメイ
熊本大学医学部講師  宮北 隆志
熊本大学文学部助教授  小松 裕
熊本大学文学部助教授  福澤 清
熊本大学文学部助教授  斉藤 靖
熊本大学文学部助教授  新井 英永
熊本大学文学部助教授  里美 繁美
熊本大学教育学部助教授  池田 志郎
熊本大学教育部講師  村里 泰昭
大阪大学文学部教授  猪飼 隆明
旭川大学経済学部教授  浅田 政広
富山大学経済学部教授  星野 富一
大阪経済法科大学経済学部助教授  崔 潤鎔
桃山学院大学経営学部教授  全  在紋
岐阜大学教授  William Lee
ロチェスター大学教授  WILLIAM B. HAUSER
オーストラリア国立大学教授  Ikeda Shun
弁護士(熊本)  松野 信夫
弁護士(石川)  菅野 昭夫
弁護士(東京)  上柳 敏郎
弁護士(熊本)  千場 茂勝
弁護士(熊本)  東  俊裕
弁護士(東京)  吉田 健 
弁護士(東京)   藍谷 邦雄
弁護士(東京)  内田 雅敏
弁護士(東京)  福田 拓
弁護士(東京)   阿部 裕行
医師(熊本)  寺岡 葵
元熊本市議   河上 洋子
編集者(熊本)   大住 和子
医師(熊本)   山口 秀樹
医師(熊本)   木村 孝文
医師(熊本)   宇野 昭彦
弁護士(熊本)   建部 明
弁護士(熊本)   田尻 和子
弁護士(東京)   黒岩 容子
評論家 柴山   恵美子 (前名古屋市立女子短大教授)
ジャーナリスト(東京)   Tony Laszlo

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