21世紀を迎えようとしている現在、国レベルだけでなく、県や市町村というそれぞれの地域での国際化の必要性が叫ばれています。
国連の前難民高等弁務官の緒方貞子さんは「確かに日本は他国に比べれば、単一民族です。・・・日本人は、単一民族・単一文化の幻想の中に生きています。しかし、21世紀に単一民族・単一文化の繁栄はありません。」ときっぱり述べておられます。
21世紀には、自分たちの住む国や地域の歴史に根差した生活や文化の質を高めることと平行して、ここ数年の間に飛躍的に発達してきたインターネットを初めとするさまざまなIT技術を媒介とした交流も含めた国際的な「信頼に裏付けされた人と人のつながり」の中で、その生活や文化の有り様を「世界に情報発信できる」生活や文化として、さらに豊かにしていがなければ、自分たちの国や地域のさらなる発展はあり得ないのではないでしょりか。そういり意味でも、高校や大学の教育の中で、専門的で実践的な外国語教育がぜひとも必要となってきています。
1994年に発足した熊本県立大学においても、大学の国際化に対応する形で、外国語教育センターを中心とした実践的な外国語教育を新しい大学の特色の大きな柱の一つとして盛んに宣伝してきました。にもかかわらず、開学から5年を経過して県立大学当局は、外国語教育センターに勤務する外国人教員の雇用条件がもともと非常にあいまいであったことを逆用し、大学の国際化とは逆行するような方針を打ち出してきました。
それは、日本人教員には65歳定年までの雇用を保障しながら、同様の仕事に従事している外国人教員には3年もしくは1年という期限を切っての雇用しか認めないという時代遅れの方針です。
なぜ、このような時代の二一ズと掛け離れた人事方針を取ろうとしているのでしょうか?それは、もともと大学当局の国際化に対する認識が不十分であったことに加え、国籍の違いに対する差別意識があるからと言わざるを得ません。
99年秋に、静岡県の浜松地方裁判所において言い渡された外国人差別に関する判決は、国連における人種差別撤廃条約に基づき外国人差別を禁止するという画期的な内容でした。このことは、同年11月15日付けのニューヨークタイムズ紙の一面で、熊本県立大学での雇用差別の実態と併せて取り上げられ、世界的な注目を浴ぴることとなりました。人種や国籍の違いによる差別に対する現在の世界の考え方国連の人種差別撤廃条約の趣旨かりすれば、熊本県立大学当局が行おうとしている行為は国籍の違いを理由とした違法行為であると言えます。
熊本県立大学当局が、世界が注視しているこのような差別的な雇用政策を早急に取りやめるとともに、名実とともに大学の国際化を求める県民の要望に答え得る大学として発展することを、多くの署名賛同人とともに要求いたします。
なお、2000年3月31日付けでシンシア・ワージントン、サンドラ・ミッチェルの二人の先生方の雇用は打ち切られました。お二人は解雇の不当性を熊本地裁へ提訴されています。県立大学当局が、一刻も早くこの問題の重要性に気づき、お二人の納得の行く形で解決されますよう併せて、要求いたします。
熊本県立大学外国人教員を守る会会員一同
くまもとゼネラルユニオン一同