第5講 物価指数

[講義ノートに戻る]


2014年10月27日更新

物価指数とは[top]

消費者物価指数(CPI: Consumer Price Index) と
企業物価指数CGPI: Corporate Goods Price Index,
       旧,卸売物価指数WPI)
が代表的な物価指数です.

消費者物価は,消費者が商店やスーパーマーケットで
購入するときの価格です.
企業物価は,企業間で取り引きされるときの価格です.

CPIは総務省,CGPIは日本銀行が作成しています.

指数(index)とは,基準時=100として比較時の値を
表示します.
企業物価指数は857品目を,
消費者物価指数は,580品目を対象にしています.

(注意)卸売物価指数(Wholesale Price Index)は
2003年1月から「企業物価指数(CGPI)」に変わりました.
詳しくは以下で紹介している私の「メールマガジン」
企業物価指数を読んでください.

他に,GDPデフレーター(内閣府作成)があります.
これはGDPに対応する物価指数.

物価指数の計算方法[top]

○単純平均ではなく,加重平均(weighted average)
消費金額全体に占める各品目の割合(重み,ウェイト)
を考慮して物価の指数を計算する方法.

○ラスパイレスとパーシェ方式
加重平均の方式にラスパイレスとパーシェ方式があります.
重み(ウェイト)の計算に基準時点の消費量を使うのが
ラスパイレス(Laspeyres),
比較時点の消費量を使うのがパーシェ(Paasche).
ウエイトの合計はどちらの方式でも必ず1になります.

ラスパイレス方式のウェイトの基となる支出金額は:
  基準時点の価格(Po)×基準時点の消費量(Qo)

パーシェ方式のウェイトの基となる支出金額
  基準時点の価格(Po)×比較時点の消費量(Qt)

  計算の例(テキストP41,表3-1参照)

ペンの価格の指数(比較時/基準時)
  0.7/0.2 * 100 = 350

シャツの価格の指数(比較時/基準時)
  14 /7 * 100 = 200

靴の価格の指数(比較時/基準時)
  30/10 * 100 = 300

100をかけているのは基準時=100とした指数を計算するため.

全体の価格の指数はどう測る?
1.単純平均
  (350 + 200 + 300)/3 = 283.33

2.ラスパイレス方式
基準時の全体の支出金額 = 0.2*10 + 7*5 + 10*3 = 67
ペンの重み  = 0.2*10/67 = 2/67 = 0.03
シャツの重み = 7*5/67 = 35/67 =0.522
靴の重み   = 10*3/67 = 30/67 = 0.448
ラスパイレス指数の計算
350*(2/67) + 200*(35/67) + 300*(30/67) = 249.3

3.パーシェ方式
比較時の全体の支出金額 = 0.2*12 + 7*6 + 10*2 = 64.4
ペンの重み  = 0.2*12/64.4 = 2.4/64.4 = 0.037
シャツの重み = 7*6/64.4 = 42/64.4 =0.652
靴の重み   = 10*2/64.4 = 20/64.4 = 0.311
パーシェ指数の計算
350*(2.4/64.4) + 200*(42/64.4) + 300*(20/64.4) = 236.6

一般的な式で書くと,



○パーシェでも,ウエイトを計算するときの価格は
基準時の価格を使うので注意.
○ラスパイレスは,基準時の固定ウェイトだから,
比較時の価格だけがわかればよいので,計算が簡単.
その一方,時代の変化に伴い数年ごとにウェイトの見直しが必要.
消費者物価や卸売物価指数はラスパイレス方式,
ただし5年おきに基準年を更新している.
○パーシェは,比較時点の価格だけでなく,比較時点の
数量も必要なためデータの収集に手間がかかる.
GDPデフレーターはパーシェ方式.
○加重平均のウエイトの合計=1
○ラスパイレス指数は,過大評価の傾向がある.
○パーシェ指数は,過小評価の傾向がある.
○ラスパイレスとパーシェの幾何平均をとった方式
としてフィッシャー方式があります.

最近はラスパイレス指数の欠点(基準時を日本の場合
5年間固定している)を補うため
「連鎖指数(chain index)」が開発されています.

【cpi計算例pdfファイル】
上の物価指数の計算を確実なものにするために,このpdfファイルで練習してください.

【補足】
ラスパイレスは過大評価である理由
財の消費X(0)は価格P(0)の下で効用Uを最小費用で
達成されている。
P(0)X(0) = min(U, P(0)) (1)
しかし、消費X(0)は価格P(t)の下では効用Uを最小費用で達成されていない。
P(t)X(0) >= min(U, P(t)) (2)
(2)/(1)より
P(t)X(0)/ P(0)X(0) >= min(U, P(t))/ min(U, P(0)) = 理想的指数

パーシェは過小評価である理由
財の消費X(t)は価格P(t)の下で効用Uを最小費用で
達成されている。
P(t)X(t) = min(U, P(t)) (3)
しかし、消費X(t)は価格P(0)の下では効用Uを最小費用で達成されていない。
P(0)X(t) >= min(U, P(0)) (4)
(3)/(4)より
P(t)X(t)/ P(0)X(t) >= min(U, P(t))/ min(U, P(0)) = 理想的指数

ケータイマクロ問題[top]

【選択肢問題,三者択一】

【問題1】
物価指数についての記述で正しいのはどれでしょう.
1 物価指数は比較時点を100として計算している.
2 物価指数の単位はパーセントである.
3 物価指数は単純平均ではなく加重平均で計算している.

【問題2】
物価指数に関する記述で誤りはどれでしょうか.
1 単純平均でなく加重平均で計算
2 ウェイトの計算に基準時の数量を使うのはラスパイレス
3 GDPデフレーターはラスパイレス方式

【問題3】
A財,B財の2つの財だけを考慮します.表のように
基準時点,比較時点の価格,数量が与えられるとき
基準時点を100とした比較時点のラスパイレス方式
による物価指数はいくつでしょうか.

   基準時点      比較時点
   価格  数量    価格  数量
A財 10  20    20  35
B財 30  10    40  25

実質GDPと名目GDP[top]

GDPの統計を見ると,実質(real)と名目(nominal)
のデータが必ず掲載されています.名目というのは,
財・サービスをその年の価格で評価して集計した値です.
従って同じ財を同じ量だけ生産したのにインフレ時には
大きな価値を生み出したことになってしまいます.
物価上昇で膨らんだ部分を取り除いた値が実質値です
(あるいは物価下落で落ちた価値を元に戻す).
統計上は,ある基準時点を設けてその年の価格で評価
(計算)する方法をとります.この基準時点は,日本の
場合は5年ごとに更新されます.1995年基準,2000年
基準というように.
日本経済がどれだけ成長したかを測るには当然ながら
実質GDPを見なければなりません.名目GDPを実質GDPで
割った値をGDPデフレーターといい,GDPデフレーターは
国内経済版の物価指数を表すといえます.
GDPデフレーターの計算方法はテキストのPP.39-40を参照.

(参考記事)「デフレーターで見る日本経済」
『日本経済新聞』2003年6月19日,「大機小機」コラム

関連新聞記事[top]

2007.04.27(金) ★総務省,2006年度の消費者物価指数0.1%上昇,2年連続のプラス.3月の消費者物価指数(除く生鮮食品)前年同月比0.3%下落
2007.04.27(金) 日銀,「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」,07年度実質GDPは2.1%,CPIは0.1%上昇,08年度実質GDPは2.1%,CPIは0.5%上昇


・2006.04.28(金) ★総務省,2005年度平均の消費者物価指数(生鮮食品除く)1997年以来8年ぶりに上昇,前年度比0.1%上昇 
(注)1997年は消費税が5%に引き上げられた年です.消費税が導入されたのは1989年4月1日,3%でした.
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nendo/index-z.htm

(注)消費者物価指数の上昇率は,ゼロ金利政策の解除の時期を探る場合の重要な指標でした.

・総務省,2001年度の消費者物価指数(2000年=100,生鮮食品除く)99.0,前年度比0.8%下落.初の4年連続のマイナス.生鮮食品含む総合指数は,前年度比1.0%減の98.9で3年連続の下落(2002年4月26日)

総務省の消費者物価指数,最新の月次統計:

  http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm

・「総務省,2000年度の消費者物価指数(生鮮食品除く)101.7,前年度比0.4%下落.3年連続のマイナス」日経2001年4月27日夕刊
(注)消費者物価指数が2年連続で下落すると,「デフレ」と定義

・「消費者物価指数,対象品目変更で0.2%押し下げ,みずほ証券試算」日経2001年4月29日
2001年7月分から全国消費者物価指数の品目入れ替えが行われ,パソコンや移動電話通信料などが追加されました.

・「消費者物価指数,調査方法見直し」日経1999年9月3日
・「統計のウラ側(1)消費者物価狂った尺度」日経1999年7月27日
・「消費者物価指数「実態より高め」日銀,精度向上を要請」日経1999年5月11日
・「実態上回る消費者物価指数」日経1997年6月25日
・「消費者物価指数の算出法」同上

メールマガジン[top]

企業物価指数,卸売物価指数,消費者物価指数については
わたしの以下のメールマガジンを参照してください.

第57回 企業物価指数
第5回 卸売物価指数
第6回 消費者物価指数

物価指数のグラフ[top]

消費者物価指数,企業物価指数のグラフは以下の
「経済データのグラフ」を参照してください.

消費者物価指数
国内企業物価指数
消費者物価指数と企業物価指数の比較
企業物価指数と卸売物価指数

グラフを見るときのポイント
1 1974年の物価の大幅上昇は,前年の1973年の第一次石油ショックの影響
2 1980年の物価上昇は,前年の第二次石油ショックの影響
3 1986年の物価の大幅下落は,前年の85年9月のプラザ合意後の大幅な円高の影響
4 2009年の物価の下落は,前年の2008年のリーマン・ショックの影響

消費者物価指数,総合指数(生鮮食品除く)2000年=100
1999年 - 0.3% (0.0%)
2000年 - 0.7% (-0.4)
2001年 - 0.7% (-0.8)
2002年 - 0.9% (-0.9)
2003年 - 0.3% (-0.3)
2004年  0.0% (-0.1)

国内企業物価指数 国内総合 2000年=100
1999年 -1.5%
2000年  0.0%
2001年 -2.3%
2002年 -2.0%
2003年 -0.8%
2004年  1.3%

関連サイト[top]

消費者物価指数は総務省の管轄であり,企業物価指数
(旧,卸売物価指数)は日本銀行が作成発表しています.

●消費者物価指数関連

総務省統計局 消費者物価指数:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm

★総務省統計局 消費者物価指数(CPI)結果:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/1.htm

 消費者物価指数のしくみと見方:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/9.htm

総務省統計局 基準消費者物価指数の解説:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/10.htm

総務省統計局 消費者物価指数に関する検討資料について:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/8.htm

総務省統計局 平均消費者物価地域差指数の概況
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/chiiki/index-c.htm


 東京(最も高い)は那覇(最も安い)の13.5%高.全国47の県庁
所在地の中で,熊本市は安い方から14番目(高い方からは34番目)です.
食料費だけに限ったランキングでは,熊本は安い方から23番目
(高い方から25番目)です.

●企業物価指数関連

日本銀行 物価関連統計:
http://www.boj.or.jp/statistics/pi/index.htm/

2008年ウエイトを反映した「連鎖方式による国内企業物価指数」の公表(2010年9月10日)
http://www.boj.or.jp/statistics/outline/notice_2010/data/ntcgpi21.pdf

「連鎖方式による国内企業物価指数」の公表
−−連鎖指数導入の意義とその特徴点−−(日本銀行調査統計局2002年10月28日)
http://www.boj.or.jp/statistics/outline/notice_2002/data/ron0210a.pdf

須藤直「連鎖方式による国内企業物価指数」(2004年11月、2004-J-7)
http://www.boj.or.jp/statistics/outline/notice_2004/data/rev04j07.pdf

 

日本銀行 主要時系列統計データ表・掲載データ一覧
http://www.stat-search.boj.or.jp/info/nme_Mdframe.html

日本銀行 時系列統計データ検索サイト
http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html


エクセルの付録[top]

上の物価指数の説明で使用したエクセルのファイルを
ダウンロードすることができます.

cpi.xls (エクセルファイル)

[top] [講義ノートに戻る]


(c) Shigeru Sasayama, Kumamoto Gakuen University