第7講 経済モデルの拡張

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2014年11月24日更新

政府を追加した経済モデル

単純な経済モデルに政府部門を追加してモデルを拡張
してみましょう.
政府部門が入ることでモデルがどのように整合的に
修正されるかをみてほしいのです.

財市場の均衡式  Y= C + I + G    (1)
消費関数     C = Co + c Yd     (2)
投資支出      I = Io        (3)
政府支出     G = Go       (4)
税収       T = To       (5)
可処分所得    Yd = Y - T     (6)

○政府部門の追加はGだけが追加されるのではなく,
税収Tが入る.
 上の税は一括固定税の場合です.
○消費の基となるのは,Yではなく税収等
(年金はプラスして修正)を引いた可処分所得.

(2)から(6)を(1)に代入してYについて解くと,
均衡所得が得られます.

Y = C + I + G

 = Co + c Yd + Io + Go

 = Co + c (Y - To) + Io + Go

(1 - c) Y = Co - c To + Io + Go


   (7)


クイズその4
上の経済モデルで,税収が次のように所得に累進する
場合の均衡所得はどのようになるかを解いてみなさい.

   T = To + t Y
ここで,t は税率を表します.1> t >0.

さらに,上の経済モデルから45度線図により均衡所得
の決定を説明してみなさい.

クイズの答え

クイズその5

減税や増税はどのようなルートを通じて経済に影響を
与えるかを,上の政府を追加した経済モデルに基づいて
考えてみなさい.

開放経済のモデル[top]

財市場の均衡式  Y = C + I + G + EX - IM (8)
消費関数     C = Co + c Yd      (9)
投資関数      I = Io         (10)
政府支出     G = Go         (11)
輸出       EX = EXo         (12)
輸入関数     IM = IMo + m Y      (13)
可処分所得    Yd = Y - T        (14)
税収       T = To + t Y      (15)
ここで,mは限界輸入性向,tは税率.

○海外部門を含むモデルを開放経済モデルと呼びます.
○海外部門が追加されたことにより,輸出と輸入が登場します.
○輸出は所与ですが,輸入は輸入関数に従うと想定します.
 1 > m > 0

均衡所得の導出.

(9)から(15)を(8)の均衡式に代入し,
Yについて解きます.

Y = Co + c {Y - To - tY} + Io + Go + EXo - IMo - mY
{1 - c (1 - t) + m} Y = Co - cTo + Io + Go + EXo - IMo


 (16)

ケータイマクロ練習問題[top]

海外部門を捨象した経済において,以下のような関係が
成立しています.
財政収支が均衡(G=T)しているとして,
このときの均衡所得(GDP)を求めなさい.
ただし,単位は兆円.

Y=C+I+G    (1)
C=10+0.8Yd   (2)
I=50       (3)
T=0.2Y      (4)
Yd=Y−T     (5)
ここで,YはGDP,Ydは可処分所得,Cは消費,
Iは投資,Gは政府支出,Tは税金です.


以下の選択肢から選んで答を送りなさい.
1. 167
2. 300
3. 375

練習問題(Mathematicaによる解付き)[top]

【問題】次のような財市場だけからなる経済モデルを考えます.
このモデルから,財市場の均衡をもたらす均衡所得は何兆円に
なるかを求めなさい.


財市場の均衡式 Y = C + I + G  (1)  
消費関数    C = 0.6 Yd + 50 (2)
投資支出    I = 40      (3) 
政府支出    G = 10     (4)
可処分所得   Yd = Y - T   (5) 
税収       T = 10     (6)
ここで,Y :GDP C:消費 I:投資 G:政府支出 
T:税収 Yd:可処分所得 

【解説】(2)〜(6)を(1)に代入して整理した後,
Yについて解きます.
Y = 0.6 (Y - 10) + 50 + 40 + 10
(1- 0.6)Y = 100 - 6
0.4Y = 94
Y = 235

答 235兆円

上の問題を数式処理ソフト Mathematica で解くと,
次のようになります.
最初に式のまま解いて,その後に与えられた数値を代入
して数値解を求めています.

Simplify[sgmodel /. kai ] では検算をしています.
正しい場合は,下にあるように{{True, True, ... ,True}}
と表示されます.

(* simple G model *)
sgmodel = {
y == con + inv + gov,
con == con0 + mpc*yd,
inv == inv0,
gov == gov0,
tax == tax0,
yd == y - tax
};
kai = Solve[sgmodel, {con, inv, gov, tax, yd, y}]
Simplify[sgmodel /. kai]
kai /. {con0 -> 50, inv0 -> 40, gov0 -> 10,
tax0 -> 10, mpc -> 0.6}
ye = Part[y /. %, 1]

計算結果は次のように表示されます.

{{y -> (-(con0 + gov0 + inv0 - mpc tax0)/(-1+ mpc)),
con -> (-(con0 + gov0 mpc + inv0 mpc - mpc tax0)/(-1 + mpc)),
yd -> (-(con0 + gov0 + inv0 - tax0)/(-1+ mpc)),
inv -> inv0, tax -> tax0, gov -> gov0}}

{{True, True, True, True, True, True}}

{{y -> 235., con -> 185., yd -> 225., inv -> 40, tax -> 10, gov -> 10}}

235.

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(c) Shigeru Sasayama, Kumamoto Gakuen University