第13講 IS-LM分析

これまで財市場と貨幣市場を考察してきましたが,いよいよ両者を統合して分析します.それがIS-LM分析です.財政金融政策が現実の経済に与える効果を分析する際にIS-LMモデルを適用することができます.

マクロ経済学入門のとりあえずの”ゴール”地点です.

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【2010年1月8日更新】


IS曲線の導出[top]

IS曲線:財市場のモデルから導出されます.
IS曲線とは,財市場を均衡させる所得と利子率の組み合わせであり,
右下がりに描かれます.
なぜ右下がりになるのか,IS曲線が動く(シフト)のはどのような場合かなどの理解がポイントです.

ポイントは,投資関数に利子率(r)が入っていることです.
利子率の低下は投資を増加させて需要を押し上げます.

財市場のモデル
 財市場の均衡式 Y = C + I + G    (1)
 消費関数    C = Co + c Yd    (2)
 投資関数     I = Io - b r     (3)
 政府支出    G = Go       (4)
 税収      T = To + t Y    (5)
 可処分所得   Yd = Y - T     (6)

(2)から(6)を(1)に代入して,Yとrについて整理するとIS曲線が得られます.

    (7)

あるいは

          (8)

ここで,Ao=Co+Io+Go-cTo(自立的支出の合計)

導出の図解

       IS曲線の導出

1.45度線図による初期均衡点Eoに対応する点を I S 図にとります((Yoro)の点).【拡大図1】
2.利子率が低下したとします.
45度線図では利子率の低下により,切片の自立的支出が増加するので総需要線が上方へシフトします.45度線図では新均衡はE1点になります.【拡大図2】
3.E1に対応する点を下の I S 図に描きます.
E1は低下した利子率r1と増加した所得Y1に対応しています((Y1r1)の点).
4.EoとE1点を結ぶと,右下がりのIS 曲線が得られます.【拡大図3】
  【アニメーション】

IS曲線の性質
1.IS曲線は右下がり
(理由)利子率が低下 → 投資が増加 → 需要増加 → 財市場で超過需要 
→意図しない在庫の減少 → 生産計画を上方修正 → 生産増加
2.限界消費性向が大きいほど,利子率1単位の低下に対応した所得の増加は大きくなり(45度線図参照)従って乗数が大きくなるので,I S 曲線の傾きは水平に近くなります.
3.投資の利子率に対する感応度()が大きいほど,利子率の低下に対応した投資の増加が大きくなるので(需要増加も大),I S 曲線の傾きは水平に近くなります.
4.税率()が小さいほど,可処分所得の低下は少なく,乗数は大きくなるので,I S 曲線の傾きは水平に近くなります.
5.I S 曲線上のすべての点では財市場は均衡しています.
6.I S 曲線の上側の領域は,財市場は超過供給(A点)
均衡点から利子率が上昇すると,投資需要は減少するので,財市場は超過供給になります.
7.I S 曲線の下側の領域は,財市場は超過需要(B点)
均衡点から利子率が低下すると,投資需要は増加するので,財市場は超過需要になります.

      IS曲線の上側と下側の意味


  

8.需要の増加は I S 曲線を右上方にシフトさせる
消費,投資,政府支出の増加は45度線図では需要線の上方へのシフトとなって表されます.新均衡はE1となり所得はY1に増加します.新IS 曲線は利子率roの下で所得Y1の点を通りますから,IS 曲線は右方にシフトします.
9.需要の減少は I S 曲線を左下方にシフトさせます.

      支出増加とIS曲線のシフト

LM曲線の導出[top]

LM曲線:貨幣市場のモデルから導出されます.
LM 曲線とは,貨幣市場を均衡させる所得と利子率の組み合わせであり,
右上がりに描かれます.
なぜ右上がりになるのか,LM曲線が動く(シフト)のはどのような場合かなどの理解がポイントです.

貨幣需要は,所得が増加すると増加し,利子率が上昇すると,低下する,ことがポイントです.

貨幣市場のモデル
 貨幣市場の均衡式 M/P = L    (9)
 貨幣需要関数   L = kY - h r  (10)
 貨幣供給      M = Mo   (11)

(10)と(11)を(9)に代入してYとrについて整理すると,LM曲線が得られます.

           (12)

あるいは

          (13)

導出の図解

           LM曲線の導出

1.左が貨幣市場の均衡図です.E1が初期均衡点.このときの貨幣需要曲線には所得Y1が対応しています.
所得がY1,利子率がr1の均衡点E1に対応する点を右のLM 図に1点とります.【拡大図1】
2.所得がY2 に増加したとします.
所得の増加により貨幣需要は増加するので,左図の貨幣需要関数は右上方にシフトします.
均衡点はE2になります.これに対応する点をLM 図上にとります.LM 図のE2がそれに対応します.【拡大図2】
3.右図でE1とE2を結んでできるのがLM 曲線.【拡大図3】
  【アニメーション】

LM曲線の性質
1.LM 曲線は右上がり
利子率が上昇 → 投機的貨幣需要は減少 → 貨幣市場で超過供給が発生 →  
超過供給が解消するためには(供給は固定だから)所得が上昇して貨幣需要が増加する必要があります.
2.貨幣需要の所得感応度()が小さいほど,LM 曲線の傾きは水平に近くなります.
所得の増加に対応して,貨幣需要の増加が小さいと,貨幣需要関数のシフトが小さいので(利子率の変化が小さい),大きな所得の変化と小さな利子率の変化が対応するので,LM 曲線の傾きは緩やかになります.
3.貨幣需要の利子率感応度()が大きいほど,LM 曲線の傾きは水平に近くなります.
利子率感応度が大きいと,利子率1単位の変化に対応して貨幣需要の変化が大きいので,貨幣市場が均衡するためにはより一層の所得の変化が必要になります.従って,LMの傾きは水平に近くなります.
4.LM 曲線上ではすべて貨幣市場は均衡しています.
5.LM 曲線の上側領域では,貨幣市場は超過供給(A点)
利子率が上昇 → 投機的貨幣需要減少 → 供給量は固定だから,超過供給
6.LM 曲線の下側領域では,貨幣市場は超過需要(B点)
利子率が低下 → 投機的貨幣需要増加 → 供給量は固定だから,超過需要

       LM曲線の上側と下側の意味


7.貨幣供給量の増加はLM 曲線を右下方にシフトさせる
所得はY1に固定して,貨幣供給量の増加 → 貨幣供給量がM1からM2 に増加します →均衡点はE1からE2に移動 → 利子率は r1 から r2 に低下 → 右図では,所得Y1の下で利子率が低下するので,新しいLM2 は元のLM1の右下方になくてはなりません.
8.貨幣供給量の減少,あるいは貨幣需要の増加はLM 曲線を左上方にシフト

      貨幣供給量の増加とLM曲線のシフト


財市場と貨幣市場の同時均衡[top]

IS 曲線とLM 曲線の交点で,財市場と貨幣市場を同時に均衡させる所得と利子率の組み合わせが決まります.

         財市場と貨幣市場の同時均衡


ケータイ問題[top]

【問題1】IS曲線とLM曲線が上図のように示されるとき,これについての記述として正しいのはどれか.

1 投資意欲が高まるとLM曲線が右にシフトし,均衡所得は増大する.
2 貯蓄意欲が高まるとIS曲線が右にシフトし,均衡所得は増大する.
3 流動性選好が高まるとLM曲線は左にシフトし,均衡所得は減少する.

(ヒント)
IS曲線は財市場,LM曲線は貨幣市場を表す.
IS曲線とLM曲線が動くのはどのような場合かを考えること.

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(c) Shigeru Sasayama, Kumamoto Gakuen University