練習問題・試験問題



1種:国家公務員試験I種の問題
2種:国家公務員試験II種の問題
それ以外の問題は特にことわりのない限り笹山茂が作成した問題です.


GDPの定義・国民所得の決定・乗数分析・消費・投資[top]

【問題1】ある国の経済活動規模が以下のようにあたえられているとする.このとき国内総支出(GDE)はいくらか.ただし,単位は兆円.(2種)

 雇用者所得       130   営業余剰      60
 政府最終消費支出    25   国内総固定資本形成 80
 財貨サービスの輸出   30   財貨サービスの輸入 36
 在庫品の増加       1    民間最終消費支出  135
 固定資本減耗      30

【問題2】粗付加価値の合計である国内総生産(GDP)と最終需要の合計である国内総支出(GDE)の定義の空白を埋めなさい.

粗付加価値の合計(GDP)=(     )+営業余剰+(     )+間接税 - 補助金

最終需要の合計(GDE)=(        )+(          )+在庫品増加+政府最終消費支出+財・サービスの輸出 - 財・サービスの輸入

【問題3】次の文章は国民所得を生産・分配・支出の3側面からとらえたものであるが,(  )の中に適当な語句を入れなさい.(2種)

 生産国民所得というのは,企業の生産活動における二重計算を相殺して得られる( 1 )である.すなわち,生産国民所得=国民の全ての生産物の価値−( 2 )として表される.
 分配国民所得というのは国民純生産物の価値がその生産活動に参加した各経済主体の働きに応じて分配される側面からとらえた概念である.これは貨幣所得の形をとらない実物形態の所得も市場価格で評価されて計上されるが,逆に貨幣所得の形態をとっているが,年金,恩給等の( 3 )は含まない.
 支出国民所得というのは,分配された国民所得が政府および家計によって消費のために支出され,残りが貯蓄され投資のために用いられる支出の側面からみた概念である.具体的にみると,民間最終消費支出,国内総固定資本形成,在庫品の増加,( 4 ),政府の財・サービス購入である.

【問題4】ある国のマクロ経済のバランスは,民間部門の貯蓄超過が15兆円,政府の財政赤字が9兆円であったという.このとき,経常収支はどうなっているかを計算しなさい.

【問題5】世界がA国とB国の2国からなっているとします.このとき事後的なマクロバランスが次のようになっているという.A国の民間貯蓄と民間投資はそれぞれ50兆円と35兆円.またA国は5兆円の財政赤字を記録している.一方,B国の財政赤字は6兆円です.このときB国の民間部門の貯蓄投資バランスはどうなっているか.

【問題6】A財,B財の二つの財だけからなるマーケット・バスケットにおいて下の表のように基準時点,比較時点の価格,数量が与えられるとき,基準時点を100として比較時点の物価指数をラスパイレス方式,パーシェ方式,フィッシャー方式で求めなさい.(田中・笹山・坂上『マクロ経済分析』中央経済社 1995年 P.49)

【問題7】海外部門を捨象した経済において,以下のような関係が成立しています.財政収支が均衡しているとして,このときの均衡国民所得水準を求めなさい.ただし,単位は兆円.(1種)
Y=C+I+G
C=10+0.8Yd
T=0.2Y
I=50
Yd=Y−T
ここで,Yは国民所得,Ydは可処分所得,Cは消費,Iは投資,Gは政府支出,Tは租税です.

【問題8】ある国民経済において,投資,貯蓄,輸出および輸入が図のように示されるとき,次の記述のうち正しいものはどれか.(2種)
 
1 輸入曲線の傾きは,平均輸入性向を表している.
2 均衡国民所得水準においては,投資=貯蓄が成立している.
3 均衡国民所得水準は,Y2 で決定される.
4 均衡国民所得水準は,Y4 で決定される.
5 均衡国民所得水準においては,貿易収支が赤字になっている.

【問題9】以下の文章は1995年7月27日付『日本経済新聞』朝刊の「大機小機」欄に掲載されたコラム記事の全文です.マクロ経済学を学んだ人がこの文章を読めば,コラムの筆者はマクロ経済学の基礎を理解していないということがわかります.コラムの筆者の誤っている部分を以下の文章から抜き書きして指摘し,どこが誤っているかを説明しなさい.

「景気対策をめぐる議論で理解しがたいことは,政府の支出規模ぱかりが話題になることだ.しかし,景気刺激効果があるのは支出規模ではなくて,政府支出と政府収入の差である財政赤字額である.政府が税金でお金を集めて,それを公共事業に回してもネットの景気刺激効果はほとんどない.政府がA氏のポケットからお金を集めて建設会社に仕事を回せば,建設会社の景気は良くなるが,A氏の景気は悪くなるので,日本全体としては景気は良くならないからだ.他のことでは教養ある人々がなぜこんな簡単な理屈を理解されないのかまったく不思議である.
 もちろん,A氏が今晩飲んでしまおうと思っていたお金を取り上げて,病院や消防署や高速道路の耐震強化策に使えば,A氏の効用は低下するが,社会全体の効用は上昇するかもしれない.しかし,景気刺激という観点から考えれば,社会全体の支出が増えることが大事なのであって,何に使うのが社会に望ましいのかとは,別の間題である.財政政策と景気対策は,峻(しゅん)別すべきものである.財政政策とは社会全体にどってどのような支出が望ましいかを決めるものであるが,景気対策とは社会全体の支出を増やすことを目的とするものだからである.
 財政当局が現実に行っていることを見ると,本予算編成時には財政赤字を嫌って景気対策を渋るが,年度半ばになると景気が悪化し,追加的景気対策を取らざるを得なくなる.こうなると時間もないので,追加予算の査定はどうしても甘くなり,社会的に望ましい支出をするという考慮がおろそかになってしまうということを,ここ数年繰り返してきたのではないか.
 しかし,財政政策の観点ではなく,景気対策の観点から見ると,財政は不況下で立派に務めを果たしてきた.年金基金を含めた一般政府部門の収支差額はGDP比で見て,91年のブラス3%から94年のマイナス3%へ6ポイントも動き,年平均で2%ずつ成長率の落ち込みを支えた.
 では,なぜ景気が回復しなかったのかというと,景気対策のもう一つの柱である金融政策が発動されていなかったからである.マネーサプライ(M2+CD)は,バブル前には年8%伸びていたのに,91-94年は5%以下,年平均で1.5%しか伸びなかった.財政面からの景気対策がなされているなかで金融が引き締められていれば,実質金利が上昇し,海外から資金が流入して円高になり,景気はますます悪くなる.
 財政政策,景気対策,金融政策の正しい役割分担が必要である.(自由之理)」

【問題10】以下の文章は1998年5月2日付『日本経済新聞』朝刊に掲載された記事です.

「総務庁が1日発表した3月の家計調査によると,全世帯の消費支出(消費税込み)は平均で36万898円で,物価変動の影響を除いた実質で前年同月比5.7%減少した.減少幅が大きいのは,昨年3月の水準が消費税率引き上げ直前の駆け込み需要で高かったため.前月比(季節調整値)では3.8%増と2カ月ぶりに増加した.サラリーマン世帯の可処分所得に占める消費支出の割合を示す平均消費性向(季節調整値)も前月より3.3ポイント高い71.7%と7カ月ぶりに上昇しており,特別減税が個人消費悪化に一応の歯止めをかけたことを示した.」

(背景説明)1997年4月1日に政府は消費税率を5%に増加させると同時に特別減税を廃止したが,これがその後の日本経済の回復に水をさし,日本経済を停滞させる大きな原因となった.そこで,政府は景気を回復させるため1998年4月24日に特別減税を含む総額16兆円にものぼる総合経済対策を実施した.上の記事はこのような状況の下で書かれたものである.

上の記事では,平均消費性向が上昇したことが,個人消費低下に歯止めがかかった証拠とみなしていますが,この見方は理論的に妥当だと言えるでしょうか?


【問題11】限界消費性向を0.8とすると,政府が4000億円の減税を行った場合と同じ額の政府支出を行った場合の,乗数効果を通じての国民所得の増加に与える効果はそれぞれいくらでしょうか.ただし,租税は定額税で,投資は所与であり,海外部門は無視するものとします.(2種)

【問題12】財市場のみを考慮した封鎖経済マクロモデルを考えます.このとき増税と政府支出増加を共に2兆円ずつ同時に実施した場合,国民所得へ与える効果はどうなるでしょうか.ただし,限界消費性向は0.8,租税収入は定額税とします.

【問題13】いま,国民所得体系が次のような式で表される.

 Y = C + I + G + X - M
 C = c (Y - T)
 T = t Y
 M = m Y
Y: 国民所得 C: 消費 I: 投資 G: 政府支出 T: 租税 X: 輸出 M: 輸入
限界消費性向 c が0.7,平均租税tが0.1,限界輸入性向mが0.2,投資と輸出は外生的に与えられ,財政収支は均衡している.この場合,完全雇用と貿易収支均衡を同時に達成させる投資はいくらか.ただし,完全雇用所得水準は200とする.(1種)

【問題14】次の表は可処分所得と消費の関係を表したものですが,これから消費関数を求めなさい.
    

【問題15】恒常所得の9割が消費にまわされるような,恒常所得仮説に基づく消費関数を考える.いま,t期の恒常所得
       (Yt はt期の所得)
で示され,また,過去数年間の期間ごとの所得が100であるとするならば,t期における短期と長期の限界消費性向を求めよ.(1種)

【問題16】現在100万円の年収があり,200万円の資産を保有している20歳の人がいる.この人が60歳まで働き,80歳まで寿命があり,将来の所得は現在の所得と同額であるという予想の下で,生涯にわたって毎年同額の消費を行うとするとき,年々の消費額,限界消費性向,平均消費性向はいくらになるか.ただし,個人の行動はライフ・サイクル仮説に従い,利子所得はないものとする.(1種)

【問題17】ある企業が総投下資本150億円のプロジェクトを計画している.このプロジェクトからは毎年3億円の収益が60年間にわたって得られると予想される.このときケインズのいう投資の限界効率はいくらか.ただし,投下資本は減価せず,また,計算の都合上60年間という期間は無限期間と考えることとする.(2種)

【問題18】【問題17】で期間を無限としないで60年間とした場合の投資の限界効率を計算してみなさい.

[top] [マクロ経済学1へ戻る]


Mail to: sasayama@kumagaku.ac.jp
Copyright(C) Kumamoto Gakuen University