論文作成の手引き



ことわり

この手引きは熊本学園大学経済学部が,卒業論文提出者用に作成した手引きを私(笹山茂)が補足したものです.卒業論文だけでなく,演習の論文についてもほぼそのまま適用できるので,内容をよく読んで正しい論文の書式を学んでください.

はじめに[top]

論文の価値は,その内容にあるのは言うまでもありません.しかし,書かれた内容を読む人に正確に伝達するためには,学術論文のスタイルに則った分かりやすい形式で記述することが必要です.この論文作成の手引きは,論文を書くときの形式的なスタイルに焦点をあてたものです.スタイルがしっかりしている論文は概して内容も立派なものが多いのです.

論文の構成[top]

論文は,表紙,目次,論文本体,注,参考文献から構成されます.表紙は,図1の形式で作成します.

図1 表紙

目次は,図2の形式で作成します.用紙中央部に,タイトルを記し,その下に目次をつくります.目次は,<目次>と明記し,1頁に収まるようにします.見出し番号は図2のように「1章,1.1(1章1節の意味)」といった形式にします.

図2 目次

論文のスタイル[top]

(1)論文の構成
学術論文には書き方のスタイルがあります.そのスタイルに則って書きます.「はじめに」から「おわりに」までの中で何を書くかについて簡単に説明します.

●はじめに(序論に相当)
この論文を書くに至った経緯,テーマを選んだ問題意識,テーマの背景,論文の構成等などを述べます.

●本論
論文のテーマについてのメインの部分.この部分は,いくつかの章に分けて議論されるのが普通です.

●おわりに(結論に相当)
本論中で得られた結論を要約的にまとめると同時に,十分解明できなかったことや今後の課題を記します.

●論文の注
本文中で付けた注は最後にまとめて載せます.注の付け方は後の「注の書き方」で説明します.

●参考文献リスト
本文中で引用した,あるいは参照した文献はすべて最後に掲載します.参考文献リストの書き方は後の「参考文献の書き方」の項を参照してください.

(2)引用について

引用は公正に行わなければなりません.他人の論文や書籍の文章をいかにも自分で書いたようにすればこれは盗作とか剽窃となります.他人の文章を引用あるいは参照した場合は必ずそれとわかるようにしなければなりません.当然のことながら,自分の文章より引用の方が多いのは論文とは言えません.

●文中の短い引用は「 」でくくります.
●文中の長い引用は,行を改めて本文より2字下げて記します.
●参照箇所や引用には必ず注番号を付け,出所を明示しなければなりません.出所は論文名あるいは書名だけでなく,ページまでしっかり記さなければなりません.注は本文の後にまとめて,所定の形式で注番号順に記載します.
●続けて同一の文献や論文を引用する場合は簡略表示をします.和書は,同上(同書,同上書,同訳書,同上訳書,同論文,同上論文,も可),洋書は,Ibid.(ラテン語のIbiden(同じ場所に)の略)と表記します.
例:
 同上,285頁.
 田村.前掲書,58頁.
 石田,前掲論文,28頁.
 Ibid., p.52.

(3)図や表について

経済学の論文では,文章だけでなく図や表が挿入されることが普通です.図や表は表計算ソフトやグラフィックスソフトできれいに作成し,ワープロの文章中にコピーアンドペーストします.

●図や表は本文の適切なところに割り付け(ペーストし)ます.
●図や表の頭部には必ず番号と見出しを付けます.
例:図1-1 日本の国内総生産の推移
  表2-3 日本の鉱工業生産指数
上の例では,図1-1は1章の1番目の図という意味になります.表2-3は2章の3番目の表ということを表します.
●図や表の下部には必ずデータの出所を明記しなければなりません.
例:(出所)経済企画庁『国民経済計算年報』1996年度版
●自分で独自に集めてきたデータに基づいて作成した図や表には,(出所)の代りに(資料)とします.

(4)その他の注意事項
●目次に対応する見出しで区切って書きます.たとえぱ,目次に「1 ○□○」となっていたら,本文の見出しも「1 ○□○」とします.
●ページ番号をフッタの下中央につけます.
ワープロソフトでは,ページ番号はフッタやヘッダに付けるようになっています.
●主語と述語を正確に対応させましょう.
そのためには,1つの文章は最長で60字程度におさえます.
●誤字,当て字,ワープロ変換ミスをモニターを見ながら点検しましょう.
●段落の先頭の文字は1文字下げます.
●句読点,右括弧,添字等は行の先頭に来ないようにします.
●2行にわたる英語の綴りは適切な箇所でハイフンを入れて切ります.
●語調は「である」調に統一します.
なお,この文章は「です・ます」調です.

注の書き方[top]

注の役割は大きく分けると2つあります.1つは,本文中で引用した文章について注番号をつけて,注の中で引用元を詳しく補う場合です.2つ目は,本文中の文章や語句について,本文で詳しく説明していると読みにくくなったり,論理の流れが悪くなる場合に,注の中でそれらの関連事項を詳しく説明する場合です.

●注番号は通し番号とし,本文の文未に上添え字の小さな数字で付けます.
注の数字は1)のように右肩上に記すのが普通です(下図参照).

図3 注の付け方

参考文献の書き方[top]

論文の末には,必ず本文中で引用,あるいは参照した文献の一覧を載せます.論文の中で言及しなかった文献は参考文献リストの中には含めません.参考文献を書くには,一定のきまりがあります.そのルールを以下にまとめます.日本語文献と外国語文献では書き方が異なるので注意が必要です.

●日本語文献と外国語文献は別々に分けた方がよい.
●掲載する順番は,著者の姓のアルファベット順(外国語文献),あるいは五十音順(日本語文献)にします.
●1つの文献について,書く順番は,日本語論文の場合は次のようになります.
   著者名(発表年),「論文名」,『掲載雑誌名』 巻号数 ページ数.
     「 」と『 』の区別に注意してください.
●日本語の書籍の場合.
   著者名(発表年),『書名』 出版社.
●外国語論文の場合.
   著者の last name,first nameの頭文字(発表年)," 論文名 , " 掲載雑誌名(イタリック体にする),巻(Vol.)号(No.)数,ページ数.
     " " や雑誌名をイタリック体にすることがポイン
です.
●外国語書籍の場合.
   著者のlast name,first name の頭文字(発表年), 書名(イタリック体にする),出版社.
  書名をイタリック体(斜体文字)にするのが大切です.
●翻訳書の場合は翻訳書の後ろに括弧で原著を示すか,次の行に原著を示します.ただし,翻訳書だけを利用して原著にあたっていない場合は,翻訳書だけを表示します.
●頁の表記は,p.xxまたはpp.xx‐xxとします.ただし,和書の場合は,00頁とか00−00頁としてもかまいません.

(注意)発表年の表示の仕方は上のように著者名の後に( )でくくる場合のほかに,出版社名の後に入れる場合の2通りの方法があります.

参考文献リストの例:

Baillie, R. and McMahon, P.(1989), The Foreign Exchange Market: Theory and Econometric Evidence, Cambridge University Press.

Dickey, D.A. and Fuller, W.A.(1981), "Likelihood Ratio Statistics for Autoregressive Time Series With a Unit Root," Econometrica, Vol.49, No.4, 1057-1072.

Granger, C.W.J.(1986) ,"Developments in the Study of Cointegrated Economic Variables," Oxford Bulletin of Economics and Statistics, Vol. 48, No.3, 213-228.

笹山茂(1990)「円レートのランダムウォークについて」『熊本商大論集』第36巻第3号, 5月,53-70.

高木信二(1989)『為替レート変動と国際通貨制度』第3章,東洋経済新報社.

山本拓(1988)『経済の時系列分析』創文社.

発表年を後ろにもってくる場合の例:

Stern,L.V. and Kaufman, P.J., "Electronic Data lnterchange in Selected Consummer Goods lndustries," in Buzzel, R.D. ed., Marketing in an Electronic Age,  Harvard Business School, 1985, p.52.

石田晴久「研究者を結ぷ国際ネットワークの構築」『オフィス・オートメーション』 Vol.8,No.5,1988年,24−30頁.

柴田章久「内生的経済成長理論」『季刊理論経学』44,1993年,pp.385‐401.

田村正紀『日本型流通システム』千倉書房,昭和61年,224頁.
Porter, M.E., Competivie Strategy, The Free Press, 1980, p.62.
村田昭治監修,P.コトラー『マーケティング原理』ダイヤモンド社,昭和58年.Kotler, P., Principles of Marketing, Prentice-Hall,1980.

(まとめ)
原則1:著者名(発行年),書名,出版社 あるいは,
    著者名,書名,出版社,発行年 の順番で書きます.
原則2:日本語の書名は『 』でくくります.
原則3:日本語の論文名は「 」でくくります.
原則4:外国語の書名は,イタリック体にします.
原則5:外国語の論文名は," " でくくります.
原則6:参考文献を並べる順番は,外国語文献の場合は,著者名の姓のアルファベット順に,日本語文献の場合は,著者名の姓の五十音順で.

論文の文字数[top]

経済学部で決めている論文の文字数の目安は本文だけで10,000字程度です.
参考:A4版の大きさで,以下の書式設定で明朝体10ポイントのフォントで1ページを全部埋めると,約1,200文字になります.10,000文字になるには本文だけで少なくとも9ページは必要です.表紙や目次,注,参考文献リストを加えると全体で15ページぐらいになるようにしましょう.

ワープロの書式について[top]

ワープロソフトで論文を書くときの基本的な書式の設定を以下にまとめておきます.

●用紙設定はA4版の大きさを選ぶこと.
●ページ書式では,余白上下2.4cm,左右2.2cm,ヘッダおよびフッタの高さ2.0cm,行間は0.5.読みやすいように行間は少しあけることが大切.行間以外は初期設定値です.
●1行45文字,1ページ30行が目安.1行の文字数は特に指定する必要はありません.
●表紙の文字や見出しのフォントはゴシック体を使います.
●見出しには12ポイント以上の大きなサイズを指定します.
●本文のフォントは明朝体の10ポイントを選びます.
●フッタに必ずページ番号を入れましょう.

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(C) Shigeru Sasayama, Kumamoto Gakuen University