回遊行動把握のためのプローブパーソン調査とインタビュー調査の利用可能性の検討

A STUDY OF THE USABILITY OF A PROBE PERSON SURVEY AND THE INTERVIEW SURVEY FOR EXCURSION BEHAVIOR GRASP

石野 祐希
Yuki ISHINO

 In recent years, there is a decrease in amount of pedestrian traffic and retail sales of the central shopping street in Kumamoto City by the suburbanization of residents and the commercial functions. As a result of the suburbanization, there is also an increase in unused land, and the vitality of the city’s center area has dropped. In order to solve the said problems, it is necessary to create attractive points and improve the vitality of the city’s central area. In this study, in order to grasp the traffic conditions of urban area level, the author has conducted person trip and probe person surveys. While determining the specific characteristics of each survey, the author analyzed the conditions of migratory behavior of the pedestrians in detail. Finally, the author clarified the primary factors and mechanisms of migratory behavior and found its usability.

KeyWords:person trip survey, probe person survey,excursion behavior usability

 

 九州新幹線鹿児島ルートの全線開通や政令指定都市へ の移行などにより,熊本市を取り巻く環境は大きく変化すると同時に,都市としてさらなる飛躍が期待されている.しかし,居住者や商業機能の郊外化による中心商店街の歩行者交通量や小売販売額の減少,低・未利用地の増加など,中心市街地の活力の低下が懸念されている. これらの課題を解決する為に,熊本市は熊本市中心市街地活性化基本計画1)や花畑・桜町地区の再開発事業を検討しており,これまで以上に中心市街地の魅力創造と活力向上に力を入れている.
 都市圏レベルの交通実態を把握するために,我が国では,パーソントリップ調査(PT調査)を代表とする大規模な調査がなされてきた.PT調査は多くの都市圏で郵送配布・郵送回収方式に移行しているが,全国的に回収率の低下が見られるようになり,回収率の低下を防ぐためには,より被験者の負担が少ない交通調査手法が求められる.一方で,全世界で急速に普及が進むスマートフォン(以下,スマホ)は,超小型の高性能PCと位置づけられ,これらスマホではGPS等による位置情報取得機能が利用できる.また,これまでに取り組まれたGPS型携帯電話などの位置計測機器を利用したプローブパーソン調査(PP調査)と実務への適用は日本が世界に先行した研究分野であるが,スマホのアプリを利用することで,このPP調査はさらに高度で多様なデータ収集が可能となることが期待されている.
 来街者の回遊を促進することは中心市街地を活性化させる有効な施策の一つと考えられる.そのためには,歩行者の回遊行動の実態を詳細に分析し,回遊行動に影響を及ぼす要因とメカニズムを明らかにすることが必要であるとともに十分なサンプル数の確保や調査自体の精度を向上させる必要がある.
 既存研究では,歩行者回遊行動アンケート調査(以後インタビュー調査とする)とくまもとまち歩き調査(以後スマホ調査とする)のそれぞれの調査の詳細な分析はおこなっているが,両調査の利用可能性の検討まではおこなっていない.両調査より得られたデータをもとにそれぞれの特性を把握するとともに各調査の長所・短所を踏まえたうえで精度の高い調査を今後行っていく必要がある.本研究では,両調査のデータを用いて基礎的な集計から回遊時間と訪問箇所数の特性比較および来街目的,来街手段別にみた両調査の被験者の特性比較をおこない,各調査の特性を把握する.また,得られた調査結果は今後インタビュー調査やスマホ調査を行う場合,両調査の特性を考慮したうえで被験者の回遊行動をより詳細に分析するために利用することができる.以上より本研究では,インタビュー調査とスマホ調査という異なる手法の調査からインタビュー調査と整合するようなスマホ調査と整合の可能性を検討することを目的としている.また,本研究の対象エリアは,図1-1に示す熊本市中心市街地活性化基本計画の対象エリアである通町・桜町地区である.