熊本市における自転車利用意識と通行帯の選択に関する研究

A STUDY ON THE CONSCIOUSNESS OF BICYCLE USE AND THE CHOICE MODEL OF TRAFFIC ZONE IN KUMAMOTO CITY

田中 美彩季
Misaki TANAKA

 In Kumamoto city, about 10% of people in daily life use the bicycle because the topography of the Kumamoto plain is relatively flat and the town is formed to the extent that it can move by bicycle around the central urban area . In principle, bicycles, which are light vehicles, run on the left side end of the roadway under the Road Traffic Law, but in reality, they must run while choosing the sidewalks and roadways as appropriate. As a result, bicycles are perceived as dangerous both by cars and by pedestrians, so it is necessary to improve the running environment of bicycles. In this research, we aim to clarify the relationship between the consciousness of bicycle users and the selection of passage positions obtained from 'questionnaire on bicycle use in Kumamoto city'.

KeyWords: bicycle, Driving environment , Traffic location

 

 近年,少子化や高齢化の進展とともに人口減少社会を迎える中,まちづくりのあり方も拡散型の都市構造から中心市街地を中心に既存の都市機能を効率よく活用し,かつ高齢者にとっても移動しやすい環境を整備することからコンパクトシティへの転換が求められており,その移動手段の一つとして環境にもやさしい自転車の利用が重要視されている.
 熊本平野の地形が比較的平坦であることや,中心市街地を中心に自転車で移動できる範囲で街が形成されていることから,熊本市でも日常生活において約1割の人が自転車を利用している.熊本市では,「自転車でお出かけしたくなるまちづくり」を基本理念に,1) コンパクトなまちづくり,2) 中心市街地活性化,3) 低炭素都市づくり,以上3つを目的として掲げ,自転車の利用を促進している.
 一方で,軽車両である自転車は道路交通法上では車道の左側端を走ることが原則となっているにも関わらず,実際には歩道と車道を適宜選択しながら走行しなければならないのが現状である.その結果,自転車は自動車からも歩行者からも危険と感じられる.
 熊本市における自転車関連事故は,単路部と交差点部でほぼ同等の割合で発生しており,交通事故時の事故形態は,出会い頭が多い傾向にある.自転車関連事故の発生箇所の内訳を図-1,自転車関連事故の発生箇所と事故類型1)を図-2に示す.熊本市における自転車関連事故の発生件数は,平成22年から平成25年の間で交差点部654件(54%),単路部556件(46%)である.全国的な傾向としては交差点部が7割程度であるため,熊本市では単路部の交通事故の割合が多いと考えられる.自転車関連事故の発生箇所と事故の形態をみると,交差点部では出会い頭,左折時,右折時事故がほぼ同じく約3割発生しているのに対して,単路部では出会い頭事故が約半分を占めている.これより,熊本市では単路部での出会い頭事故が多いことが分かる.
 自転車事故の原因としては,自転車の右側通行が挙げられる.自転車の出会い頭事故データによると,車道を逆走する自転車の事故割合は車道を順方向に走行する自転車の約50倍である.2)したがって自転車の右側通行は非常に危険であり,自転車の走行環境を改善していく必要がある.また,ITARDA INFORMATION交通事故分析レポート3)によると,10代の若者による自転車事故が圧倒的に多いことが分かった.自転車側が優先となるケースは約1割と低く,自転車側に過失が多いことも分かった.例えば,一時停止標識のある交差点では,軽自動車である自転車は停止線の手前で一時停止しなければならないが,免許を持たない中学生や高校生の中にはそのことを知らない人も少なくなく,急な飛び出しの一因になっていると考えられる.中学生や高校生になると自転車通学をする人数も増えることから,交通ルールを再確認するとともに,危険に対する意識付けや安全な走行方法などを身に付けることが求められる.
 そこで,本研究では熊本市が行った「熊本市における自転車利用に関するアンケート」4)を使用し,市民の自転車の利用意識と選択された通行位置との関係,およびその評価について分析を行う.その中で1)自転車の利用実態と,2)自転車の利用に対する意識を明らかにすること,3)通行位置の選択モデルを推定することにより,人の通行位置の選択に影響を及ぼしている要因を抽出する.
 本研究は全5章で構成されている.2章では熊本市における自転車通行の実態と自転車走行環境の整備について説明を行う.3章では「熊本市における自転車利用に関するアンケート」を使用し,市民の自転車利用に対する意識分析を行う.4章では,通行位置の選択に与える要因について分析を行う.そして,通行位置の選択モデルの推定を行い,通行位置と自転車利用経験や安全意識との関係を明らかにする.最後に5章で本研究の成果と今後の課題についてまとめる.