MEVによるカーシェアリングシステムの導入可能性に関するシミュレーション分析

SIMULATION MODEL FOR INTRODUCTION OF ONE-WAY MICRO ELECTRIC VEHICLE SHARING SCHEME

中村 謙太
Kenta NAKAMURA

 Car-sharing systems offer an alternative mode of transportation in urban areas. The concept of car sharing is becoming popular all over the world. One-way car sharing is convenient because users can access vehicles in one depot at any time and then return them to another. This “one-way car sharing” has spread globally. However, problems can arise, mainly as a result of the uneven distribution of vehicles, which can make it impossible to reserve a vehicle in some locations.
 In this research, we set out to verify the possibility of introducing one-way car sharing by creating a model of such a scheme, which we applied to an analysis of the scheme’s operation. We also optimize depot arrangement.

KeyWords: micro electric vehicle ,"one-way type" car-sharing system, simulation analysis, genetic algorithm

 

都市における新たな交通手段としてカーシェアリングが注目を集めている.ドイツのcar2goなど,欧米を中心にカーシェアリングシステムが定着してきた.図-11)に示すように,2009年にはカーシェアリングの会員数は約6,000人,車両台数は約500台であったものが,2010年以降は年々増加傾向にあり,2015年にはそれぞれ約680,000人,16,000台となっている.さらに,近年MEV(Micro Electric Vehicle)を利用したシェアリングシステムへの注目が集まっている.MEVは,国土交通省2) 3)が平成25年から新たに認定した超小型電気自動車であり,少子高齢化時代の「新たなカテゴリー」の乗り物として位置づけられている.MEV初期費用が高額なためシェアリングは相性が良いと考えられている. シェアリングサービスは,貸出し場所と返却場所が同一であるラウンドトリップ型と貸出し場所と返却場所が異なるワンウェイトリップ型に大別されるが,後者は利便性が高い反面,需要の偏りにより車両が偏在するといった問題が生じる.この場合,再配車を行っているが,それには経費がかかるため採算面で大きな問題となっている.また,ワンウェイ型シェアリングサービス(以後,OWSシステム:One-Way type Sharingと記す)にはステーションベース型とフリーフロート型の2つのサービスがある.ステーションベース型では専用のステーションが存在する.一方,フリーフロート型は専用ステーションが存在せず,対象地域内であれば道路の路側帯や公共駐車場に返却できるサービスであり,ステーションベース型よりも自由度の高いサービスであり,基本的に一般道路に路上駐車を認めている欧米を中心に,近年急速に展開が進んでいるシステムである.著者らの既存研究4)では,車両の偏在により予約が受けられないリスクを考慮したOWSへの置き換えモデルを構築し,そのモデルを組み込んだ運用シミュレーションプログラムを開発し,ステーションベース型とした場合のOWSシステムの挙動を分析してきた.本研究では,(1)再配車を行わないステーションベース型(以後,SB-OWSと記す)とフリーフロート型OWS(以後,FF-OWSと記す)システムの運用シミュレーション分析,(2)FF-OWSサービスの導入が難しい日本において有効なサービスとなるSB-OWSシステムにおいて,デポの最適配置を行い,効率性を高めた運用方法を検討することを目的とする. 本論文は7章から構成されている.まず,第2章でMEVの導入,カーシェアリングの現況と研究課題について述べる.第3章ではOWSシステム選択モデルとそれを組み込んだ運用シミュレーションの手順について説明する.第4章ではSB-OWS,FF-OWSの両OWSシステムを想定した運用シミュレーション分析を行う.第5章ではOWSシステムシミュレーションを組み込んだSB-OWSの最適デポ配置計画を解く.第6章ではOWSの普及過程を考慮した運用シミュレーション分析を行う.最後に第7章で本研究の結論と問題点について述べる.