「徳の一性をめぐる問題−『プロタゴラス』篇に則して」
  『哲学論文集』第30輯、pp.41〜58 九州大学哲学会編 1994年9月

  私たちが私たち自身の生き方の問題として倫理的な世界を持っているということはどのような事なのか。この問いを解く一つの手がかりとして『プロタゴラス』篇の「徳の一性(Unity of virtue)」に問題を絞った。まず従来の論者の説の整理を行った。その次にこれまでの図式である「徳」と勇気・節制等の諸徳の両者の包含関係を検討した。そして最終的にその包含関係から離れ、「徳」と「諸徳」の両者がそれぞれ言明にのぼる場合の「言明者の意識の問題」として新たな様相を取り入れた視点から論じた。その結果明らかになったのは以下の点である。つまり我々が徳に関する言葉、倫理的な言葉を用いる場合(例えば「勇気」など)、我々はその言葉を単独で用いているのではなく他の倫理的な言葉(「美しい」「正しい」「徳」など)とのネットワークの中で用いざるを得ないということである(これは一種のホーリスティックな言語ゲームを想定している)。











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