インターネットで経済・社会はどう変わる:
   情報化社会の新たなステージ

熊本学園大学公開講座 2000年10月11日(水)
熊本学園大学 経済学部 笹山 茂

http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/internets/neteconomy.html
(注:資料等を追加してあります)

1.イントロダクション

2.インターネットの利用

3.インターネットの歴史と発展

4.インターネットと経済

5.インターネットをいかに活用するか

6.インターネットの問題点と課題

7.Resources


1.イントロダクション[top]

・1980年,アルビン・トフラー『第三の波』
   Alvin Toffler and the Third Wave
・1992年 パソコン通信 メロスネット
・1996年 熊本学園大学インターネット
・1997年 HP開設
・2000年 熊本ケーブルネットワーク,インターネット開始

・インターネット革命か IT revolution
・18世紀 産業革命,蒸気機関
・19世紀 鉄道
・20世紀前半 自動車と電気
・現在 情報技術(IT)

2.インターネットの利用[top]

日本のインターネット人口:2000万人(2000年6月)(インプレス)
Nielsen//NetRatings(インターネット人口調査)
インターネット視聴率センター(日経BP)(2000年3月実施)
ビデオリサーチネットコム


・米国のインターネット人口:1億630万人
世界のインターネット人口:2億7550万人(2000年2月)(通信白書2000年版)

日本でのインターネットの普及状況(通信白書2000年版)

インターネット普及率10%以上の国(地域)(通信白書2000年版)
北欧はモバイル通信王国(EricssonNokia

インターネットとモバイルの利用状況(通信白書2000年版)

インターネット接続サービスの利用者数(郵政省2000年8月31日)
 ダイヤルアップ型:1375万人(2000年7月末,以下同)
 CATVインターネット事業者数:133社(33万世帯)
 携帯端末インターネット利用者数:1506万人
 DSL(Didital Subscriber Line)サービス利用者数:1605人

3.インターネットの歴史と発展[top]

・1969年9月2日,UCLAから国防総省のARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)につなぐ
・1982年,TCP/IPをプロトコルとして採用
・1984年,JUNET,東大・東工大・慶大間で接続
・1990年,WWW(World Wide Web)
・1993年,Webブラウザ
・1995年,インターネットが商業利用に開放
・インターネット誕生から31年.当初は研究者用のネットワーク

A Brief History of the Internet

4.インターネットと経済[top]

■B2CとB2B

BtoC電子商取引市場規模の日米比較(通産省,アンダーセンコンサルティング)
          日本       米国
 1998年:  650億円   2.25兆円
        (0.02%)  (0.4%)
 2003年: 3.16兆円  21.3 兆円
         (1%)    (3.2%)
 

BtoB電子商取引市場規模の日米比較
          日本       米国
 1998年:  8.62兆円   19.5兆円
         (1.5%)   (2.5%)
 2003年: 68.4 兆円  165.3兆円
         (11.2%)  (19.1%)
 

日本のB2C:商品・サービスセグメント別電子商取引市場規模
 

日本のB2B:商品・サービスセグメント別電子商取引市場規模
 

・B2B,B2C,現在は経済取引の数%を占めるにすぎないが,今後大きな役割を占めてくる.

調査例:
情報通信総合研究所,
・インターネットショッピング経験者:7割(増加傾向)
・1年間の購入平均金額:43,601円
・購入品目上位5:書籍,衣類・ファッション,コンピュータ関連,日常食材以外の食品,旅行関連
・インターネットバンキング利用経験者:12.8%(8人に1人)
 MIN第14回アンケート「インターネットバンキング利用実態調査」(2000年10月5日)

電子商取引推進協議会,
 消費者の電子商取引に関する意識調査(2000年8月7日)

米国の調査
 米商務省,「デジタルインクルージョンへ向けて(2000年10月16日)
 Falling Through the Net: Toward Digital Inclusion(Oct. 16, 2000)
 米国のパソコン普及率51%
 インターネット普及率41.5%

■インターネットが経済に及ぼす効果
・取引コストの低減
・ニーズに応じた受注生産
・情報が完全な市場
・一物一価
 価格ドットコム
・1対1マーケティング
・初期投資費用莫大,限界費用限りなくゼロ
・ロックイン効果とスイッチングコスト(Lock-in effects)
・ネットワーク効果(network effects)
・個別の価格付け(personalized pricing)
・新しいビジネスモデル(business-method patent)
 ステート・ストリート・バンク事件(1998年)
 アマゾンのワンクリック(one click) VS バーンズアンドノーブル
 
 プライスラインの逆オークション(reverse auction)
 U.S. Patent and Trademark Office
 Full Text Search(boolean)
・著作権,特許
 特許庁
 特許庁,「特許・実用新案を検索する
 特許庁,「ビジネス方法の特許について
  トヨタの「かんばん方式」
  住友銀行の「パーフェクト」
・無料化と有料化の2つの流れ
 名誉か金か
 Linux(Linus B. Torvalds)
 asahi.com

 WSJ Interactive Edition(有料)
 The Economist(有料)

■米国のニューエコノミー論
・デジタル経済部門の生産性の上昇と物価の低下
・オールドエコノミーへの波及がカギ
・オールドエコノミーがいかに IT 化するか

米商務省,Digital Economy 2000(pdfファイル,2000年6月)
Digital Economy 2000 の主な論点

・アメリカ経済の拡大は2000年で10年目.労働生産性は2倍,低インフレと失業率

・IT産業が米国のGDPに占める割合は2000年で8.3%,1995年から99年の経済成長率の約1/3に貢献

・90年代後半の米国の労働生産性の増加のうち半分以上はIT投資関連が寄与.ただし,医療やサービス産業では,IT投資が増えたにもかかわらず生産性が低下した.

・情報技術(IT)関連の財とサービス価格の低下は,1994年から98年の間に米国の物価水準を2.3%から1.8%へと0.5ポイント押し下げた.IT価格の低下は90年代に後半に加速し,96年から98年の間では平均で8%も低下した.

・コンピュータ価格は1987年から1994年の間に年平均で約12%低下し,95年から99年の間では年平均26%も低下した.通信機器の価格は年2%低下した.

・IT機器やソフトウエアへの投資は1995年から99年の間に2倍以上も増え,2430億ドルから5100億ドルへ増えた.そのうちソフトウェア部門は同期間中に820億ドルから1490億ドルへ増加した.

・1999年第四四半期では,米国での企業と消費者間のオンライン取引(B to C)は53億ドルに達し,全小売り販売額の0.64%に相当する.

・ニューエコノミーは,コンピュータのハードウェアとソフトウェアの発展だけでなく,急速に低価格化が進む関連電子機器の接続によって形成されている.特にインターネットは大企業だけでなく中小企業にも企業間(B to B)での電子商取引の機会を広げた.

・1994年から99年の間で,米国のR&D(研究開発)投資は約6%増加したが,増加率の37%はIT産業で占められている.98年のIT産業の投資は448億ドルであり,企業全体のR&D投資の1/3を占める.

・1998年で,IT関連産業で働く労働者数は740万人であり,米国の全労働者の6.1%である.ソフトウェアやコンピュータ産業の労働者は92年の85万人から98年には160万人に倍増した.

・米国はIT産業が発達しているが,IT財の貿易では赤字国であり,1999年では66億ドルの貿易赤字を記録している.この理由は米国企業は米国国内から輸出するよりも海外の子会社から輸出する方が多いから.97年での米国の海外子会社からの輸出は1960億ドルであり,米国国内からの輸出は1210億ドルと推定されている.

・米国国内でもITの広まりにはばらつきがある.インターネットに繋がっていない家庭も多い.ITを持つ者と持たざる者との間に生じるデジタル・デバイド(digital divide,情報化が生む経済格差)の問題もある.
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ポイントは,1995年以降の米経済の高成長率,高労働生産性,低インフレ率にIT(情報技術)が大きく貢献しているということ.

・The Economist,Survey: The New Economy, Untangling e-economics(Sep 21, 2000):

・斉藤克仁「ITの生産性上昇効果についての国際比較」,日本銀行国際局ワーキングペーパーシリーズ,2000年10月.付録に有用な図がたくさん掲載されています.(pdfファイル)

5.インターネットをいかに活用するか[top]

・情報収集力を高める

・情報発信力を高める

・企業LANでメールの活用.メーリングリスト,リーダーが必要
・メール文化が未熟な段階では,電話,相対での会議も重要
・メールマガジンの発行(まぐまぐ
・サーチエンジンの積極的活用
 Google
・自社アドレスの積極的登録(ポータルサイトへ)
 ヤフー

・企業にとっては,消費者の意見をくみ取る姿勢が大切
・松下のノートパソコン開発,東芝事件(ビデオ)
・特に米政府サイトは充実
プレスリリースと同時にオリジナル資料をpdfファイルでサイトから配布.
大統領経済報告書」などは典型的

6.インターネットの問題点と課題[top]

・情報入手・発信が早くなったことと,各自の生産性(仕事,創造性)が上がるかどうかは必ずしも一致しない.
・インターネットの悪用,犯罪,詐欺,名誉毀損,誹謗中傷
・インターネットのエチケット不足.有害情報の氾濫
・ネット教育の重要性
・インターネット内で人格が変わる
・セキュリティの問題,クレジットカード決済,電子マネー
・ネット専用クレジットカードの登場(VISA, American Express)
・家計におけるインターネット関連通信費用の割合増加
・中央と地方の情報格差は埋まるか
・地方のインターネットのインフラ整備が重要
・光ケーブルもあるが.CATV網整備は重要ポイント


■インターネット今後の課題
・通信料金の高さ
プロバイダー料金は低下しているが,通話料が日本の場合高い
(月額,郵政省調べ,8/25/00)
 ISDN常時接続  東京9330円  NYの1.8倍
 CATV接続   東京6000円  NYの1.3倍

電気通信サービスに係る内外価格差調査の概要(郵政省2000年8月25日)PP8-9.


・通話料はこれまでは従量制が主
・固定制がインターネットの利用には適している
・ブロードバンド(広帯域)の普及
 CATVはISDN(64)の4倍,アナログの8倍
・CATV加入,33万世帯
 日経BP,加入者急増「CATVインターネット」(2000年9月1日)
・ADSL加入,1600世帯
フレッツISDN(64の常時接続)
・小中高校の教育整備が重要,インターネット回線が整備されていない
・デジタル・デバイド(digital divide)


7.Resources[top]

・アルビン・トフラー『第三の波』書評:   
  http://www.upunet.ne.jp/INTER-IT/book/body/book06.html

・Alvin Toffler and the Third Wave:
  http://www.mfinley.com/toffler.htm

・熊本学園大学: http://www.kumagaku.ac.jp/

・熊本学園大学 経済学部: http://www.econ.kumagaku.ac.jp/

・熊本学園大学 情報教育センター: http://www.acc.kumagaku.ac.jp/

・熊本学園大学 笹山 茂: http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/

・熊本ケーブルネットワーク: http://www.kcn-tv.co.jp/top.html

・インプレス,日本のインターネット人口(2000年6月):
  http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/0728/popu.gif

・ニールセン・ネットレイティングス,インターネット人口調査:
  http://www.netratings.co.jp/

・日経BP,インターネット視聴率調査: 
  http://ma.nikkeibp.co.jp/audit/info.html

・ビデオリサーチネットコム,インターネット普及状況調査:
  http://www.vrnetcom.co.jp/

・郵政省,通信白書2000年版: 
  http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/papers/h12/index.html

・インターネット接続サービスの利用者数(郵政省2000年8月31日):
  http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/denki/000831j603.html

・Internet Society, A Brief History of the Internet:
  http://www.isoc.org/internet-history/brief.html

・通産省,アンダーセン・コンサルティング,「日米電子商取引の市場規模調査」(1999年3月31日):
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/

・電子商取引推進協議会: http://www.ecom.or.jp/

・電子商取引推進協議会 消費者の電子商取引に関する意識調査(2000年8月7日):
  http://www.ecom.or.jp/press/20000807.html

・情報通信総合研究所,インターネットバンキング利用実態調査(2000年10月5日):
  http://www.commerce.or.jp/enq/report/enq14/index.html

・野村総研・東京大学社会情報研究所「インターネット利用者の実態1998」(1999年2月25日):
  http://www.nri.co.jp/news/1999/990225/index.html

・米商務省,デジタルインクルージョンへ向けて(2000年10月16日):
  http://osecnt13.osec.doc.gov/public.nsf/docs/3E1A7297DC433BC9852569770076E173

・米商務省,Falling Through the Net: Toward Digital Inclusion(Oct. 16, 2000)(pdfファイル):
  http://www.esa.doc.gov/fttn00.pdf

・Varian and Shapiro, Information Rules: http://www.inforules.com/

・Varian, The Information Economy: 
  http://www.sims.berkeley.edu/resources/infoecon/

・価格ドットコム: http://www.kakaku.com/

・ステート・ストリート・バンク事件(解説,金融ビジネス用システムの特許性):
  http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc5697/SSB-SIG.HTM

・日経find'xビジネスモデル特許:
  http://findx.nikkeibp.co.jp/bmp_0.html

・amazon.com: http://www.amazon.com/

・Barns and Noble: http://www.barnesandnoble.com/

・priceline.com: http://www.priceline.com/

・米国特許商標庁(U.S. Patent and Trademark Office): http://www.uspto.gov/

・米国特許商標庁 特許検索: http://164.195.100.11/netahtml/search-bool.html

・特許庁: http://www.jpo-miti.go.jp/home.htm

・特許庁,初心者向け簡易検索(特許・実用新案):
 http://www2.ipdl.jpo-miti.go.jp/begin/be_search.cgi?STYLE=login&sTime=971508113822

・特許庁 ビジネス方法の特許について: 
  http://www.jpo-miti.go.jp/info/interbiji0406.htm

・米商務省 Electronic Commerce Policy: http://www.ecommerce.gov/

・米商務省 Digital Economy 2000: http://www.esa.doc.gov/de2000.pdf

・Linux International: http://www.li.org/

・asahi.com(朝日新聞社): http://www.asahi.com/

・Wall Street Journal Interactive Edition: http://interactive.wsj.com/ushome.html

・The Economist: http://www.economist.com/

・The Economist,Survey: The New Economy(Sep 21, 2000):
  http://www.economist.com/finance/displayStory.cfm?Story_ID=375486

・斉藤克仁「ITの生産性上昇効果についての国際比較」日本銀行国際局ワーキングペーパーシリーズ,2000年10月.(pdfファイル)
  http://www.boj.or.jp/down/siryo/data/iwp00j03.pdf

・Google: http://www.google.com/intl/ja/

・ヤフー: http://www.yahoo.co.jp/

・まぐまぐ: http://www.mag2.com/

・アスキーデジタル用語辞典: http://www.ascii.co.jp/ghelp/

・Insider's Computer Dictionary: http://www.atmarkit.co.jp/icd/index.html

・郵政省,電気通信サービスに係る内外価格差調査の概要(2000年8月25日):
  http://www.joho.soumu.go.jp/pressrelease/japanese/denki/000825j602.html

・日経BP,急増する「CATVインターネット」: 
  http://findx.nikkeibp.co.jp/ws/sp00catv1.html

・日経BP,IT企業検索: http://findx.nikkeibp.co.jp/comlist.html

(注)この講座の内容は,笹山の以下のサイトで参照できます.

 http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/internets/neteconomy.html

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