第14講 財政金融政策

IS-LM図を用いて財政金融政策が経済(所得と利子率)に与える
効果を分析します.金融政策や財政政策のとき,ISとLM曲線が
どのようにシフトするかの理解がポイントになります.
最初に,最近の日本の財政政策(fiscal policy)と
金融政策(monetary policy)の特徴を整理しておきましょう.

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【2015年6月15日更新】


最近の金融政策[top]

ゼロ金利政策(Zero Interest Rate Policy)
1999年2月12日から2000年8月11日までの18カ月間
日銀の目標金利(政策金利という)は,
  無担保コール翌日物金利(コールレート)
コールレートはこの間0.02%まで低下.
手数料を除けばほぼゼロ金利

量的緩和政策(Quantitative Easing:QE)
2001年3月19日から2006年3月9日までの約5年間
(小泉政権の5年間とほぼ一致)
・政策目標は,コールレートから
    「日銀当座預金残高」へ変更.
・日銀当座預金残高が5兆円になるように買いオペで
 流動性を供給する
・コールレートは,最低で0.01%まで低下.
 事実上のゼロ金利の復活.
・その後コールレートは0.001%まで低下.
(100万円預金しても1年間の利子収入は10円)

2004年1月からは,日銀当座預金残高の目標を
30−35兆円に引き上げ,
マネタリーベースを一層拡大する金融緩和政策を続ける.

2004.01.20(火) 日銀,金融政策決定会合
   「当座預金残高の目標を30〜35兆円程度に引き上げ」
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k040120.htm
2003.01.24(金) コール市場で初のマイナス金利.
        マイナス0.01%.外銀同士で取引成立
2003.06.25(水) 無担保コール翌日物金利,平均で初めてマイナスに,
       マイナス0.001%

(グラフ)無担保コール翌日物金利

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  日銀当座預金残高目標の推移
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2001年 3月19日 5兆円
      8月14日 6兆円
      9月18日 6兆円を上回る
     12月19日 10兆−15兆円
2002年10月30日 15兆−20兆円
2003年 4月 1日 17兆−22兆円
      4月30日 22兆−27兆円
      5月20日 27兆−30兆円
     10月10日 27兆−32兆円
2004年 1月20日 30兆−35兆円
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量的緩和政策 2006年3月9日解除
 ゼロ金利政策に戻す
政策のポイント
1 政策目標を,日銀当座預金残高から無担保コール
  翌日物金利に変更
2 無担保コール翌日物金利をおおむねゼロ%
  (0.1%以下に抑える).
  そのため長期国債の購入額を月1兆2000億円を維持
3 消費者物価指数の前年比上昇率が0-2%程度と
  中長期的な目安を明示.中心値は1%前後
4 量的緩和時の日銀当座預金残高30-35兆円から
  必要額(法律で決まっている水準)6兆円程度までに
   3カ月かけて引き下げてゆく

2006年7月14日にゼロ金利政策を解除
1 無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%に引き上げ.
  2001年3月19日(量的緩和開始)以来約5年4カ月
  ぶりの金利機能の復活
2 補完貸付制度の金利(公定歩合)も0.1%から0.4%
  に引き上げ(賛成6,反対3).
  福井日銀総裁「公定歩合という言い方をもうお蔵に入れたい」
 (注)これ以降「公定歩合」は事実上使われなくなりました.
3 長期国債の買い入れ額は現在の月額1兆2000億円を維持
4 追加利上げを急がない方針

   http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/k060714.pdf
   http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607b.pdf(記者会見)

・2007.02.21(水) ★日銀金融政策決定会合,
無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%引き上げ年0.5%に決定

・2008.10.31(金) ★日銀,金融政策決定会合,政策金利の
 無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.2%引き下げ年0.3%

 0.2%引き下げの総裁案に対し賛成4,反対4
(3人は0.25%の引き下げ,1人は据え置きを主張),
 議長の白川総裁の決断

2009年12月1日「広い意味での量的金融緩和政策」実施

2009.12.01(火) 日銀,臨時の金融政策決定会合,
追加の金融緩和策を決定.10兆円規模の資金を期間3カ月,
年0.1%の固定金利で金融市場に供給.
白川総裁「広い意味での量的金融緩和政策」

        今回の新型オペ     従来の企業金融支援特別オペ
 主なねらい 資金供給量の拡充      企業金融支援
 供給期間  3カ月           3カ月
 金利    0.1%で固定       0.1%で固定
 供給量   1回8000億円      無制限
       3カ月で10兆円
 担保    CP,社債,国債,地方債  CP,社債
 期限    設けず           2010年3月末で打ち切り
2009.12.04(金) 日銀,量的緩和で短期金融市場に5兆5000億円を供給.
 2日からの3日間合計の供給額は16兆7600億円

・2010.10.05(火) ★★日銀金融政策決定会合、
「ゼロ金利政策」復活

白川方明(まさあき)総裁は「包括緩和」と命名。
1 無担保コール翌日物金利の誘導レートを現在の
  0.1%%から0-0.1%のレンジへ移行、
  ただ当座預金への付利の水準は0.1%に据え置く
2 CPIが1%前後まで上昇するまで実質ゼロ金利を維持
3 資産買い入れ等のための5兆円の基金の創設
  長期国債と国庫短期証券が3兆5000億円、
  コマーシャルペーパー(CP)と社債などが1兆円、
  上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)も含める
  新たな5兆円は「銀行券ルール」の適用除外

(注)須田審議委員は基金の創設には反対。その他は全員一致
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101005.pdf

(参考:これまでの大きな流れ)--------------------
・ゼロ金利政策 1999年2月12日ー2000年8月11日
・量的緩和政策 2001年3月19日ー2006年3月9日
・ゼロ金利政策解除 2006年7月14日
・広い意味での量的金融緩和政策 2009年12月1日
・ゼロ金利政策復活(包括緩和) 2010年10月5日
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金融政策を決定するのは誰?[top]

1997年6月11日に成立した「改正日銀法」により,
1998年4月から新しい体制による「日銀政策委員会」
が発足しました.日本の金融政策は9名から構成される
政策委員会および政策委員による「金融政策決定会合」
で多数決により決定されます.

「日銀政策委員会」の当初の構成メンバー9名は次の通りです.
年齢は1998年4月時点.
日銀総裁(速水優73)
日銀副総裁2名(藤原作弥61,山口泰57)
日銀の審議委員6名
三木利夫(66)中原伸之(63)篠原英子(56)
植田和男(46)後藤康夫(64)武富将(57)

なお,その後任期切れにより次のようなメンバーの交代が行われています.
・1999.12.03 後藤康夫委員の後任の新審議委員として
  田谷禎三氏(前大和総研常務理事)が任命.
・2001.04.01 日銀,新審議委員,須田美矢子氏(前学習院大学教授)就任
  (篠塚英子氏の後任)
・2001.06.18 日銀審議委員,中原眞氏(前東京三菱元副頭取)就任
   武冨将氏任期満了で退任
・2002.04.05 日銀審議委員,春英彦氏(前東京電力副社長)就任
   中原伸之氏退任
・2002.04.05 日銀審議委員,福間年勝氏就任(前三井物産顧問)
   三木利夫氏退任

2003.03.20(木) 福井俊彦日銀総裁就任(任期5年,2008年3月19日まで)
2004.12.03(金) 日銀審議委員に新しく水野温氏(あつし)氏(45)就任
  前クレディ・スイス・ファースト・ボストン(CSFB)証券の
  チーフ・ストラテジスト.任期は5年.田谷禎三氏の後任
2005.04.08(金) 日銀,審議委員に西村清彦氏(任期5年間)
  植田和男氏の後任
中原眞(2006年6月で任期切れ)中原氏の後任には,元みずほフィナンシャル
  グループ副社長の野田忠男氏

2008.03.19(水) ★日銀総裁「空席」,福井俊彦氏任期満了で退任
  白川方明副総裁が総裁職務を代行
2008.04.09(水) ★白川方明日銀副総裁(58),第30代総裁に任命,
 任期は5年.総裁ポストの空席は3月20日から21日ぶりに解消
 前財務官の渡辺博史氏の副総裁案は参院で否決.副総裁1人と審議委員1名は空席
2008.10.27(月) 政府,日銀副総裁に山口広秀氏(日銀理事)を任命

●2008年1月現在の「日銀政策委員会」メンバー9人
日銀総裁 福井俊彦
日銀副総裁2名(武藤敏郎,岩田一政)
日銀の審議委員6名
須田美矢子,水野温氏,西村清彦,
野田忠男.中村清次,亀崎英敏 

●2009年1月現在の「日銀政策委員会」メンバー8人(審議委員1名欠員)
日銀総裁 白川方明
日銀副総裁2名(西村清彦,山口広秀)
日銀の審議委員5名
須田美矢子,水野温氏,野田忠男.中村清次,亀崎英敏
(補足 2010年からは水野温氏の任期切れの後は宮尾龍蔵)

●2011年1月現在の「日銀政策委員会」メンバー9人
日銀総裁 白川方明(任期2008年4月9日〜2013年4月8日)
日銀副総裁2名(西村清彦,山口広秀)
日銀の審議委員6名
須田美矢子,野田忠男.中村清次,亀崎英敏,宮尾龍三,森本宣久

日銀政策委員会の議事録,現在の政策委員のプロフィールは,
日本銀行のウェブサイトで公開されています.

★日本銀行 金融政策コーナー(金融政策決定会合の議事録等があります):
http://www.boj.or.jp/theme/seisaku/index.htm

金融政策決定会合議事要旨
http://www.boj.or.jp/theme/seisaku/mpm_unei/giji/index.htm

日本銀行政策委員会のメンバー

■まとめ------------------------------------------------
日本の金融政策を決定するのは,日本銀行,日銀の政策
委員会です.その中の金融政策決定会合です.政策委員
9人による討議の上で最終的には多数決で決まります.
金融政策決定会合には政府側から経済政策担当大臣や副
大臣(国会議員)も参加しますが,議決決定権はありま
せん.日銀側と政府側の意見が対立した場合,政府側は
「議決延期請求権」を行使して,採決を引き延ばすこと
はできますが,金融政策を決定する権限はありません.

日本銀行は政府(あるいは国会議員)から独立に金融政
策を決定する権限を与えられています.しかし,政府あ
るいは国会議員は日本銀行の金融政策に介入したがると
いう傾向をもっています.2007年1月18日に日本銀行
は「追加利上げを見送り」ましたが,政府・与党側の有
力国会議員(例えば自民党の中川秀直幹事長(当時))
はさかんに,利上げ阻止発言を繰り返していました.

日本銀行は,政治家からの圧力に影響を受けることなく,
経済状況を適格に判断して金融政策を決定・実行するこ
とが求められています.

★2007.01.18(木) 日銀金融政策決定会合、追加利上げ見送り
決定。賛成6反対3の賛成多数

最近の財政政策[top]

2001年から,経済財政諮問会議(議長は首相)が中心となって,
政府の財政政策の策定を行う体制になりました.

経済財政諮問会議のメンバー(設立当初のメンバー):
議長 小泉純一郎
議員 福田康夫(内閣官房長官),竹中平蔵(経済財政政策担当大臣),
片山虎之助(総務大臣),塩川正十郎(財務大臣),平沼赳夫(経済産業大臣),
速水優(日本銀行総裁),
民間議員 牛尾治朗,奥田碩,本間正明,吉川洋

★内閣府 経済財政諮問会議のサイト:
http://www.keizai-shimon.go.jp/

2008年1月現在の経済財政諮問会議のメンバー(11名):
http://www.keizai-shimon.go.jp/about/member/index.html
内閣総理大臣(議長,福田康夫),内閣官房長官(町村信孝),
経済財政政策担当大臣(大田弘子),総務大臣(増田寛也
),
財務大臣(額賀福志郎),経済産業大臣(甘利 明),
日本銀行総裁(福井俊彦),
民間議員4名(伊藤 隆敏,丹羽 宇一郎,御手洗 冨士夫,八代 尚宏)

2009年1月現在の経済財政諮問会議のメンバー(11名):
内閣総理大臣(議長,麻生太郎),内閣官房長官(河村建夫),
経済財政政策担当大臣(与謝野馨),総務大臣(鳩山邦夫
),
財務大臣(中川昭一),経済産業大臣(二階俊博),
日本銀行総裁(白川方明),
民間議員4名(岩田一政,張富士夫,三村明夫,吉川洋)

経済財政諮問会議終了後には,大田大臣による記者会見が開かれます.
新聞記者との質疑応答も含めて,「ポッドキャスティング」されていました.

★会議後記者会見ポッドキャスト(2006年2月から配信開始)
http://www.keizai-shimon.go.jp/podcast/index.html

●2009年9月に民主党が政権をとってからは,
経済財政諮問会議は廃止されました.
2009.08.30(日) ★衆議院選挙,民主党歴史的大勝,政権交代.
 野党第1党が選挙で過半数をとり政権を奪取するのは戦後初
2009.09.16(水) ★鳩山連立内閣発足

経済財政諮問会議に代わる組織としては,「国家戦略室(局)」が
その任を担うとみられていますが,民主党の経済政策決定の仕組み
はいまだ固まっていません(2009年12月現在).

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これまでの財政政策の例:
景気下降局面では,政府は景気回復をはかるために,「総合経済対策」
や「緊急経済対策」等の名称で拡張的な財政政策を実施します.

1998年4月24日には,総額16兆円にものぼる「総合経済対策」を,
続けて1998年11月16日には総額23兆円の「緊急経済対策」を発表しました.
それぞれの対策の内容は首相官邸や内閣府,経済財政諮問会議のサイト
で読むことができます.

・1998年4月24日 「総合経済対策」16兆円(橋本内閣)
・1998年11月16日 「緊急経済対策」23兆9000億円(小渕内閣)
・1999年11月11日 「経済新生対策」18兆円を政府決定
          財政支出9兆円前後(小渕内閣)
・2000年10月19日 政府,経済対策「日本新生のための新発展政策」(pdf)発表
          総額11兆円,国費投入分は3.9兆円兆(森内閣)
・2001年4月6日 政府・与党「緊急経済対策」を発表(森内閣)
          「緊急経済対策のポイント
          不良債権2年で処理.「銀行保有株式取得機構」の設立
・2002年10月31日 総合デフレ対策,不良債権処理の加速(but, water down)
政府・与党,総合デフレ対策決定.税効果会計の見直しは時期明記せず.産業再生機構の創設
http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/1030/1030agenda.html
「金融再生プログラム−主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生−(竹中金融担当大臣提出資料)」
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2002/1030/item1.pdf (10pages)
「改革加速のための総合対応策」
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2002/1030/item2-2.pdf (19pages)
「金融再生と改革の加速に向けて」(民間議員提出資料)
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2002/1030/item3.pdf (2pages)

首相官邸   http://www.kantei.go.jp/
内閣府    http://www.cao.go.jp/
★内閣府 経済見通し,経済対策:
    http://www5.cao.go.jp/keizai1/mitoshi-taisaku.html
    最近の経済対策の発表文はここに整理されてあります.

以上のような財政政策を実施したにもかかわらず,1990年代の
日本経済は「失われた10年」(lost decade)と呼ばれています.
最近では「失われた20年」とも言われています.
この間,ほとんど経済は成長しなかったのです.
なぜ,財政政策は十分効果を発揮しなかったのでしょうか?
考えてみてください.

日本の財政[top]

政府予算決定のプロセスは次のようになっています.

1.財務省,一般会計予算概算要求受付(8月末) 
2.財務省原案内示(12月20日前後)
3.復活折衝(12月下旬)
4.予算の政府案決定(12月下旬,臨時閣議)
5.1月の通常国会,衆議院予算委員会での審議(1月20日すぎから)
6.予算衆議院通過(3月末)
  衆議院を通過した段階で,最終的に予算が決定したことになります.
予算は衆議院の決定が優先されるからです.

2008年度の政府予算案については次のようになっています.--------------

2007.12.24(月) 政府,08年度予算案を閣議決定.一般会計総額は前年度比0.2%増の83兆613億円,2年連続の増加.新規国債発行額は前年度比0.3%減の25兆3480億円.次期衆院選をにらみ「地方配慮」の歳出積み増し目立つ

一般会計 83兆0613億円(0.2%)
・歳入
税収 53兆5540億円(0.2%)
税外収入 4兆1593億円(3.7%)
国債発行 25兆380億円(▲0.3%)
 国債依存度30.5%,08年度末の国債発行残高見込み553兆円
・歳出
一般歳出 47兆2845億円(0.7%)
社会保障 21兆7824億円(3.0%)
文教・科学振興 5兆3122億円(0.5%)
防衛 4兆7796億円(▲0.5%)
公共事業 6兆7352億円(▲3.1%)
ODA  7002億円(▲4.0%)
国債費  20兆1632億円(▲4.0%)
地方交付税など 15兆6136億円(4.6%)
財政投融資 13兆8689億円(4.6%)

2007.08.24(金) 財務省,「国の借金」にあたる国債,借入金,政府短期証券などの残高,6月末時点で836兆5213億円.3月末比0.3%増,過去最高を更新
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●2007年度(平成19年度)予算政府案(予算のメインコーナー):
http://www.mof.go.jp/seifuan19/yosan.htm

平成19年度(2007年度)予算のポイント
http://www.mof.go.jp/seifuan19/yosan001.pdf

・一般歳出3年ぶり増加、一般会計は2年ぶり増加
・新規国債発行4.5兆円減額
・公債依存度(公債/歳入)30.7%、7ポイント低下
・税収は7.6兆円増、過去最大の税収増
・プライマリーバランス(基礎的財政収支)6.8兆円改善。過去最大の改善幅
 目標:2011年度プライマリーバランスを黒字にする
・国と地方の長期債務残高07年度末773兆円、前年度末比1%増。
 GDP比148%で主要国の中で最大

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      歳    入            歳    出
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 税   収  53兆4670億円  一般歳出     46兆9784億円
           (16.5%増)               (1.3%増)
 国債発行額  25兆4320億円  地方交付税交付金 14兆9316億円
        (マイナス15.2%)               (2.6%増)
 その他の収入  4兆0098億円  国債費      20兆9988億円
           (4.6%増)               (11.9%増)
-------------------------------------------------------------------
    2007年度  一般会計  82兆9088億円(前年度比4.0%増)
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プライマリーバランス(国債費を除いたバランス) 4兆4332億円の赤字
国債を除いた歳入−国債費を除いた歳出
 = (53兆4670億円+4兆0098億円)−(46兆9784億円+14兆9316億円)
 = −4兆4332億円

・財政投融資計画 14兆1622億円:
http://www.mof.go.jp/seifuan19/zaitou.htm (平成19年度財政投融資,メインコーナー)
平成19年度財政投融資の概要:
http://www.mof.go.jp/seifuan19/zt001a.pdf

・平成19年度国債・政府保証債の発行予定額:
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/za181224.htm (国債発行額)

●日本の予算の特徴
(歳入面)
 租税等が約6割,公債金収入(赤字公債等)が約4割

(歳出面)
 一般歳出が約6割,地方交付税交付金が約2割,国債費が約2割

日本の財政赤字[top]

・国債残高2006年9月末 = 約674兆円
・2007年度政府予算,歳入=   82兆9088億円
・2007年度予算での新規国債発行=25兆4322億円
・国債依存度(国債/歳入)=30.7%
・国及び地方の長期債務残高(2007年度末予測)=773兆円 =GDPの1.48倍

★2006年9月末の国の債務残高(国の借金)827兆9166億円
  内訳:国債残高= 674兆円
     借入金=   58兆円
     政府短期証券=94兆円
  http://www.mof.go.jp/gbb/1809.htm

財務省サイト(トップページ):
   http://www.mof.go.jp/

★国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(いわゆる国の借金の残高):
   http://www.mof.go.jp/1c020.htm
   2006年9月末時点で827兆円
★財政関係諸資料:
   http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy_new.htm
★国及び地方の長期債務残高(平成18年度予算):
   http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy1809g.pdf
 予算・決算 → 財政関係諸資料(平成18年9月)(注:国及び地方の長期債務残高のデータはここにあります)
 http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy_new.htm
国債発行計画: http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/keikaku.htm

■日本の財政を考える(財務省,予算・決算):
日本の財政と予算について時系列のデータとグラフを用いて解説しています.

http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014.htm (トップページ)
★財政の現状,歳出と歳入: http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014b.htm
★一般会計歳出と税収,公債発行額の推移:http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014c.htm
公債残高の累増:  http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014d.htm
★財政事情の国際比較: http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014e.htm
高齢化の進展:  http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014f.htm
社会保障関係費の推移:  http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014g.htm
国民負担率:  http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014h.htm
★世代毎の生涯を通じた受益と負担: http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014i.htm
財政赤字の問題点(コラム):  http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014j.htm
★国及び地方のプライマリーバランスの対GDP比: http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014k.htm
プライマリーバランスとは(コラム): http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014l.htm
歳出見直しに向けての取組み: http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014m1.htm
★(資料)財政の歩み: http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014s.htm
(資料)主要先進国における財政健全化への取組み:http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014t.htm

(参考)財政事情の国際比較のグラフは,2005年1月16日に実施された「センター試験」の「現代社会」で出題されていました.

●For Tomorrow−もっと知りたい.日本の財政の今〜明日−(財務省パンフレット,平成14年4月):
         http://www.mof.go.jp/mof/tomorrow/index.htm

●税制ホームページ(財務省):
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/syuzei.htm
税のはなしをしよう(パンフレット): http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/pn01.htm

●関連
・日本の借金時計(財部誠一氏のサイト):
  http://www.takarabe-hrj.co.jp/clock.htm

・リアルタイム財政赤字カウンター:
  http://www.kh-web.org/fin/

財政法第5条[top]

財政法第5条【公債発行及び借入れの制限】---------
すべて,公債の発行については,日本銀行にこれを
引き受けさせ,又,借入金の借入については,日本
銀行からこれを借り入れてはならない.但し,特別
の事由がある場合において,国会の議決を経た金額
の範囲内では,この限りではない.
------------------------------------------------------

財政法の全文は,以下で読むことができます.
RONの六法全書on Line 財政法:
 http://www.ron.gr.jp/law/law/zaisei.htm

金融政策の分析[top]

貨幣供給量の増加(金融緩和政策)が経済に与える
効果を分析します.
前回登場したIS-LMの経済モデルが前提となっている
ことに注意してください.

経済的論理の展開:
貨幣供給量の増加 → LM 曲線が右方にシフト→ 
貨幣市場で超過供給 → 超過供給が解消するためには
(貨幣市場が均衡するためには),所得が増加して
取引動機,予備的動機による貨幣需要が増加するか,
利子率が低下して,投機的貨幣需要が増加する必要あり 
→ 利子率の低下は財市場では投資需要の増加をもたらし,
所得を増加.
結局,所得の増加利子率の低下

          論理の展開の図解
   

         IS-LM図による分析
   
貨幣供給量の増加は,LMを右方へシフトさせます.
ISには影響を与えません.
(結論)金融緩和政策:所得の増加,利子率の低下をもたらす

IS-LM曲線の形状に注目すると,次のような点に気づくこと
ができます.
1.I S 曲線が水平に近いほど(投資の利子率感応度が大)
  所得の増加は大きく現われます.
2.LM 曲線が垂直に近いほど(貨幣需要の利子率感応度が小)
  所得の増加は大きく現われます.貨幣供給量の増加による
  利子率の低下の効果が大きく現れるからです.

財政政策の分析[top]

政府が財政支出を増加させたときの経済に与える効果
をIS-LM図で分析します.

論理の展開:
財市場で,政府支出の増加 → IS 曲線が右方にシフト
→ G 需要の増加により,乗数効果を通して 
→ 生産(所得)が増加
他方,貨幣市場では,所得の増加により貨幣需要が増加
→ 貨幣市場での超過需要は利子率を上昇させます.
上の過程で貨幣市場で発生した利子率の上昇が,
財市場では投資需要を抑制させ,最初に発生した所得の
増加を一部相殺します.
政府支出増加が利子率を上昇させ,民間投資を減退させ
てしまう現象を「クラウディングアウト効果」と呼び
ます.
図で所得の増加が,I S のシフト幅以下になるのはこの
効果のためです.

         論理の展開の図解
  

        IS-LM図による分析
  
政府支出の増加はIS曲線を右方へシフトさせます.
LM曲線は影響を受けません.
(結論)所得の増加と利子率の上昇

財政政策の効果とI S-LM の形状について,次のことが
いえます.
1.LM 曲線が水平に近いほど(大)所得の増加は
大きくなります.
所得増加による貨幣需要の増加が利子率をほとんど
増加させなくなるからです.
2.I S 曲線が垂直に近いほど(小)所得の増加は
大きくなります.
クラウディングアウト効果により利子率が上昇しますが,
投資の利子感応度bが小さいほど,投資抑制効果が小さ
くなるからです.

■財源の違いによる財政政策の効果の相違
財政政策の効果を正確に分析するには,その財源まで
も考慮しなければなりません.以下の3つの場合に
どのような効果の違いがでるかを分析します.
ポイントは,どの場合に,LM曲線もシフトするのかと
いうことと,ISあるいはLMのシフト幅の大きさです.

  (ア)         (イ)           (ウ)

(ア)市中消化による赤字公債の発行のケース
政府が国債を発行 → 民間(貨幣:政府←民間)
これが財政支出の資金になります.この資金は財政支出
が実行されることによって民間部門に戻っていくので,
結局経済全体としては貨幣供給量は変化しません.
貨幣供給量は変化しないので LM 曲線は変化しません.
財政支出増加によってI S 曲線だけが右上方にシフトします.
I S 曲線のシフトの幅は財政支出に乗数をかけた大きさにな
ります.新しい均衡はB点.

(イ)中央銀行引き受けによる赤字公債発行のケース
政府が国債を発行 → 中央銀行(貨幣:政府←中央銀行)
マネタリーベース(=ハイパワード・マネー)の供給
が発生.この場合には I S 曲線だけでなく,LM 曲線の
右下方へのシフトを伴います.新しい均衡はC点になります.
図から明らかなようにC点は必ずB点の右側に位置します.
所得の増加はこの場合の方が大きいことを意味します.
ただし,利子率が上昇するかどうかはLM曲線のシフト幅と
I S 曲線のシフト幅の大きさに依存して決まります.

(ウ)増税のケース
増税によって財源を調達する場合は,可処分所得の減少
を伴います.財市場だけを考慮するならば,均衡予算乗数
の場合と同じになりますが,貨幣市場も考慮しているので
乗数は1にはなりません.I S 曲線のシフト幅は,均衡予算
乗数の議論からわかるように1になります.ただし,新しい
均衡はLM曲線との交点Dになるので,所得の増加は1以下
になります.

(まとめ)所得へ与える効果の大きさの順序,
(イ)→(ア)→(ウ)
ただし,(イ)は日本では法律で原則禁止されています.
インフレを招きやすいからです.財政法第5条を参照.

財政政策と金融政策の組合せ[top]

金融緩和政策と財政支出政策を組み合わせて同時に実施
した場合はどのような効果を及ぼすでしょうか.
所得の増加は明白です.利子率への影響は,
1.I Sのシフト幅 > LMのシフト幅 → 利子率は上昇
2.I Sのシフト幅 < LMのシフト幅 → 利子率は低下
3.I Sのシフト幅 = LMのシフト幅 → 利子率は不変

      財政政策と金融政策の組み合わせ
   

【補足】
直面する経済状況によっては,財政政策と金融政策が
機動的に運営できない場合が生じます.
○巨額の財政赤字を抱える場合:財政支出拡大政策は
 発動しにくい
○対外的な理由により金融政策が制約される場合:
例えば1985年9月のプラザ合意後の協調利下げ時.
国内的には金融引き締め政策を採りたかったが,できな
かった.低金利をやむなく続けた.
その結果,バブルの温床を作り上げてしまった.

特殊なケース[top]

IS,LM曲線が特殊な形状をとる状態を整理します.
それらはどのような経済状態であるのかを説明できる
ようになりましょう.特に,最初の2つは有名です.

      IS-LM曲線が特殊なケース
  

1.流動性のわなのケース
LM 曲線が限りなくゼロに近い利子率水準で水平になる状態.
言い換えれば,貨幣需要の利子弾力性が無限大になる状態.
利子率がゼロに近い水準では,債券価格は十分高い値段
を付けており,債券価格は将来値下がりすることが確実
に予想される状況にあります.このような場合,値下がり
が確実な債券を保有しようとする人は存在せず,貨幣需要
が増大するだけです.
貨幣供給量を増やしても,金利はゼロより下がることは
なく,金利低下の効果は期待できません.金融緩和政策は
所得に対してまったく無効,財政政策だけが有効.
1930年代の大恐慌時の状況をケインズはこのようにとらえました.

1990年代後半からの日本経済もほぼこのような状況にある
とみられます.ただし,日本の場合は,財政赤字の累積により,
これ以上財政政策を発動することができにくい状況にありました.

注:
貨幣需要の利子弾力性=貨幣需要の変化率/利子率の変化率
貨幣需要の利子率感応度とほぼ同じような概念

2.古典派のケース
LM 曲線が,ある所得水準で垂直.
貨幣需要の利子弾力性がゼロの状態.
この状況では,財政政策によりIS 曲線を右方にシフトさせ
ても単に利子率を上昇させるだけで,実質所得にはなんら
効果を与えません.クラウディングアウト効果が100%
発生する状況です.
金融政策のみが利子率を低下させ所得を増加させることが
できます.「流動性のわな」がケインジアンの主張に最も
合致しているのに対して,こちらは貨幣供給量の管理を
重視するマネタリストの主張が最も妥当する状況です.

3.投資需要の利子弾力性が無限大のケース
IS 曲線は限りなくゼロに近い利子率水準で水平.
財政支出の増加は貨幣市場で利子率を上昇させます.
投資が利子率に関して無限大に弾力的なので,利子率の
上昇が大幅な投資の減少をもたらし,最初に発生した
需要を完全に相殺してしまいます.財政政策は無効です.

4.投資需要の利子弾力性がゼロのケース
投資の利子弾力性がゼロであるとは,投資が利子率から
は独立であり自立的な部分だけからなることを意味します.
投資は利子率に反応しないので,IS 曲線は垂直になります.
金融緩和により利子率を低下させても,投資が利子率に
まったく反応しないので所得の増加は生じません.
金融政策は無効です.

等価定理[top]

財政支出の財源を課税によって賄うことと公債発行に
よって賄うことは同等の経済効果を持つという議論が
バローの等価定理です.
合理的な消費者は,現在の財政赤字は公債の利払いの
ために将来必ず増税が実施されるに違いないと予想する
ので,将来の税金の支払に備えて現在消費需要を増加
させず,公債発行と同額の貯蓄を増加させ,これが
公債を消化してしまうというものです.

関連新聞記事[top]

●日本の需要不足ほぼ解消,『日本経済新聞』2004年9月22日
2004年4-6月,内閣府試算のGDPギャップマイナス0.15%でほぼゼロに近づく.
潜在成長率は2004年上半期で年率1.20%

■改正日銀法関連
○日銀の独立性明確に:改正法成立,蔵相の命令権廃止 日経1997年6月11日夕刊
○改正日銀法でこう変わる 日経1997年6月11日夕刊
○改正日銀法が成立 日経1997年6月12日
○日銀の「独立性」は透明な政策決定で(社説)日経1997年6月12日
○改正日銀法成立,政策目標わかりやすく 日経1997年6月12日
○日銀と政府・国会・国民との関係 日経1997年6月12日
○独立性強化,カギ握る政策委 日経1997年6月12日
○秋にも議事録要旨公開,松下総裁 日経1997年6月12日

■政策委員会関連
○日銀政策決定会合 超低金利を維持.「全員一致」初めて崩れる 日経1998年6月13日
反対票を投じた委員やその論点は日銀が7月22日に公表する議事要旨で明らかになる.

インターネット検索[top]

赤字国債の日銀引き受け問題は新聞でも議論されています.新聞記事のインターネットでの検索なら,日本経済新聞の有料データベース「日経テレコン21」が便利です.熊本学園大学の学生は,情報教育センター内のパソコンから同センターのホームページを経由して「日経テレコン21」に無料でアクセスできます.ぜひ利用してください.

熊本学園大学e-キャンパスセンター

上記サイトから「日経テレコン21」アクセスして,キーワードとして「日銀引き受け」を入力して検索してみましょう.いくつかの有用な情報がえられます.

その他一般のサーチエンジン(Googleなど http://www.google.co.jp/)を利用して検索してみましょう.

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財政政策関連では,
第15回 財政赤字

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金融政策関連では,
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第32回 量的金融緩和
第28回 テイラールール

米国の金融政策については,
第7回 FRB,FF金利と公定歩合

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(c) Shigeru Sasayama, Kumamoto Gakuen University