【問題19】次の文章は,新聞の債券記事の一部です.以下の問いに答えなさい.
「債券市場で長期金利が急上昇している.27日は国債指標銘柄で見た長期金利は一時,年初来の最高水準に並んだ.金利先高観が根強く,投資家が積極的な買いを見送っていることが背景にある.27日は国債指標銘柄の182回債利回りが東証の大口取引で一時,前日比0.090%高い2.680%まで上昇(相場は下落),9日に付けた今年の最高水準に並んだ.投資家の買い需要が細っているため,この日に実施された4年物国債入札の最低落札価格は98円91銭と,94年9月に発行された第30回債以来,約2年ぶりに最低落札価格が99円を割り込んだ.」
『日本経済新聞』1997年5月28日朝刊
1.金利先高観が根強いと,なぜ投資家は積極的な買いを見送るのでしょうか.説明しなさい.
2.金利と債券相場(市場価格)は逆の動きを示すことが上の記事に書いてありますが,それを説明しなさい.
【問題20】額面価値1万円の10%を利子として毎年永久的に支払い続ける債券がある.現在の市場利子率が5%のとき,この債券の現在価値はいくらか.
【問題21】フィッシャーの貨幣数量説による記述として正しいのは次のどれか.(2種)
1 貨幣数量と貨幣の流通速度に変化がない限り,物価水準は,商品取引量に正比例して騰落する.
2 物価水準と貨幣数量に変化がない限り,貨幣の流通速度は,商品取引量の増減に反比例して増減する.
3 貨幣の流通速度と商品取引量に変化がない限り,物価水準は,貨幣数量の増減に正比例して騰落する.
4 商品取引量と物価水準に変化がない限り,貨幣の流通速度は,貨幣数量の増減に正比例して増減する.
5 貨幣数量と商品取引量に変化がない限り,貨幣の流通速度は,物価水準の騰落に反比例して増減する.
【問題22】IS曲線とLM曲線が図のように示されるとき,これについての記述として最も適当なのは,次のうちどれか.(熊本県)
1 投資意欲が高まるとLM曲線が右にシフトし,均衡国民所得は増大する.
2 貯蓄意欲が高まるとIS曲線が右にシフトし,均衡国民所得は増大する.
3 貨幣量が増加するとIS曲線が左にシフトし,均衡国民所得は減少する.
4 流動性選好が高まるとLM曲線は左にシフトし,均衡国民所得は減少する.
5 物価が上昇するとIS曲線は左にシフトするが,LM曲線が右にシフトするため均衡国民所得は変化しない.
【問題23】I S - LM 曲線が次のように描かれている.この場合の各領域における記述として正しいのはどれか.ただし,I:
投資,S: 貯蓄,M: 貨幣供給,L: 貨幣需要.(2種)
1 A 領域においては,財市場が超過供給になっておりS > I ,貨幣市場では超過需要でM<Lになっている.
2 B領域においては,財市場貨幣市場ともに超過需要で,S < I ,貨幣市場では超過需要でM<Lになっている.
3 C領域においては,財市場が超過供給になっておりS > I ,貨幣市場では超過需要でM<Lになっている.
4 D領域においては,財市場が超過供給になっておりS > I ,貨幣市場では超過需要でM<Lになっている.
5 B領域とD領域は非対称的で,B領域では財市場,貨幣市場ともに超過需要であるが,D領域ではともに超過供給である.
【問題24】IS−LM分析に基づく財政金融政策の効果として正しいと思われるのは次のどれか.
1 貨幣需要の利子率弾力性がゼロの場合,財政支出の拡大は利子率を上昇させるだけで所得増加には全く効果はない.
2 貨幣需要の利子率弾力性が無限大の場合,金融政策は所得に対して有効であるが財政政策は無効である.
3 投資需要の利子率弾力性が無限大の場合,ISは垂直になり金融政策は所得に対して無効である.
4 投資需要の利子率弾力性がゼロの場合,ISは低い利子率水準で水平になり財政政策は所得に対して無効である.
5 貨幣需要の所得弾力性がゼロの場合,LMは垂直になり財政政策は所得に対して無効である.
【問題25】以下のような封鎖経済モデルを考えます.ここでC:消費,Y:国民所得,I:投資,r:利子率,L:貨幣需要,M/P:実質貨幣供給量,G:政府支出,T:税収,Yd:可処分所得です.
C=40+0.8Yd Yd=Y−T
I=45−6r G=20
L=172+0.4Y−8r T=20
M/P=180
いま,完全雇用の国民所得水準が200兆円であるとすれば,完全雇用を達成するためには,公共投資はいくら必要でしょうか.ただし,物価水準は一定であるとします.単位は兆円.
【問題26】マクロ経済モデルにおいて,実物市場と貨幣市場が次のようになっている.
実物市場:Y = C + I + G, C = 100 + 0.8 (Y - T) , T = 0.25Y ,
I = 200 - 1000 r
貨幣市場:M = L , M = 10H , L = 3Y - 10000 r
ここで,Y : 国民所得,C : 消費,I : 投資,G : 政府支出(毎期一定),T :
税収,r : 利子率,M : 貨幣供給量,L : 貨幣需要量,H :ハイパワードマネーである.
政府は,予算制約 ΔH = G - T (ΔHはハイパワードマネーの増分)を満たすように行動するものとし,長期的には均衡予算を達成するものとする.このとき,長期の政府支出乗数はいくらになるか.(1種)
【問題27】次のような経済モデルが与えられているとします.このとき,財政支出を増加させる場合に,(ア)公債発行を市中消化でまかなう場合,(イ)公債発行を中央銀行引き受けでまかなう場合,(ウ)増税によってまかなう場合,の3つのケースについてそれぞれ所得の増加を計算し,3者の効果の違いを比較しなさい.(やや難)
財市場の均衡式 Y = C + I + G
消費関数 C = Co + c Yd
投資関数 I = Io - b r
政府支出 G = Go
可処分所得 Yd = Y - T
税収 T = To
貨幣市場の均衡式 M = L
貨幣供給 M = Mo
貨幣需要関数 L = kY - h r
ここで,Co,Io,Go,To,Mo は外生変数.c,b,k,h は定数.r は利子率です.なお,信用乗数は1とします.
【問題28】経済が流動性のわなに陥っている場合の記述として最も適当なのは,次のうちどれか.(2種)
1 横軸に国民所得,縦軸に利子率をとるものとして,LM曲線は右上がりとなっている.
2 横軸に国民所得,縦軸に利子率をとるものとして,IS曲線は水平となっている.
3 この状態では限界消費性向は限界貯蓄性向よりも小さくなっている.
4 この状態では金融政策による国民所得の拡大は不可能となっている.
5 この状態では投機的動機に基づく貨幣需要はゼロとなっている.