メールマガジン(経済用語解説)

メールマガジン全体の目次



メールマガジン発行のごあいさつ[top]

                    2000年4月10日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン         No.00
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国際経済学科1年生のみなさん こんにちは

国際経済学科でマクロ経済学1を担当している笹山 茂です.

国際経済学科のメーリングリストを利用して,4月から,
マクロ経済学のメールマガジンを発行いたします.

メールマガジンとは,インターネットのメーリングリストを
利用して,登録した方に定期的に様々な情報を提供していく
媒体です.雑誌に掲載されるコラムや記事などが,電子メール
にのって配信されてくると考えればよいでしょう.

国際経済学科の新1年生は,すでに電子メールのアドレスが
発行されていますので,「情報処理基礎演習1」で電子メール
の使い方を学んだ後であれば,このメールマガジンを読むこと
ができます.

メールマガジン(略してメルマガ)に関しては,世間では
「まぐまぐ」

  http://www.mag2.com/

が有名です.こちらは不特定多数の方を対象にしたメールマガ
ジンですが,わたしの「マクロ経済学1」のメールマガジンは
熊本学園大学の学生だけを対象にしたメールマガジンです.

「マクロ経済学1」のメールマガジンでは,「マクロ経済学1」
の講義では十分説明できなかった事項を中心に,講義を補完する
内容を配信したいと計画しています.

次回の配信から,メールマガジン本体の発行を始めます.

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【WEB】 http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/
【MAIL】 sasayama@kumagaku.ac.jp
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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第1回 国内新車販売台数[top]

                      2002年7月7日改訂
                      2000年4月14日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン              No.01
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
しばらくは,新聞によく登場する経済統計を中心に解説していきます.新聞記
事とインターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第1回】 国内新車販売台数

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(最新情報は以下から)
日本自動車販売協会連合会 月別新車販売台数:
http://www.jada.or.jp/Fmenu3.htm
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2000年4月4日の日経新聞の11面に,以下のような記事がありました.

「新車販売,15年ぶり400万台割れ,昨年度3年連続マイナス.
1999年度の国内新車販売台数(速報値,軽自動車は除く(注意))は前年
度比5.5%減の398万657台と3年連続でマイナスとなった.400万
台割れは84年度以来15年ぶり.(抜粋)」

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(注意)
国内新車販売台数は,いわゆる普通乗用車だけを含み,軽自動車は含みません.
軽自動車の販売データについては,全国軽自動車協会連合会が公表しています.

全国軽自動車協会連合会:
     http://www.zenkeijikyo.or.jp/
 統計: http://www.zenkeijikyo.or.jp/statistics/
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新車販売台数は,景気のよしあしを判断する際によく引き合いにだされる経済
統計の1つです.新車販売台数からみれば,日本経済もいまだ離陸せずといっ
た状況でしょうか.ただし,同時に掲載されているグラフによれば,減少の程
度は以前よりは小さく,上向きを予見させる可能性もうかがえます.

ここで,『1年間の新車販売台数は約400万台』
と覚えるのがポイントです.

記事によると,データソース(原データの提供者,作成者)は「日本自動車販
売協会連合会」であることがわかります.
インターネットでデータソースを探してみましょう.どうやって探すか?
サーチエンジンを活用します.サーチエンジンとは,検索のためのサイト(ホ
ームページ)です.たくさんのサーチエンジンがありますが,わたしは「go
ogle(グーグルと読みます)」をまずおすすめします.

google: http://www.google.co.jp/

検索欄に 日本自動車販売協会連合会
と入れて,「検索」ボタンをクリックすると,「日本自動車販売協会連合会」
を含むウェブサイトを探して,表示します.多数ヒットしましたが,最初に「
自販連のホームページ」が見えます.この部分をクリックすると,日本自動車
販売協会連合会のサイトが開きます.

日本自動車販売協会連合会: http://www.jada.or.jp/

「自動車統計データ」のコーナーから「新車販売台数」を選びます.新車販売
台数では,車種別とメーカー別の最新月の販売台数の統計が掲載されます.

★新車販売台数(最新月): http://www.jada.or.jp/Fmenu3.htm

過去のデータを見るには,「新車月別登録台数」を選びます.1991年から
最近年までの月別データが掲載されています.

新車月別登録台数(過去の月別):
   http://www.jada.or.jp/sinsya221.htm

過去の年別の登録台数を見るには,「車種別新車販売台数 年別」を選びます.
1991年から最近までのデータがえられます.ここには軽自動車の販売デー
タも掲載してあります.

車種別新車販売台数(過去の年別):
   http://www.jada.or.jp/touroku.htm

この年別統計に基づいて作成した新車販売台数(除く 軽自動車)のグラフが
私の「マクロ経済学講義ノート 付録B経済データ」にあります.
 http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/sinsha.gif
1990年には600万台あった新車販売台数がしだいに低下,95年には5
00万台まで回復して一時持ち直しましたが,その後は再び低下し1999年
は年間400万台に低下したことがわかります.

■車種別ランキング
自動車統計データのコーナーから「ランキング」を選ぶと,どのクルマが売れ
ているかを知ることができます.最近2年間の月別・年間の人気車種の新車販
売台数がわかります.

乗用車系車名別順位: http://www.jada.or.jp/newrank.htm

車種別では,2001年度1年間でのランキングは,ベスト5までをあげると
   車 名       台 数
1.カローラ     231,651
2.フィット     159,149
3.ヴィッツ     134,604
4.エスティマ    119,317
5.ステップワゴン  109,632

直近の2002年6月でのベスト5をあげると
   車 名       台 数
1.フィット      24,141
2.カローラ      19,528
3.イスト       14,964
4.マーチ       14,421
5.エスティマ      8,625

トヨタのカローラは依然根強い人気を保っていますが,ホンダのフィットが肉
薄しています.月別統計では,一般に新発売された車種が上位に進出する傾向
があります.

■まとめ------------
・国内新車販売台数は景気の善し悪しの判断材料の1つ
・1年間の国内新車販売台数は約400万台
・2001年(および年度)に最も販売された車種はカローラ
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ぜひ,みなさんも,実際にサイトにアクセスして確認してください.

(上級者向け)日本自動車販売協会連合会のサイトの統計「新車月別登録台数
」を元にして,表計算ソフト,エクセルでグラフを作ることもできます.数字
だけをみるよりもグラフにした方が,特徴や傾向がはっきりと見えてきます.
チャレンジしてみてください.

(注意)日数が経過してサイトにアクセスすると,それぞれのウェブサイトの
構成に違いがでてくることがあります.またURLが変更されている場合もあ
りますので,了解してください.
(アクセス日)2000年4月14日,2002年7月7日

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【統計Q & A】1年間の国内新車販売台数は?
            → 400万台

【今回のサイト】日本自動車販売協会連合会: http://www.jada.or.jp/
【評価】★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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copyright 2000, 2002

第2回 G7コミュニケ[top]

                        2000年4月17日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン                No.02
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新聞記事とイン
ターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.

☆今回は先週末のホットな出来事に合わせるために月曜日に発行します.
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【第2回】 G7 コミュニケ

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2000年4月17日付,日経新聞のトップは,次の記事でした.

「ワシントンで開いた日米欧の7カ国(G7)蔵相・中央銀行総裁会議は15
日夕,共同声明を採択して閉幕した.声明は為替相場について「各国経済のフ
ァンダメンタルズ(基礎的条件)を反映すべきだ」と主要通貨全般の安定に向
けた協調を表明.」

会議直前の4月14日にNYダウとナスダックが急落したので,それに対する
言及があるかどうか注目されたのですが,残念ながらありませんでした.日本
関係では,「ゼロ金利政策」を維持することが盛り込まれました.

G7(Group of seven)とは,日,米,英,独,仏,伊,加の
主要先進7カ国を表した言葉です.1985年9月のプラザ合意以降,世界経
済に問題が発生したら,主要国は経済政策に関して協調する枠組みができあが
っています.G7は定期的に議論をしています.G7の議論が毎年のサミット
(2000年は九州・沖縄サミットですが)の基本方針をほぼ決めています.
なお,プラザ合意時だけは,日,米,英,独,仏のG5でした.

G7の記事は必ず翌日の新聞に報道され,そこで発表された声明文(コミュニ
ケといいます)の要約が新聞には掲載されます.

私は,ウォール・ストリート・ジャーナルのインターネット版である Wall
Street Journal Interactive Edition(以下WSJIEと略します)の定期購読者
ですが,このようなニュースの場合,かならず同サイトにアクセスするように
しています.

WSJ: http://www.wsj.com/

なぜなら,WSJIE では,かならず,G7のコミュニケの全文が掲載されるから
です.WSJIE の優れているのは,G7にかぎらず,そのニュースに関連する重
要な発表資料については,リンクをはって,読者に提供してくれることです.

今回のG7のコミュニケ(Group of Seven Communique)も WSJIE で読むこと
ができます.

Group of Seven Communique の項目見出し
・Developments in the World Economy
・Exchange Rates
・Emerging Market Economies
・Russia
・Money Laundering and Financial Crime
・Enhanced HIPC Initiative
・Annex I -- IMF Reform
・Annex II -- Private Sector Involvement in Crisis Prevention and
Resolution: Operational Guidelines
(注)HIPC = Highly Indebted Poor Countries

日本に関連する部分だけを抜粋してみましょう.

-------------
The Japanese economy has not yet achieved a secure recovery in
private demand, although there have been some positive signs. It is
important that macroeconomic policies support sustainable domestic
demand-led growth. The Japanese authorities decided to continue, in
the context of their zero interest rate policy, to provide ample
liquidity to ensure that deflationary concerns are dispelled.
Structural reform should be continued to promote an increase in
productive potential and financial sector restructuring.
--------------------------------

それほど難しくない英文ですから,チャレンジしてください.

注目点は,
・zero interest rate policy ゼロ金利政策
の維持が声明文の中に盛り込まれた点です.

なお,「ゼロ金利政策」は講義でもとりあげましたが,このメールマガジンで
も後の号でとりあげます.

WSJIE は有料サイトですので,無料でG7のコミュニケ全文を提供しているサ
イトを探してみましょう.

これまでのやり方は,サーチエンジンを活用する手法ですが,最新情報はサー
チエンジンに登録されていない可能性が大いにあります.そのような場合は,
自分の頭を使います.G7は先進7カ国の大蔵大臣・中央銀行総裁会議ですか
ら,まずは大蔵省のサイトを見てみようか,と考えるのです.

大蔵省: http://www.mof.go.jp/

mof = ministry of finance です.覚えておきましょう.案の定ありました.
大蔵省サイトのトピックスの最初にありました.

「7カ国蔵相・中央銀行総裁声明(仮訳)(2000年4月15日 於ワシン
トンDC)[pdf形式]

これをクリックすると,pdf ファイルのダウンロードが自動的に開始され,自
分のパソコンに取り込まれます.

pdf ファイルは,無料の Acrobat Reader で読むことができます.pdf =
portable document format は論文や資料をインターネット上で配布する際の
標準フォーマットになっています.Acrobat Reader は,ほとんどのパソコン
に初めから入っているのでおそらく問題ないでしょう.大学のパソコンにはす
べてインストールしてあります.自分のパソコンに Acrobat Reader がインス
トールしてない場合は,Adobe 社のサイトからダウンロードできます.

Adobe Systems(日本のサイト): http://www.adobe.co.jp/

同じように発想すれば,英文のコミュニケは,米の財務省(US Treasury)の
サイトにあることが十分予想されます.

米財務省: http://www.ustreas.gov/

トップページの「Current Headlines」の中から,「Briefing Room」をみます.
その中の,「Today at Treasury」の欄の「News releases, speeches,
statements and other public documents」をクリックします.ありました.

「Statement of G-7 Finance Ministers and Central Bank Governers,
Washington, DC, April 15」

これをクリックすると,モニタに全文が表示されます.

  http://www.ustreas.gov/press/releases/ps556.htm

これは,そのアドレスです.

なお,同じ欄には,財務省長官 Lawrence Summers の声明文も掲載されていま
す.

■まとめ------------
・G7の会議の翌日は,日本は大蔵省,米国は財務省のサイトをのぞこう.
・G7のコミュニケを読むようにしよう.
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ぜひ,みなさんも,実際にサイトにアクセスして確認してください.

☆(上級者向け)G7のコミュニケ(Group of Seven Communique)の英文を
ダウンロードし,読破してみよう.

(注意)サイトにアクセスした日時によって,ヒットする件数やそれぞれのサ
イトの構成に違いがでてくることがありますので,了解してください.
(アクセス日)2000年4月17日

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【統計Q & A】G7の構成国は?
            → 日,米,英,独,仏,伊,加

【今回のサイト】 大蔵省: http://www.mof.go.jp/
         財務省: http://www.ustreas.gov/
【評価】★★
【評価】★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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第3回 日経平均株価[top]

                          2000年4月21日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン         No.03
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新聞記事とイン
ターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第3回】 日経平均株価

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2000年4月16日の日経には,以下のような記事がありました.

「日本経済新聞社は15日,日経平均株価を構成する株式225銘柄の選定基
準を改めると発表した.24日から実施し,同日で30銘柄を入れ替える.改
訂は1991年10月以来,ほぼ9年ぶり.」

今ではニュースの最後に必ず登場する日経平均株価.日本経済の強さ弱さを敏
感に反映する指標といえます.正式名称は「日経平均株価」あるいは省略して
日経平均なのですが,なぜか多くの放送局は東証株価あるいは単に株価と表現
しています.正しい名称を覚えましょう.英語名は Nikkei Average あるいは
Nikkei 225 です.

東京証券取引所1部に上場されているのはおよそ1400銘柄.新しい日経平
均構成銘柄の時価総額合計は,東証1部全体の約7割を占めるとのことです.

これまでにも,銘柄の入れ替えは何度か行われていますが,今回の30銘柄と
いうのはかなり大幅です.

今回新しく採用された主な銘柄
・京セラ
・セブン・イレブン・ジャパン
・イトーヨーカ堂
・日本興業銀行
・静岡銀行
・DDI
・NTTドコモ

除外された主な銘柄は
・ニチロ
・三井鉱山
・東邦レーヨン
・日本カーバイド工業
・東洋ゴム工業
・岩谷産業
・丸 善

銘柄の入れ替えは,各企業の栄枯盛衰と日本経済の産業構造の変化を表してお
り,興味深いものがあります.

今回の大幅な銘柄入れ替えに関する情報は,当然ながら日経のサイトで入手で
きます.

日本経済新聞社: http://www.nikkei.co.jp/

特集「日経平均銘柄入れ替え」:   http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt28/

特集「日経平均銘柄入れ替え」の項目
・日経平均株価の新規採用30銘柄
・日経平均株価の除外30銘柄
・日経平均225種銘柄一覧
・「日経平均株価」銘柄選定基準変更のポイント
・日経平均株価の概要  ← 計算方法の説明あり
・日経平均騰落記録  ← これまでの騰落ベスト10
・日経平均採用除外銘柄一覧  ← 過去の除外歴史
・日経平均株価の選定基準改定と銘柄入れ替えについて
・新選定基準(採用・除外基準)
・旧選定基準(除外・補充基準)

「日経平均225種銘柄一覧」をみると,どのような企業が選ばれているかを
知ることができます.

「日経平均騰落記録」から,それぞれのベスト1を整理しておきましょう.

              当日終値    年月日
・上昇率1位  13.24    22898.41   1990年10月2日
・下落率1位  -14.9    21910.08 1987年10月20日
・上昇幅1位  2676.55   22898.41   1990年10月2日
・下落幅1位  -3836.48 21910.08 1987年10月20日

日経平均の場合は,騰落幅と騰落率の1位はそれぞれ同じ日になっています.
87年10月20日は有名なブラックマンデーです.

日経の有料サイト「日経テレコン21」でも同じような特集コーナーが設けら
れています.こちらは pdf ファイルでの配布となっています.

日経テレコン21(有料): http://telecom21.nikkeidb.or.jp/

上の資料に基づいて,簡単に整理すると,次のようになります.

日経平均株価の歴史

・1950年9月7日,東京証券取引所が平均株価の算出を開始.
・1970年7月,東京証券取引所が算出をとり止めたのに伴い,日本経済新
聞社が代わりに公表開始.
・1975年5月1日,米ダウ・ジョーンズ社と提携し,名称を「日経ダウ平
均」とする.
・1985年5月1日,「日経平均株価」に名称変更,今日にいたる.

計算方法

基本的には225銘柄株価の単純平均ですが,銘柄入れ替え時に統計値の連続
性を保つために,分母の除数で調整しています.また,株価の額面はまちまち
ですが,50円額面に換算して株価を計算しています.従って,単純平均とい
っても複雑です.
日経平均株価は1分ごとに計算,公表されています.

    日経平均=採用銘柄株価合計/除数

これまでに日経平均から除外された銘柄と補充された銘柄の歴史は「日経平均
採用除外銘柄一覧」に載っています.これをみると,これまでは多くても数銘
柄の入れ替えでしたので,今回の改定がかなり大幅であることがわかります.
株価形成になんらかの思惑が働くのではないかと,少し危惧します.実際,銘
柄入れ替えのニュースが,4月15日以降23日までの日経平均株価に下落圧
力を与えるという見方もあります.つまり,除外される銘柄が,それを理由に
売られる可能性があるわけです.

毎日の日経平均株価は,さまざまなサイトで見ることができます.本家の日経
のサイトでは,

NIKKEI NET 株価サーチ: http://stock.nikkei.co.jp/average/

最近4カ月の日経平均のグラフがNYダウ平均のグラフと同時に表示してあり
ます.

日経平均ではなく,個別銘柄の株価も検索することができます.

日経株価サーチ: http://money.nikkei.co.jp/money

株価サーチの欄に,銘柄,たとえば,「ヤフー」と入れて,「サーチ」を実行
すると「ヤフー株」のグラフが表示されます.こちらも約4カ月の日次データ
をカバーしています.
株価のグラフ以外に,

・投資参考指標
・業績・財務の推移
・会社の概要

の情報を見ることができます.

日経以外の代表的なサイトとしては,「ヤフー!ファイナンス」があります.

ヤフー!ファイナンス: http://quote.yahoo.co.jp/

こちらでは,株価のグラフは1年と3カ月を選択できるようになっています.
同じように,個別銘柄の検索もできます.以下の情報が提供されています.

・チャート(グラフのこと)
・企業情報
・掲示板
・ニュース

ブルームバーグ主要株価指数では,世界の主な株価指数が一覧できて便利です.
ブルームバーグは英のロイターに対抗する米の経済専門通信社です.

ブルームバーグ主要株価指数: 
http://www.bloomberg.com/jp/markets/wei.html


その他,朝日新聞の「各国の株式指標いろいろ」も役立ちます.日経平均,N
Yダウ,FT100(ロンドン)の3指標の5日間,3カ月間,1年間のグラ
フを同時にみることができます.「東証株価一覧」では銘柄の名前やコードを
入力することなく一覧表から各銘柄の終値をみることができます.

朝日新聞「各国の株式指標いろいろ」:
    http://www.asahi.com/market/stock.html#top

朝日新聞「東証株価一覧」:
    http://www.asahi.com/market/stock/index.html#top

以上のサイトでは最長でも1年分しかデータを公表していません.ある程度長
期にわたった日経平均の時系列データが入手できるサイトは,日本銀行です.

日本銀行のダウンロードコーナーにある「時系列データのダウンロード」がす
ぐれています.

   http://www2.boj.or.jp/dlong/etc/etc.htm

「株式市場」の中に「日経平均株価(月末値)」と「東証1部売買高(月平均
)」があります.1970年1月からの月次データです.テキストデータです
から,ダウンロードした後,エクセルでデータを読み込んで活用します.
このデータを見ると,1970年1月末の日経平均株価は2316円97銭で
あったことがわかります.

■まとめ------------
・日経平均株価は225の銘柄から構成
・1950年から作成
・2000年4月24日から30銘柄の入れ替えを実施
・採用銘柄の時価総額は東証1部全体の約7割
-------------------------------------

ぜひ,みなさんも,実際にサイトにアクセスして確認してください.

☆(上級者向け)日本銀行のダウンロードコーナーから,日経平均株価の時系
列データをとりだし,このテキストファイルを表計算ソフト・エクセルで読み
込んでみましょう.さらに,日経平均株価のデータを折れ線グラフにしてみま
しょう.

(注意)サイトにアクセスした日時によって,ヒットする件数やそれぞれのサ
イトの構成に違いがでてくることがありますので,了解してください.
(アクセス日)2000年4月20日

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【統計Q & A】日経平均株価に採用されている銘柄の数は?
            → 225

【今回のサイト】 日本経済新聞社: http://www.nikkei.co.jp/
         ヤフー!ファイナンス: http://quote.yahoo.co.jp/
【評価】★★
【評価】★★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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第4回 ダウ工業株30種平均[top]

                          2000年4月28日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン         No.04
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新聞記事とイン
ターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第4回】 ダウ工業株30種平均

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2000年4月15日の日経には,以下のような記事がありました.

「不安定な値動きが続いていたニューヨーク株式市場で14日,ダウ工業株3
0種平均が前日比617ドル78セント安となり,過去最大の下げ幅を記録し
た.」

新聞やニュースではNYダウ平均株価とか,NY株価とか表現されていますが,
正式な名称は,上の記事にもあるとおり,「ダウ工業株30種平均」,英語で
は The Dow Jones Industrial Average といいます.

4月14日の株価急落をThe Wall Street Journal は次のように伝えました.

--------------
The Dow Jones Industrial Average closed down 617.78 points, 5.7%, to
10305.77, its worst point drop ever, topping the drop of 554.26 on
Oct. 27 1997. But the decline didn't rank among the 20 biggest in
percentage terms.
--------------------------------

下落幅では過去最高であるが,下落率ではこれまでの上位20にも入っていな
いと伝えています.

ちなみに,1987年10月19日のブラックマンデー時の下落幅は508ド
ル00セントで第4位ですが,下落率は22.6%でダントツの1位です.値
下さげ幅でみるか,率でみるかは重要なポイントです.株価水準が高くなれば
幅よりも下落率でとらえた方がその大きさを正しく把握できるでしょう.
これまでの騰落率と幅の記録を整理しておきます.

               当日終値    年月日
・上昇率1位 14.87%    99.34ドル 1931年10月6日
・下落率1位  -22.61% 1738.74ドル 1987年10月19日
・上昇幅1位  499.19ドル 10630.60ドル 2000年3月16日
・下落幅1位  -617.78ドル 10305.77ドル 2000年4月14日

アメリカの株価水準を示す最も代表的な指標が,主にニューヨーク証券取引所
に上場されている銘柄からなるダウ工業株30種平均 The Dow Jones
Industrial Average です(以下NYダウと略称).ダウは Dow Jones 社のダ
ウを表しています.Dow Jones 社は米の経済新聞,The Wall Street Journal
を発行している母体です.日本経済新聞社の「日経平均株価」は,このダウ工
業株30種平均を手本に作成されています.

(注)「日経平均株価」はこのメールマガジンの第3号を参照してください.

NYダウの計算方法

基本的には,30の株価の単純平均で計算されます.ただし,株価は大きく値
上がりすると,売買しやすいように株式分割を実施することがあります.また,
産業構造の変化を反映して30の構成銘柄も一部入れ替えが行われます.この
ような場合,統計の継続性を保つために,分母にくる除数(divisor)で調整
を行っています.

NYダウの歴史

・1896年5月26日,初めてNYダウが作成される.
 このときは12銘柄からなっていました.これを a Primer と呼んでいます.
その12銘柄は以下のとおりです.
American Cotton Oil;American Sugar;American Tobacco;Chicago Gas;
Distilling & Cattle Feeding;General Electric;Laclede Gas;National
Lead;North American;Tennessee Coal & Iron;U.S. Leather;U.S. Rubber

この中で今でも構成銘柄となっているのは,ゼネラル・エレクトリック(GE
)だけです.ただ,GEも一時期構成銘柄からはずれたこともありました.

・1928年10月1日,はじめて30銘柄となる.
 これから今日まで30銘柄が続いています.

最も最近の銘柄の入れ替えとしては,
・1999年11月1日の4銘柄の入れ替えが話題を集めました.
Microsoft,Intel,SBC Communications,Home Depot が新たに加わり,
Chevron,Goodyear,Sears Roebuck,Union Carbide が外されました.

この銘柄入れ替えが大いに注目されたのには理由がありました.新しく組み入
れられたマイクロソフトとインテルの2銘柄は,ニューヨーク証券取引所(
New York Stock Exchange)上場ではなく,ナスダック(NASDAQ)上場の銘柄
だったからです.ダウ工業株30種平均が,ニューヨーク証券取引所上場以外
の銘柄を含めたのはこれが最初です.一般にNYダウは伝統的な産業,ナスダ
ックはインターネットを中心とする情報関連の銘柄を多く含んでいるという違
いがあります.

ナスダックについては,別の機会に説明します.

現在(1999年11月1日入れ替え時)ダウ工業株30種平均に採用されている3
0の銘柄は次のとおりです.

----------------------------
Allied Signal Inc. (ALD);    Aluminum Co. of America (AA);
American Express Co. (AXP);   AT&T Corp. (T);
Boeing Co. (BA);        Caterpillar Inc. (CAT);
Citigroup Inc. (C);       Coca-Cola Co. (KO);
DuPont Co. (DD);        Eastman Kodak Co. (EK);
Exxon Corp. (XON);       General Electric Co. (GE);
General Motors Corp. (GM);   Hewlett-Packard Co. (HWP);
The Home Depot, Inc. (HD);   Intel Corp. (INTC);
International Business Machines Corp. (IBM); International Paper Co.
(IP);
J.P. Morgan & Co. (JPM);    Johnson & Johnson (JNJ);
McDonald's Corp. (MCD);    Merck & Co. (MRK);
Microsoft Corp. (MSFT); Minnesota Mining & Manufacturing Co. (MMM);
Philip Morris Cos. (MO);   Procter & Gamble Co. (PG);
SBC Communications Inc. (SBC); United Technologies Corp.(UTX);
Wal-Mart Stores Inc. (WMT);    Walt Disney Co. (DIS)
---------------------------------------------

企業名の後の( )は銘柄のコードを表します.株価を検索するとき,通常は
この略称を入力します.

上の30銘柄のうち,大半は日本でも知られた有名企業です.あなたは,30
のうちどれだけの企業を知っていますか?

これらの情報は,すべてダウ・ジョーンズ社のサイトから入手できます.

Dow Jones Indexes:  
http://indexes.dowjones.com/home.html

このサイトを読めば,NYダウの権威になること請け合いです.主な内容を整
理しておきます.

---------------------------
■What's New:
最近(99年11月1日)の4銘柄の入れ替えのニュースを含めて,NYダウ
の基本的な情報を入手できます.

■Dow Data:この項目が最もおすすめです.4つの項目に分類されています.
   ・Charts
   ・Historical Queries
   ・Dividends
   ・Divisors

Charts では,1896年から1999年までを10年ごとに分割したNYダ
ウのグラフをみることができます.にくいことに,当時の大統領の似顔絵のア
イコンがついています.しかも各時代の年表までそろっているという充実ぶり
です.

1990年から1999年までのチャート:
     http://indexes.dowjones.com/chrt1990.html

Historical Queriesでは,1896年5月26日から今日までの間で,Month,
Day,Year を入力すると,指定した日のNYダウの高値,安値,終値を検索す
ることができます.同時にその時の30の銘柄のリストも見ることができます.

Dividendsでは,30銘柄の配当がわかります.

Divisors とは,平均株価を計算するときの除数(分母にくる数値)のことで
す.銘柄入れ替え時には,この除数を調整することでデータの連続性を保って
います.

■About the Averages:ここではダウ平均に関する基本的な情報が提供されて
います.たくさんの項目がありますが,とりあえず以下の項目をみれば十分で
しょう.
   ・Dow Jones Industrial Average Facts
   ・Frequently Asked Questions
   ・Dow Diaries
   ・About the Dow Jones Industrial Average
   ・Dow Jones Industrial Average Stocks

Dow Jones Industrial Average Factsでは,NYダウの現在の30銘柄,最初
の12銘柄,騰落幅と率のベストテンなどがわかります.

Frequently Asked Questionsではよく質問される内容についてのQ&Aがあり
ます.NYダウの計算方法(How is the DJIA computed?)では,NYダウが
基本的には単純平均で計算されることが示されています.

その他の項目
■DIJA Components:
30銘柄の Company name,symbol,Price,Weighting の4項目が一覧表の形
で整理してあります.Company name をクリックすると,その企業のサイトに
リンクします.

■DJIA Historical Year End Data:
1896年から1999年までのNYダウの年末値と年間の騰落率のデータが
示されています.エクセル形式のファイルをダウンロードすることもできます.
これによると,1896年12月31日のNYダウは,40ドル45セントで
あることがわかります.
----------------------------------------------------

毎日のNYダウ平均は,主なニュース系のサイトならどこででも見ることがで
きます.充実しているのは,有料ですが,Wall Street Journal の Markets
Data Center Index です.

Wall Street Journal Interactive の Markets Data Center Index(有料):
   http://interactive.wsj.com/documents/mktindex.htm

この中の DJ Average Charts(有料):
 http://interactive.wsj.com/documents/charts.htm

では,最近6カ月の日次のNYダウのチャートをみることができます.同時に
構成銘柄の株価,企業情報等も閲覧できるようになっています.

無料サイトで,NYダウ構成の各銘柄のチャートと各種情報が要領よく整理さ
れているのは,IPL(Internet Public Library) の Dow Jones Industrial
Average Companies です.

Internet Public Library:  http://www.ipl.org/ref/

米SEC(U.S. Securities and Exchange Commission:米証券取引委員会)の
企業情報(有価証券報告書:securities & exchange filing)にもリンクがは
ってあります.

U.S. Securities and Exchange Commission:
     http://www.sec.gov/

NYダウの長期間のグラフをみたい場合は,以下も有用です.

CheckFree Investment Servicesの Dow Jone's Industrial Last 25 years:
   http://www.secapl.com/secapl/quoteserver/djia-25.html

Global Financial Data(有料): 
   http://www.globalfindata.com/

上記サイトでは1914年から1998年までの高値,安値,終値の年次デー
タを入手できます.

なお,米国に上場されている個々の株価の検索は「Yahoo! Finance」が便利で
す.

Yahoo! Finance: http://quote.yahoo.com/

■まとめ------------
・ダウ工業株30種平均の銘柄は30から構成
・1896年5月26日に最初に作成.このときは12銘柄
・30銘柄となったのは,1928年10月1日
・1999年11月1日の銘柄入れ替えで,初めてナスダック上場の銘柄が採
用された.
-------------------------------------

ぜひ,みなさんも,実際にサイトにアクセスして確認してください.

☆(上級者向け)Dow Jones Indexes のサイトにアクセスして,1987年1
0月19日のNYダウの高値,安値,終値を調べてみなさい.

(注意)サイトにアクセスした日時によって,ヒットする件数やそれぞれのサ
イトの構成に違いがでてくることがありますので,了解してください.
(アクセス日)2000年4月24日

------------------------------------------------------------
【統計Q & A】ダウ工業株30種平均に採用されている銘柄の数は?
            → 30

【今回のサイト】 Dow Jones Indexes:
         http://indexes.dowjones.com/home.html
【評価】★★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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第5回 卸売物価指数[top]

                          2000年5月5日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン                No.05
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
しばらくは,新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新
聞記事とインターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第5回】 卸売物価指数

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2000年4月10日の日経夕刊には,以下のような記事がありました.

「日銀が10日発表した3月の国内卸売物価指数(1995年平均=100)
は96.1と,前年同月比0.1%上昇した.前年同月比でプラスになるのは
98年2月以来約2年ぶり.同時に発表した99年度平均の国内卸売物価指数
は前年度比1.0%低い96.0で2年連続で低下した.」

卸売物価指数(WPI:wholesale price index)は,消費者物価指数ととも
に代表的な物価指数です.講義でも登場しました.われわれ消費者にとって身
近なのは消費者物価指数ですが,今回は卸売物価指数を調べてみましょう.

記事によると,データソース(原データの作成,提供者)は「日本銀行」であ
ることがわかります.卸売物価指数は日銀が作成しています.一方,消費者物
価指数は総務庁です.覚えておいてください.

日本銀行のホームページは,経済関係では最も充実しているサイトの1つです.
経済学部の学生なら,日銀のアドレスは絶対覚えておきましょう.

日本銀行: http://www.boj.or.jp/

boj は Bank of Japan の頭文字です.or は organization を表します.jp
はもちろん Japan です.

日銀のアドレス(正確には url = uniform resource locator といいます)が
わからない場合はどうする?そうです.サーチエンジンを活用します.サーチ
エンジンとは,検索のためのサイト(ホームページ)です.たくさんのサーチ
エンジンがありますが,今回も「goo(グーと読みます)」を使ってみまし
ょう.

goo: http://www.goo.ne.jp/

検索欄に  日本銀行 
と入れて,「検索」ボタンをクリックすると,「日本銀行」を含むウェブサイ
トを探して,表示します.9885件がヒットしましたが,最近gooでは,
「ぴったりgoo」というサービスを始めてくれました.検索項目に最もぴっ
たりくるサイトがあれば,それを最初に表示してくれます.「ぴったりgoo
」欄に日本銀行のURLを表示してくれたはずです.

日本銀行のサイトは非常に充実しています.情報量が多いと,どこに卸売物価
の情報があるか,初めてアクセスした場合は探すのに苦労するかもしれません.
そのようなときは,日銀のメニューの中にある「サイト内検索」を選んで,日
銀内で検索を行います.

「卸売物価指数の解説」で検索すると12件がヒットしました.

重要な解説項目を以下に整理します.

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1.「卸売物価指数」の解説:
   http://www.boj.or.jp/siryo/exp/exwpi.htm

2.よりくわしい卸売物価指数の解説(pdf版):
   http://www.boj.or.jp/siryo/exp/faqwpi1.htm

3.物価指数のFAQ:
   http://www.boj.or.jp/siryo/exp/faqprice.htm

1は標準的な解説です.2はそれよりやや詳しい pdf 版です.pdf ファイル
は Acrobat Reader で読むことができるファイル形式です.3はQ&A形式で
卸売物価指数の説明をしています.3が一番わかりやすいかもしれません.な
お,FAQとはFrequently Asked Questions のことです.

これらの情報を元にポイントを整理しておきましょう.

・卸売物価は,企業間で取り引きされる商品の価格を調べたものです.
・卸売物価指数は,国内卸売物価指数,輸出物価指数,輸入物価指数,さらに
それらをまとめた,総合卸売物価指数の4つがあります.ただし,この中で経
済的に意味のあるのは,国内卸売物価指数,輸出物価指数,輸入物価指数の3
つです.総合卸売物価指数は上の3つを平均しただけです.このあたりの事情
は,「物価指数のFAQ」内の「2−3 卸売物価指数を利用する際に,どんな
点に気をつければよいですか.」を読んでください.日銀は次回の2000年
改定では,総合卸売物価指数の名称をやめるとのことです.総合というといか
にも一番すぐれているという印象を与えかねないとの配慮からです.
・調査先数は全部で2211,調査価格数は全部で4810で,全体の約95
%はカバーしているといわれています.
・現在の基準時点は1995年.基準時点は5年ごとに変更しています.
・計算方法は,ラスパイレス方式(これは講義で説明済みです)
・日本銀行は1887年(明治20年)から作成を開始し,1897年から公
表しています.
・毎月発表される月次データ(monthly data)です.

その他,さらに詳しく調べてみたい場合は,以下の3点を参照してください.
・卸売物価指数の平成7年(1995年)基準改定について:
   http://www.boj.or.jp/siryo/stat/wpire95.htm
  1995年改定時の変更の説明があります.
 より詳細な pdf ファイルは次でダウンロードできます.
   http://www.boj.or.jp/down/siryo/97/wpire95.pdf
・卸売物価指数の現状と見直し案について:
   http://www.boj.or.jp/down/siryo/99/ron9903c.pdf
・卸売物価指数の見直しに関する日本銀行の今後の取り組み方針:
   http://www.boj.or.jp/ronbun/99/ron9911a.htm
-------------------------

次に,日銀のサイトから卸売物価指数のデータを取りだしてみましょう.日銀
は多くの種類の時系列データを提供している数少ないすぐれたサイトです.時
系列データとは,長期間にわたったデータのことです.時系列データは「時系
列データのダウンロード」コーナーにあります.

時系列データのダウンロード: http://www.boj.or.jp/dlong_f.htm

卸売物価指数のダウンロード: 
      http://www2.boj.or.jp/dlong/price/price1.htm

ここには,以下の5つの分類の時系列データがテキストファイルで提供されて
います.
・国内卸売物価指数
・輸出物価指数
・輸入物価指数
・需要段階別・用途別指数
・総合卸売物価指数

テキストファイルをエクセルなどの表計算ソフトで変換して利用します.
国内卸売物価指数の総平均のファイル cdda0010.txt をクリックしてみましょ
う.

cdda0010.txt: http://www2.boj.or.jp/dlong/price/data/cdda0010.txt

画面にデータが表示されます.これをブラウザでテキストファイルとして保存
します.この後,エクセルを起動して,いまダウンロードしたファイルを読み
込みます.1995年1月から2000年3月までのデータが含まれています.

すこし期間が短いですね.実は,他にもっと長期間の時系列データを用意して
いるコーナーがあるのです.このあたり,日銀サイトのわかりにくいところで
す.それが,「時系列データの掲載内容等について」のコーナーです.

時系列データの掲載内容等について:
   http://www.boj.or.jp/down/long/historic.htm#14

ここから物価指数を選びます.
物価指数:  http://www.boj.or.jp/down/long/data/hprice.txt

これもテキストデータなので,エクセルで読み込んで表計算用のデータに変換
します.このようにテキストデータで提供されていれば,どの表計算ソフトで
も利用できるという大きなメリットがあるのです.ある特定のソフトの形式で
配布してあると,そのソフトを持っていないと利用できないという大変不便な
ことになってしまうのです.この点でも日銀はえらい.

こちらのデータは,1970年1月から1999年11月までカバーしていま
す.ともに95年基準データですから,上のデータ(cdda0010.txt)とあわせ
ると2000年3月までそろいます.

【sasayama seminar】
国内卸売物価指数の計算方法であるラスパイレス方式については,私の講義ノ
ート「第5講 物価指数」を参照してください.

http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/macroecon/lecture05.html

国内卸売物価指数のグラフは,私の「マクロ経済学講義ノート 付録B経済デ
ータ」を参照してください.日銀の月次データを元にエクセルで作成した19
70年から最近までの年次データのグラフです.

   http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/wpi.gif

この卸売物価上昇率のグラフをみると,1974年,80年は大幅な上昇を示
していることがわかります.これは第一次,第二次石油ショックによる影響で
す.1986年には大幅な低下を示していますが,これは85年のプラザ合意
後の大幅な円高による影響です.90年代は,90年,91年,97年を除い
て上昇率はおしなべてマイナスであり(90年代10年間の平均はー0.65
%)デフレ傾向が顕著です.

【知っていると便利】
日銀の経済統計の解説は,一般には「金融経済統計資料」のコーナーにまとめ
てあります.

金融経済統計資料: http://www.boj.or.jp/siryo/siryo_f.htm

【用語解説サイト】
用語辞典がわりに簡単な意味を知りたい場合は,朝日新聞の「金融経済キーワ
ード」が便利です.

朝日新聞金融経済キーワード: 卸売物価指数
   http://www.asahi.com/market/keyword/981208.html

■まとめ------------
・卸売物価指数は企業間で取り引きされる財の価格を対象とする.
・日本銀行が作成している.
・現在の基準時点は1995年
・ラスパイレス方式で計算されている.
・90年代10年間の卸売物価上昇率の平均はマイナス0.65%
-------------------------------------

ぜひ,みなさんも,実際にウェブサイトにアクセスして確認してください.

☆【上級者向け課題】
日本銀行のダウンロードコーナーから,卸売物価指数のデータをダウンロード
し,それをエクセルのデータに変換しなさい.次にエクセルで国内卸売物価指
数の折れ線グラフを作成しなさい.さらに,国内卸売物価指数の前年比上昇率
を計算し,それも折れ線グラフに作成しなさい.最後に,両者の複合グラフも
作成してみなさい.また.国内卸売物価指数上昇率のグラフの特徴をまとめて
みましょう.

(注意)サイトにアクセスした日時によって,ヒットする件数やそれぞれのサ
イトの構成に違いがでてくることがありますので,了解してください.
(アクセス日)2000年5月1日

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【統計Q & A】1970年代以降今日まで卸売物価が大幅に上昇した年と

         落した年はいつか.またその理由は?
          → 上昇:1974,1980年(石油ショック)
            下落:1986年(プラザ合意後の円高)

【今回のサイト】 日本銀行:  http://www.boj.or.jp/
         卸売物価指数の解説:
          http://www.boj.or.jp/siryo/exp/exwpi.htm
【評価】★★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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第6回 消費者物価指数[top]

                          2000年5月12日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン                No.06
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新聞記事とイン
ターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第6回】 消費者物価指数

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2000年4月28日の日経夕刊には,次のような記事がありました.

「総務庁が28日発表した1999年度平均の全国の消費者物価指数は総合指
数が102.0となり,前年度に比べ0.5%下落した.総合指数の低下は円
高が進んだ95年度以来2回目で,下落率は比較可能な71年度以降で最大と
なった.」

消費者物価指数(CPI:consumer price index)は,卸売物価指数とともに
代表的な物価指数です.講義でも登場しました.消費者物価指数は,われわれ
消費者にとって身近な小売り段階での財とサービス価格をとらえた物価指数で
す.

(注)卸売物価指数については,メールマガジン第5号を参照してください.

記事によると,データソース(原データの作成,提供者)は「総務庁」である
ことがわかります.より正確に言えば総務庁統計局です.

総務庁統計局: http://www.stat.go.jp/

総務庁統計局のサイトは経済データの宝庫といってもよいサイトです.日本銀
行とともに,経済学部学生必見のサイトです.

総務庁統計局の消費者物価指数の目次ページは次です.

消費者物価指数[目次]:
    http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm

新聞の記事の元となったプレス発表用の文書は次です.

消費者物価指数全国(平成11年度平均):
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nendo/index-z.htm

1984年度から1999年度までの消費者物価指数(1995年=100)
と前年度比増減率の表とグラフを見ることができます.
これから,消費者物価指数が下落したのは,1995年度と1999年度の2
回だけであり,1999年度の下落幅マイナス0.5%が過去最大であること
がわかります.

さらに,ページの最後には,エクセル形式のファイルがダウンロードできるよ
うになっています.

表1 10大費目指数(全国)
表2 中分類指数(全国)
表3 都市階級・地方・都道府県庁所在市別10大費目指数
表4 商品・サービス分類(全国)
表5 表5 総合指数の推移(全国)

表5をダウンロードしてみましょう.

表5 総合指数の推移(全国)年度データ:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nendo/zuhyou/058eh5.xls

同じ形式で暦年データについても公表されています.

消費者物価指数全国(平成11年平均):
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nen/index-z.htm

表5 総合指数の推移(全国)年データ:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nen/zuhyou/058ch5.xls

ともに1970年度(年)から最近までのデータを入手できます.ダウンロー
ドが終了すると自動的にエクセルが起動し,ダウンロードした内容が表示され
ます.

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総務庁統計局の消費者物価指数の解説はおもに以下の3つに集約されます.

1.平成7年(1995年)基準消費者物価指数の概要:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/1.htm

2.消費者物価指数の精度について:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/3.htm

3.消費者物価指数に関するQ&A:
  http://www.stat.go.jp/data/cpi/4.htm

1は最も基本的な解説です.

2は,「消費者物価指数は「実態より高め」にでているのではないか」という
日銀からの疑問に対する総務庁統計局からの反論の文書です.実は1999年
3月に日銀と総務庁統計局の間で消費者物価指数をめぐってちょっとした”バ
トル”があったのです.

日銀が,総務庁作成の消費者物価指数に敏感になっているのには理由があると
いわれています.それは「インフレーション・ターゲッティング」がらみの問
題があるのです.インフレーションの目標値を設定し,その実現に向けて金融
政策を実行する「インフレーション・ターゲッティング」を,もし日銀が将来
採用することになれば,インフレーションのデータをどの物価指数でみるかが
重要になってくるからです.

(注)インフレーション・ターゲッティング,あるいはインフレ・ターゲット
論については別の号で解説します.なお,日銀は「インフレーション・ターゲ
ッティング」は2000年5月段階では採用していません.

-------------
(参照)「消費者物価は実勢より0.9ポイントほど高く出ているのでは?」
関連新聞記事

・『日本経済新聞』1999年5月11日 P5
消費者物価指数「実態より高め」.日銀,精度向上を要請.総務庁「問題ない
」と反論

その他の日経新聞関連記事
・「総務庁,消費者物価指数調査方法見直し,郊外安売り店対象にーパソコン
なども追加」
  1999年9月3日 P5
・「統計のウラ側(1)消費者物価狂った尺度ー「多様化」追い切れず」
  1999年7月27日 P5
・「実感と違う経済統計,行政は説明責任果たせー情報公開で信頼向上を
  1999年5月31日 P7
・「消費者物価指数と金融政策ー日銀,都区部の動向を注視」
  1999年2月5日夕刊 P8

(注)上の記事は有料の日経テレコン21ならオンラインで検索できますが,
無料の日経ネットではできません.オンライン検索できない場合は,図書館の
CD−ROM検索コーナーあるいは「新聞縮刷版コーナー」で読むことができ
ます.

日経テレコン21(有料): http://telecom21.nikkeidb.or.jp/
日経ネット: http://www.nikkei.co.jp/

(参考文献)
日銀と総務庁の論争の発端となった日銀の論文と著作は以下です.

・白塚 重典「消費者物価指数の計測誤差ーその問題点と改善に向けての方策
ー」日本銀行金融研究所『金融研究』第14巻第2号 1995年

・白塚 重典「物価指数の計測誤差と品質調整手法:わが国CPIからの教訓
」日本銀行金融研究所『金融研究』第19巻第1号 2000年
  http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/2000/kk19-1-7.pdf

・白塚 重典『物価の経済分析』東京大学出版会 1998年

(注)
日本銀行論文コーナー: http://www.boj.or.jp/ronbun/ronbun.htm
日本銀行金融研究所:  http://www.imes.boj.or.jp/
で論文全文を pdf ファイルでダウンロードできるのは1997年からです.
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3はQ&A形式で消費者物価指数を解説しています.3が最もわかりやすいで
しょう.
3の中にも,日銀との論争をうかがわせるQ&Aがいくつか見受けられます.
例えば,「Q6 調査対象にディスカウント店などが入っておらず、消費者物
価指数が高めに出ていませんか?」
「Q9 卸売物価指数が下落しているのに、消費者物価指数が下落していない
のはおかしいのではないですか?」
「Q12 本年(1999年)5月11日の日本経済新聞の記事によると、「日
銀によると合計で0.9ポイントほど消費者物価指数は実勢よりも高く出てい
る可能性がある」と記述されていますが、実際はどうなのですか?」

以上の情報を元に整理すると次のようになります.

・消費者物価指数の調査品目は1995年基準時では580品目
・全国の167市町村に約700の価格調査地区を設定して,実際に販売され
ている平常の小売価格を調査.これが消費者物価指数の基となる価格になりま
す.
・指数の計算方法はラスパイレス方式による加重平均
・基準時点は5年ごとに変更.現在は1995年が基準時点.次回の改定では
2000年基準になります.この改定時に,調査品目の見直しも実施されます.
2000年改定では,パソコンの価格や携帯電話の通話料金が含められるとの
ことです.
・カバーする品目の数により最小類指数,中分類指数,10大費目指数,総合
指数の4種類があり,総合指数が最も範囲が広い.
・日銀が作成する卸売物価指数と総務庁統計局が作成する消費者物価指数では
カバーする品目に違いがあるので,消費者物価指数の下落幅が卸売物価指数の
下落幅に及ばないことがある.

【sasayama seminar】
消費者物価指数の計算方法であるラスパイレス方式については,私の講義ノー
ト「第5講 物価指数」を参照してください.

http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/macroecon/lecture05.html

消費者物価指数のグラフは,私の「マクロ経済学講義ノート 付録B経済デー
タ」も参照してください.総務庁統計局のデータを元にエクセルで作成したグ
ラフです.1970年から最近までをカバーしています.これは暦年データで
す.

   http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/cpi2.gif

総務庁と日銀との間で論争になった,消費者物価指数と卸売物価指数の上昇率
の違いをグラフで比較してみましょう.

   http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/wpicpi.gif

このグラフからわかることは,両者はほぼ同じように推移していますが,卸売
物価指数上昇率(下落率)の方が消費者物価指数のそれよりも大きいことです.
一般的に,卸売物価指数の方が内外の経済事情の変化に対して敏感に反応しま
す.

【用語解説サイト】
ブリタニカ百科事典のサイトで解説を読んでみましょう.あの世界のブリタニ
カ百科事典が今ではインターネット上で無料で利用することができます.ブリ
タニカのサイトが偉いのは,自社の情報だけでなく,雑誌情報,図書情報から
の検索してくれることです.

Britannica: http://www.britannica.com/

検索のキーワード: consumer price index

■まとめ------------
・消費者物価指数は小売り段階の商品とサービスの価格を把握する.
・カバーしているのは580品目
・総務庁が作成している.
・現在の基準時点は1995年
・ラスパイレス方式で計算されている.
・消費者物価指数の上昇率がマイナスとなったのは95年と99年(年度)
・1999年度の消費者物価上昇率はマイナス0.5%で過去最大.
-------------------------------------

ぜひ,みなさんも,実際にサイトにアクセスして確認してください.

☆(上級者向け)総務庁統計局のサイトにアクセスして,消費者物価指数のデ
ータをダウンロードし,指数と上昇率のグラフを作成しなさい.

(注意)サイトにアクセスした日時によって,ヒットする件数やそれぞれのサ
イトの構成に違いがでてくることがありますので,了解してください.
(アクセス日)2000年5月6日

------------------------------------------------------------
【統計Q & A】1999年度の消費者物価指数の上昇率は?
            → マイナス0.5%

【今回のサイト】 総務庁統計局: http://www.stat.go.jp/
         消費者物価指数: 
          http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm
【評価】★★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright 2000

第7回 FRB,FF金利と公定歩合[top]

                          2000年5月19日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン          No.07
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新聞記事とイン
ターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第7回】 FRB,FF金利と公定歩合

------------------------------------------------------------

2000年5月17日付日経夕刊のトップニュースは米国の利上げでした.

「米連邦準備理事会(FRB)は16日,短期市場金利の指標となるフェデラ
ルファンド(FF)金利の誘導目標を0.5%引き上げて年6.5%にするこ
とを決め,即日実施した.昨年6月以降,6回目の利上げで,0.5%の利上
げ幅は1995年2月以来.」

このような記事が流れた場合,FRBのウェブサイトには声明文の全文が掲載
されている可能性が大いにあります.探してみましょう.

米FRB(Federal Reserve Board)のサイトは,検索サイト Google ですぐ
見つかります.

Google: http://www.google.com/

FRB: http://www.federalreserve.gov/

公定歩合やFF金利の変更を行うのがFRBの中のFOMC(Federal Open
Market Committee,連邦公開市場委員会)です.記事の元となったプレスリリ
ースは次の文書です.FRB のトップページから Press Releases,Board
Actions と選ぶと見つかります.なお,英語ではFRBのことを通常はFed
(フェド)と省略します.

FRB Press Releases -- Board Actions -- 2000, May 16:
http://www.federalreserve.gov/BoardDocs/Press/General/2000/20000516/
  default.htm

声明文は16行と短いものです.最初の部分だけを読んでみましょう.

---------------
The Federal Open Market Committee voted today to raise its target for
the federal funds rate by 50 basis points to 6-1/2%. In a related
action, the Board of Governors approved a 50 basis point increase in
the discount rate to 6%.
---------------
(大意)連邦公開市場委員会は,フェデラルファンド金利の目標を0.5%上
げ,6.5%とすることを投票で決定した.同時に連邦準備理事会は公定歩合
を0.5%上げ,6%とすることを承認した.
(注)basis point = 0.01%

以下の2つの単語は基本用語です.
federal funds rate=FF金利(フェデラルファンド金利)
discount rate=公定歩合

FF金利は,日本ではコールレート(無担保コール翌日物金利)に相当する金
利で,短期金利の最も代表的な指標となる金利です.商業銀行は預金高に応じ
て連邦準備銀行(一般的には中央銀行)に準備預金を預けますが,その準備金
が不足する銀行は短期市場から資金を調達します(借りる).その際の金利が
FF金利です.FF金利は基本的には短期資金市場の需要と供給によって決ま
りますが,FRBは,短期市場の金利を誘導するときの対象としてFF金利を
目標にしています.上の声明文にある target とはそのような意味を含んでい
ます.

公定歩合は,中央銀行が商業銀行に資金を貸し付けるときの金利で,金融政策
の方向性を示すシンボル的な金利です.FF金利と違って,こちらは中央銀行
が決める金利です.公定歩合を引き上げれば金融引き締め,引き下げれば金融
緩和のサインです.

FOMCは先の声明文で公定歩合を次のように説明しています.
The discount rate is the rate charged depository institutions when
they
borrow short-term adjustment credit from their district Federal
Reserve Banks.

新聞の記事にもあるように,1999年6月から2000年5月16日までに
FRBは米国経済の過熱を抑えるために6回の利上げを実施しています.

            FF金利の誘導目標    公定歩合
1999年6月30日: 0.25%上げ5.00% 据え置き
1999年8月24日: 0.25%上げ5.25% 同幅上げ4.75%
1999年11月16日:0.25%上げ5.50% 同幅上げ5.0%
2000年2月2日:  0.25%上げ5.75% 同幅上げ5.25%
2000年3月21日: 0.25%上げ6.00% 同幅上げ5.5%
2000年5月16日: 0.50%上げ6.50% 同幅上げ6.0%

5月16日の利上げ幅が0.5%だったことはFRBが米国経済の景気過熱と
インフレ懸念を強く抱いている証拠だといえるでしょう.
利上げ実施後も,NYダウやナスダックは上昇し,利上げ幅が市場参加者には
予想された範囲内であると受け止められたようです.

---------
連邦準備銀行とは

米の連邦準備銀行制度は,全国を12の地区に分け,それぞれに連邦準備銀行
をおいています.それらを統括し金融政策をになうのが,Washington,D.C.に
ある連邦準備制度理事会(Board of Governors of the Federal Reserve
System)です.7名の理事から構成されますが,その議長(Chairman)がグリ
ーンスパン(Alan Greenspan)です.日本でいえば,日銀総裁に相当します.
連邦準備制度理事会の下でFF金利の誘導目標や公開市場操作を決定するする
のが連邦公開市場委員会 FOMC(Federal Open Market Committee) です.FOMC
は7名の上記理事とニューヨーク連銀総裁(ここまでが常任),それにその他
の連銀総裁4名の合計12名から構成されます.その他の連銀総裁の4名は1
年ごとのローテーションで決まります.FOMCは年8回開催され,その議事録は
約2カ月遅れで定期的に公開されています.なお,公定歩合を決定するのは連
邦準備理事会です.

なお,FRBの金融政策を常に注視している人々をFedウォッチャーと呼ん
でいます.

理事7名のプロフィルは以下でわかります.なお,2000年現在2名の欠員
があります.

Members of the Board of Governors:
   http://www.federalreserve.gov/bios/

Structure of the Federal Reserve System:
 http://www.federalreserve.gov/pubs/frseries/frseri.htm

12地区は以下のとおりです.ほとんどが大リーグのフランチャイズにもなっ
ている大都市です.以下のサイトには地図があります.
Boston,New York,Philadelphia,Cleveland,Richmond,Atlanta,Chicago,
St. Louis,Minneapolis,Kansas City,Dallas,San Francisco

Federal Reserve Banks:
    http://www.federalreserve.gov/pubs/frseries/frseri3.htm

------------------------
FOMC議事録

FOMC(Federal Open Market Committee,連邦公開市場委員会)のコーナ
ーはFRBのトップページの Monetary Policy から Federal Open Market
Committee を選ぶことでたどりつくことができます.

Monetary Policy: http://www.federalreserve.gov/policy.htm

FOMC: http://www.federalreserve.gov/fomc/

FOMC のページの後半にはFOMCの開催予定日とすでに発表された声明文(
Statement)とFOMCの議事録(Minutes)がカレンダーのような表形式で整理し
てあります.5月時点で発表されている最新の議事録は3月21日に開かれた
会議のものです.

March 21 Minutes: 
http://www.federalreserve.gov/fomc/MINUTES/20000321.HTM

金融政策の決定はメンバーの投票によって決められますが,議事録にはそれぞ
れの金融政策についての賛成者(Votes for)と反対者(Votes against)が明
確に示されています.3月21日のFF金利の6%への引き上げは全会一致で
決まったことがわかります.また,公定歩合決定の投票はFOMCではなく,
連邦準備理事会で行われていることも議事録から読みとれます.

2000年現在のFOMCのメンバーは次のとおりです.
---------------
Members
Alan Greenspan, Board of Governors, Chairman
William J. McDonough, New York, Vice Chairman
J. Alfred Broaddus, Richmond
Roger W. Ferguson, Board of Governors
Edward M. Gramlich, Board of Governors
Jack Guynn, Atlanta
Jerry L. Jordan, Cleveland
Edward W. Kelley, Board of Governors
Laurence H. Meyer, Board of Governors
Robert T. Parry, San Francisco
----
Alternate Members
Cathy E. Minehan, Boston
Michael H. Moskow, Chicago
William Poole, St. Louis
Thomas M. Hoenig, Kansas City
Jamie B. Stewart, First Vice President, New York

上から10名が2000年現在のメンバーです.理事会メンバー5名と地区連
銀総裁5名からなっています.規定上は12名ですが,連邦準備制度理事会の
7名の理事のうち2名が欠員です.連銀理事5名とニューヨーク連銀総裁が常
任で残り4名は入れ替わります.下のAlternate Members(次期メンバー)は
1年交代で入れ替わる地区連銀の総裁です.重要な金融政策は,10名のメン
バーの投票によって決定されます.上のメンバーの中には,MeyerやPooleなど
なつかしい経済学者の名前も混じっています.

(注)Stewart(N.Y.)はMcDonough(N.Y)の,Minehan(Boston)はBroaddus(
Richmond)の,Moskow(Chicago)はJordan(Cleveland)の,Poole(St.Louis)は
Guynn(Atlanta)の,Hoenig(Kansas City)はParry(S.F.)のそれぞれalternate
memberであり,2001年はこれらのalternateメンバーがメンバーになりま
す.
------------------

【データ】
FF金利と公定歩合のデータは当然のことながらFRBのサイトにあります.
最初の入り口は Researches and Data のコーナーです.

Researches and Data: http://www.federalreserve.gov/rnd.htm

Statistics: Releases and Historical Data:
      http://www.federalreserve.gov/releases/

各種金利のデータは次を選びます.
Selected Interest Rates: Daily update:
      http://www.federalreserve.gov/releases/H15/update/

各種金利の時系列データがそろっているのは次です.
Selected Interest Rates: Historical data:
http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data.htm


Federal Funds Rate FF金利の時系列データ
daily: http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data/d/fedfund.txt
weekly: http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data/ww/fedfund.
txt
monthly: http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data/m/fedfund.
txt
annual: http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data/a/fedfund.txt

Discount Rate(Discount window borrowing) 公定歩合の時系列データ
daily: http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data/d/dwb.txt
weekly: http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data/ww/dwb.txt
monthly: http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data/m/dwb.txt
annual: http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data/a/dwb.txt

FF金利は1954年7月から,公定歩合は1950年1月からの時系列デー
タを入手できます.テキストデータですから,エクセルで読み込んでからグラ
フを作成することができます.

【sasayama seminar】
米のFF金利と公定歩合のグラフは,私の「マクロ経済学講義ノート 付録B
経済データ」を参照してください.

 http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/ff.gif

このグラフは1999年1月1日から2000年5月5日までのFF金利と公
定歩合の日次データをプロットしたものですが,両者のデータの性質の違いが
明確にわかります.公定歩合はある一定期間固定されていますが,FF金利は
市場の需給を反映して変動します.

【用語解説サイト】
用語辞典がわりに簡単な意味を知りたい場合は,読売新聞の「ミニ時典」や朝
日新聞の「金融経済キーワード」などが便利です.

読売新聞ミニ時典: FRB
   http://www.yomiuri.co.jp/minijiten/0f960721.htm

朝日新聞金融経済キーワード: FF金利
   http://www.asahi.com/market/keyword/980828.html

Washington Post, Business Glossary: Federal Funds Rate
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/business/longterm/glossary/a_m/
federal_funds_rate.htm

読売新聞ミニ時典: 公定歩合
   http://www.yomiuri.co.jp/minijiten/15980415.htm

日本銀行 わかりやすい金融経済用語解説: 公定歩合
   http://www.boj.or.jp/wakaru/yougo/yougo_k.htm#buai

■まとめ------------
・米国の金融政策を決定するのはFRB(連邦準備制度理事会)
・米国の短期金利の指標はFF金利
・FF金利の誘導目標を決定するのはFOMC(連邦公開市場委員会)
・2000年5月16日現在米国の公定歩合は6%,FF金利の誘導目標は
 6.5%
-------------------------------------

ぜひ,みなさんも,実際にウェブサイトにアクセスして確認してください.

☆【上級者向け課題】
FRBのFOMC(連邦公開市場委員会)のコーナーにアクセスし,声明文(
Statement)と議事録(Minutes)を読んでみよう.

(注意)サイトにアクセスした日時によって,ヒットする件数やそれぞれのサ
イトの構成に違いがでてくることがありますので,了解してください.
(アクセス日)2000年5月19日

------------------------------------------------------------
【統計Q & A】2000年5月16日現在米国の公定歩合は何%?
          → 6.0%

【今回のサイト】 FRB:  http://www.federalreserve.gov/
         FOMC: http://www.federalreserve.gov/fomc/
         Selected Interest Rates: Historical data:
    http://www.federalreserve.gov/releases/H15/data.htm

【評価】★★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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Copyright 2000

第8回 完全失業率[top]

                        2004年3月30日更新
                        2000年5月26日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン                No.08
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新聞記事とイン
ターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第8回】 完全失業率

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最新失業率
2004年2月の失業率は5.0%. 失業者330万人
最新公表データは総務省の以下のサイトを参照してください.
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm
=================================

2000年4月28日の日経夕刊には,次のような記事がありました.

「総務庁が28日発表した3月の完全失業率(季節調整値)は4.9%と,過
去最悪だった2月と同水準になった.同時に発表した1999年度の完全失業
率は4.7%と過去最悪となった.」

失業率だから労働省かと思いますが,そうではなく総務省が担当しています.
なお,失業率と同時に発表される有効求人倍率は厚生労働省の管轄です.

総務省統計局のサイトは経済学部学生には必須ですから,覚えてください.

総務省統計局: http://www.stat.go.jp/

新規情報は,What's New コーナーにあります.

What's New: http://www.stat.go.jp/whatsnew/index.htm

この中から「4月28日労働力調査 平成12年3月分」を選びます.

4月28日労働力調査 平成12年3月分:
  http://www.stat.go.jp/data/roudou/200003/index.htm

少し日数が経過すると What's New から消えることがあります.その場合は,
統計データのコーナーから探します.

統計データ: http://www.stat.go.jp/data/index.htm

統計データコーナーの「50音順一覧」を調べます.

50音順一覧: http://www.stat.go.jp/data/guide/2.htm

ここから労働力調査を選びます.

★労働力調査: http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm

その調査調査結果の「月別結果」から「最新の結果の概要(速報)」を選びま
す.

最新の結果の概要(速報):
   http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm

ここに,「労働力調査(速報)平成12年3月結果の概要」があります.
このページが新聞発表の元となった資料です.

ポイントを整理しておきましょう.
・就業者=6345万人
・完全失業者=349万人
・完全失業率=4.9%

このページの下方には,エクセルのファイル一覧が掲載してあります.完全失
業率の月次時系列データは,次にあります.

★労働力調査 長期時系列データ:
http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm

完全失業率(1953年からの月次データ):
 http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/zuhyou/lt01-13.xls

上のURLをクリックするとエクセルファイルをダウンロードすることができ
ます.拡張子 .xls があるのはエクセルのファイルであることを表しています.

ついでに,主要国の失業率もダウンロードしてみましょう.

(関連資料)主要国の失業率:
  http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/zuhyou/054kuni.xls

日本,韓国,アメリカ,カナダ,イギリス,ドイツ,フランスの7カ国の失業
率のデータが1995年から整理してあります.
1999年の失業率を整理すると,次のようになります.

     %
日本  4.7
韓国  6.3
米国  4.2
加   7.6
英国  4.3
独  10.5
仏  11.2

他方,地域別の失業率は,「労働力調査 調査結果」内の「年平均」の完全失
業者,地域別を選びます.

地域別: http://www.stat.go.jp/data/roudou/2001n/index2.htm

近畿,南関東,九州は5%を超えていることがわかります.

-----------------
完全失業率とは?

完全失業率とは少し仰々しい言い方ですが,厳密に定義されているのでこのよ
うな表現になっています.英語では,unemployment rate あるいは jobless
rate といいます.
まず,15才以上の労働力人口は就業者と完全失業者に分けられます.このう
ち完全失業者とは次の条件をみたす人々です.
(1)調査期間である月末の1週間に収入をえる仕事をしていない.
   仕事をしない状態とはまったく仕事をしないか,1週間に1時間未満働
   いた人です.
(2)調査期間中に仕事を探しているか,あるいは過去の求職活動の結果を待
っている.
(3)仕事があればそれにすぐつく.
従って,1週間に1時間以上仕事をしていれば完全失業者には含まれません.
また,仕事をしていないが,求職活動をしていない人も完全失業者ではありま
せん.
次のように整理されます.
  -----------------------------------------------------------
                          ┌─従業者
                   ┌─就業者 ─┤
           ┌─労働力人口─┤      └─休業者
           │       │
   15歳以上人口 │       └─完全失業者
           │
           └─非労働力人口
-----------------------------------------------------------
(注)休業者とは,病気や休暇などで調査期間中にたまたま仕事をしていなか
ったが,賃金の支払いは受けている人々です.

完全失業率は完全失業者を労働力人口で割った値(百分率)です.
完全失業者および完全失業率の定義は以下で読むことができます.

日本労働研究機構,労働統計用語解説:
  http://www.jil.go.jp/statis/yougo/yougo.htm

いかにもお役所の文章といった体の用語解説で,ちょっと読みにくいのが難点
ですが読んでください.

完全失業率の定義は国によって微妙に違っており,まったく同じ定義ではない
ので比較する場合は注意する必要があることも心得てください.

各国の完全失業率の定義は次に整理されてあります.エクセルのファイルでダ
ウンロードできます.後者は,米国定義で99年2月の日本の失業率を計算し
直したらどうなるかを試算したものです.日本定義の失業率4.7%は,米国
定義では4.2%となるとの結果がでています.

日本労働研究機構,失業者の定義: 
      http://www.jil.go.jp/statis/4-8.xls

日本労働研究機構,日米の失業率の定義の違い:
      http://www.jil.go.jp/statis/databook/4-4.pdf

日本の失業率といえば,これまでは世界で最も低いと言われていたのですが,
日本経済の不況によって状況が一変してしまいました.アメリカの失業率は日
本のそれを常に上回っていたのですが,最近は逆転してしまいました.日米の
失業率が戦後初めて逆転したのは1998年の12月です.そのとき米の失業
率は4.3%,日本の失業率は4.4%でした.その後アメリカの失業率はさ
らに改善し,2000年4月の失業率は3.9%で,およそ30年ぶりの低水
準となっています.逆に日本はその後も悪化を続け,2000年3月で4.9
%です.

(補足)日本とアメリカの失業率は2001年11月に再び逆転し,アメリカ
の失業率の方が日本を上回っています.2002年5月の日本の失業率は
5.4%,アメリカの同月の失業率は5.8%です.

■総務省,初の都道府県別の完全失業率公表(97年から01年まで)
(発表日付2002.03.01)
http://www.stat.go.jp/data/roudou/2001n/index3.htm
http://www.stat.go.jp/data/roudou/2001n/zuhyou/ken01.xls

【sasayama seminar】
労働市場については,私の「マクロ経済学講義ノート 第15講労働市場」を
参照してください.

http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/macroecon/lecture15.html

完全失業率のグラフは,同じく「マクロ経済学講義ノート 付録B経済データ
」を参照してください.
総務庁の先の時系列データ「(参考資料)主要項目の季節調整値(TCI)時系
列データ(昭和50年〜)」内の完全失業率の月次データを元にエクセルで作
成した1975年から最近までの年次データのグラフです.

http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/unemployrate.gif

1989年のバブル崩壊後を底にして,その後失業率がぐんぐん上昇している
様子が明らかにみてとれます.日本経済が不況度を深めるにつれ完全失業率は
上昇していったことがわかります.1999年平均では4.7%に上昇してい
ます.

主要国の失業率のグラフは,同じく次をみてください.

http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/otherunemploy.gif

韓国の失業率が98年に急上昇しているのは前年のアジア通貨危機による影響
です.日本を除いた主な国では,近年失業率が低下傾向にあるのがわかります.

【労働経済白書】
2002年版 労働経済白書(要約) 最近の雇用・失業の動向とその背景:
  http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/02/index.html
2001年版 労働経済白書(要約) 情報通信技術(IT)の革新と雇用:
  http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/01/index.html

【知っていると便利】
☆総務省統計局のサイトでは,総務省で扱っていない経済統計についてはどこ
の省庁で扱っているかを教えてくれます.

「統計データ」のコーナーから「統計データ検索ガイド」を選びます.

統計データ検索ガイド: http://www.stat.go.jp/data/guide/index.htm

ジャンルごとに分かれています.例えば,「国民経済計算」を選ぶと,

国民経済計算: http://www.stat.go.jp/data/guide/index-07.htm

総務省で作成しているのは,産業連関表,他省庁では経済企画庁(現内閣府)
が国民経済計算年報を作成していることがわかります.

☆総務省統計局のサイトにはPSI(ポケット統計情報)という便利なコーナ
ーがあります.

PSI(ポケット統計情報): http://www.stat.go.jp/data/psi/

経済統計を中心に幅広く収集したデータがエクセル形式ファイルでダウンロー
ドできるようになっています.範囲が広い分,カバーしているのは数年間だけ
という欠点はあります.そのあたりがポケットという意味なのでしょう.

【用語解説サイト】
用語辞典がわりに簡単な意味を知りたい場合は,朝日新聞の「金融経済キーワ
ード」が便利です.

朝日新聞金融経済キーワード: 完全失業率
   http://www.asahi.com/market/keyword/980530.html

同じような用語解説は読売新聞にもあります.

読売新聞ON-LINEミニ時典: 完全失業率
   http://www.yomiuri.co.jp/minijiten/11980329.htm

読み比べてください.

■まとめ------------
・完全失業者とは,仕事がなく,かつ求職活動をしており,さらに職があれば
すぐ就職する人々だけを含める.
・完全失業者の調査は月末の1週間に行われる.
・日本の完全失業率は1990年代著しく上昇している.
・1999年の完全失業率は4.7%.
-------------------------------------

ぜひ,みなさんも,実際にサイトにアクセスして確認してください.

☆(上級者向け)総務省統計局のサイトにアクセスして,完全失業率のデータ
をダウンロードし,それをグラフにしてみなさい.

(注意)日数が経過してサイトにアクセスすると,それぞれのウェブサイトの
構成に違いがでてくることがあります.またURLが変更されている場合もあ
りますので,了解してください.
(アクセス日)2000年5月11日

------------------------------------------------------------
【統計Q & A】2002年5月の完全失業率は?
            → 5.4%

【今回のサイト】 総務省統計局: http://www.stat.go.jp/
         労働力調査:
         http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm
【評価】★★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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Copyright 2000

第9回 IMFの世界経済見通し[top]

                          2000年6月2日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン                 No.09
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みなさん,こんにちは.笹山です.
このメールマガジンは,国際経済学科の1年生開講科目「マクロ経済学1(笹
山)」の受講者をおもな対象者としています.
マクロ経済学に関連した内容を中心に原則として週1回金曜日に配信します.
新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新聞記事とイン
ターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第9回】 IMFの世界経済見通し

------------------------------------------------------------

2000年4月13日の日経新聞には,以下のような記事がありました.

「国際通貨基金(IMF)は12日,2000年春の世界経済見通しを発表し
た.今年の日本の実質国内総生産(GDP)成長率を0.9%とし,昨年秋の
見通しを0.6ポイント下方修正した.デフレ圧力が依然として払しょくされ
ていないというのが理由.」

国際通貨基金(International Monetary Fund: IMF)は,第2次世界大戦後の
世界の通貨制度の安定を目指して1945年に設立された国際機関です.日本
は1952年に加盟しました.戦後から1970年代初めまでの固定相場制度
の時代(ブレトンウッズ体制)では,為替レートの固定・維持が大きな役割で
した.1973年以降から今日までの変動相場の時代では,その役割も変化し,
各国経済の監視やアドバイスあるいは危機に陥った経済に対して融資を行うこ
とが主な任務となっています.1997年夏発生したアジア通貨金融危機にお
いてもIMFは大きな役割を担いました.

IMFの世界経済見通し(World Economic Outlook)はOECDの世界経済見
通しとともに,世界各国が注目している経済予測です.新聞では,主な国の成
長率予想と日本に関する部分だけが簡単に紹介されるだけですが,「世界経済
見通し」は大部なレポートです.
インターネットの発達により,われわれは,日本に居ながらにして,ワシント
ンで発表された IMF World Economic Outlook(WEO) の全文を簡単に入手でき
るようになったのです.われわれは,マスコミによる新聞報道より何十倍もの
原資料を発表元より直接,インターネットを通して,自分のコンピュータにダ
ウンロードできるのです.しかも無料で(電話代は別).

IMF: http://www.imf.org/

org はorganization です.米国にあるサイト(IMFの本部はワシントンにあり
ます)は,国名を示す略称はつきません.インターネット発祥の地アメリカの
いわば特権です.

新聞が引用したIMF WEO の全文は以下のアドレスにあります.
pdf ファイルで提供されています.全5章と付属資料のファイル2つ,合計で
7つのファイルに分割されています.目次だけは通常に表示されます.

IMF World Economic Outlook(WEO)(IMFの世界経済見通し)
  http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2000/01/index.htm

各章の見出しを整理しておきます.
-------------------
・Chap 1 Prospects and Policy Challenges
・Chap 2 The Ongoing Recovery in Emerging Market Economies
・Chap 3 Asset Prices and the Business Cycle
・Chap 4 How Can the Poorest Countries Catch Up?
・Chap 5 The World Economy in the Twentieth Century: Striking
Developments And Policy Lessons
Statistical Appendix
Part I
Part II
--------------------

Chapter 1 (1章)の中から日本に関する記述の一部をとりだしてみました.
読んでみましょう.後半部分がちょっと難しいかもしれません.

--------------------
Reenergizing the Japanese Recovery
The Bank of Japan is continuing to follow the "zero interest rate"
policy, which has been in place since early 1999. With the recovery
looking fragile, however, additional steps to ease liquidity seem
appropriate to provide further support to activity. The key to a
lasting recovery remains structural reform. Without thorough
financial and corporate restructuring the dismal growth record of the
1990s is likely to continue into the new century. Bank restructuring
continues under the framework established in late 1998, and recently-
announced bank mergers, together with "Big Bang" reforms, may help
catalyze a needed further reduction in capacity and improvement in
core profitability. But more needs to be done to address remaining
weaknesses, particularly with regard to smaller banks and the life
insurance sector, and to avoid delays in the reform process such as
the recent decision to delay by a year the return to partial deposit
insurance that had been planned for early 2001.
-----------------------
(大意)日銀はゼロ金利政策を継続しているが,日本の景気回復の見込みは脆
弱(ぜいじゃく,fragile)であり,さらなる流動性を供給する追加政策が必
要.景気回復が持続するために重要なのは構造改革である.金融と企業での再
構築がなければ90年代のみじめな低成長が21世紀にも続くことになる.銀
行業界の再構築と銀行の合併は「ビッグバン」改革とともに,過剰設備をそぎ落と
し,収益力の改善に寄与するかもしれない.今後は弱いとされる中小銀行と生
命保険分野でのさらなる改革が要求される.また当初2001年に予定された
ペイオフ解禁実施を1年遅らせるような,改革のプロセスの遅れは避けなけれ
ばならない.

次の transcript は IMF のエコノミストによる WEO の解説の記者会見の模様
を逐一記録した議事録です.こちらは,pdf ではありません.主任エコノミス
トの Michael Mussa 調査局長(それ以前はシカゴ大学教授)が登場していま
す(写真つきです).余談ですが,わたしが院生のころ彼の論文をよく読んだ
ものでした.なつかしい名前です.

transcript(記者会見の議事録)
  http://www.imf.org/external/np/tr/2000/TR000412.HTM

なお,pdf とは portable document format の略で論文をインターネットで配
布するときの標準フォーマットになっています.pdf ファイルをダウンロード
(自分のコンピュータにとりこむ)するには,Acrobat Reader という Adobe
社のフリーソフトウェアが必要です.今では,ほとんどのパソコンに初めから
入っているのでおそらく大丈夫でしょう.大学のパソコンにはすべてインスト
ールしてあります.自分のパソコンに Acrobat Reader がインストールしてな
い場合は,Adobe 社のサイトからダウンロードできます.

Adobe Systems(日本のサイト): http://www.adobe.co.jp/

IMF WEO による,主な国・地域の成長率予想は以下のとおりです.

-----------------------------------------------
     1999年 2000年 2001年
世界全体  3.3   4.2   3.9
G7諸国  2.8   3.3   2.7
日  本  0.3   0.9   1.8
米  国  4.4   4.4   3.0
ドイツ   1.5   2.8   3.3
英  国  2.0   3.0   2.0
フランス  2.7   3.5   3.1
イタリア  1.4   2.7   2.8
カナダ   4.2   3.7   2.7
アジア   6.0   6.2   5.9
中  国  7.1   7.0   6.5
-----------------------------------------------

成長率予想は実際むずかしいものです.結構はずれることの方が多いのです.
果たして,IMF の予想は的を射ているのでしょうか.単に予想の数字をみるだ
けでなく,本当は,WEO の本文を読んだ方が勉強になるのです.

それにしても,日本の成長率の見通しは低いですね.ちなみに,日本政府によ
る2000年度の目標成長率は1%です.こちらは政治的な思惑も含まれてい
るので,なおさらあてにはできません.

【追加情報】
OECDが5月30日に発表した世界経済見通しによれば,日本の2000年
の予想成長率は1.7%であり,IMFの予測(4月12日発表)を上回って
います.

OECD Economic Outlook: http://www.oecd.org/eco/out/eo.htm

IMFは予測を下方修正し,OECDは上方修正したことになるのですが,ど
ちらの見方が正しいかは,2000年の実績値がでた後にわかります.

【知っていると便利】
IMFのサイトでは,IMFの紹介が掲載されています.以下の2つを読めば
よいでしょう.

The IMF at a Glance: 
http://www.imf.org/external/np/exr/facts/glance.htm

What is the IMF?: 
 http://www.imf.org/external/pubs/ft/exrp/what.htm

IMFが発行している経済専門誌(ジャーナルと呼ばれます.研究者向け)が,
IMF Staff Papers です.PDFファイルで論文全文をダウンロードすることがで
きます.IMF Staff Papers Archiveは過去の論文をまとめたコーナーです.1
998年3月号から登録されています.

IMF Staff Papers: 
http://www.imf.org/external/pubs/ft/staffp/

IMF Staff Papers Archive:
 http://www.imf.org/external/pubs/ft/staffp/archive.htm

IMF Working Papers も同じようにダウンロードできます.Working Papers の
全文が提供されているのは1997年からです.

IMF Working Papers,Staff Papers,World Economic Outlook はすべて
Research at the IMF のコーナーにまとめてあります.

Research at the IMF: 
http://www.imf.org/external/pubs/res/index.htm

その他,IMF加盟国ごとに関連した情報,レポート,working papers 等が
整理されてあるコーナーがあります.それが Country Information です.

Country Information: 
http://www.imf.org/external/country/index.htm

日本のコーナーは次です.
Japan and the IMF:
http://www.imf.org/external/country/JPN/index.htm

IMFのサイトは充実していますが,統計コーナーがないのが残念です.IM
Fには IFS(International Financial Statistics) という有名な月刊の統計
集があるのですが,これは従来通り紙とCD-ROMのバージョンしかありません.

【用語解説サイト】
用語辞典がわりに簡単な意味を知りたい場合は,読売新聞の「ON-LINE
ミニ時典」が便利です.

読売新聞ON-LINEミニ時典: 国際通貨基金
   http://www.yomiuri.co.jp/minijiten/15950618.htm

■まとめ------------
・IMFは,日本経済が回復するかどうかは金融・企業面での構造改革が進む
かどうかにかかっているとしている.
・IMFによる2000年の日本の経済成長率の予想は0.9%
・IMFによる2000年の世界の経済成長率の予想は4.2%
・日本政府による2000年度の成長率の目標は1%
-------------------------------------

ぜひ,みなさんも,実際にサイトにアクセスして確認してください.

☆(上級者向け)IMFのサイトにアクセスして,World Economic Outlook
の第1章をダウンロードして,読んでみましょう.

(注意)日数が経過してサイトにアクセスすると,それぞれのウェブサイトの
構成に違いがでてくることがあります.またURLが変更されている場合もあ
りますので,了解してください.
(アクセス日)2000年5月31日

------------------------------------------------------------
【統計Q & A】IMFによる2000年の日本の経済成長率の予想は?
            → 0.9%
         IMFによる2000年の世界の経済成長率の予想は?
            → 4.2%

【今回のサイト】 IMF(International Monetary Fund)国際通貨基金:
          http://www.imf.org/
         IMF World Economic Outlook 2000:
   http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2000/01/index.htm
【評価】★★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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Copyright 2000

第10回 国際収支[top]

                          2000年6月9日発行
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マクロ経済学1 メールマガジン         No.10
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新聞によく登場する経済統計や専門用語を解説していきます.新聞記事とイン
ターネットの関連サイトを紹介するスタイルで進めていきます.
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【第10回】 国際収支

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2000年5月15日の日経夕刊には,以下のような記事がありました.

「大蔵省が15日発表した1999年度の国際収支状況(速報)によると,経
常黒字は前年度比16.8%減の12兆6208億円となり,3年ぶりの減少
に転じた.貿易・サービス収支の黒字が同17.9%減少したのが主因.」

記事によると,データソース(原データの作成,提供者)は「大蔵省」である
ことがわかります.

大蔵省のホームページは,経済関係では代表的なサイトの1つです.覚えてお
きたいサイトです.

大蔵省: http://www.mof.go.jp/

mof は Ministry of Finance の頭文字です.go は government を表します.
jp はもちろん Japan です.

大蔵省のサイトの「統計資料」コーナーから「国際収支状況」を選びます.

統計資料: http://www.mof.go.jp/siryou.htm

国際収支状況: http://www.mof.go.jp/1c004.htm

国際収支状況(速報)から「平成11年度中(概要)」を選びます.

平成11年度中(概要): http://www.mof.go.jp/bop/pgall11.htm

これが新聞発表の元となった原資料です.ほとんど数字だけからなる素っ気な
い文書ですが,これを理解するには,国際収支についての基礎知識が必要です.

【国際収支とは】
国際収支は,自国と外国との間で取り引きされる財・サービス・資本等を包括
的に整理した一覧表です.
国際収支は大きく「経常収支」と「資本収支」の2つに分かれます.「経常収
支」は,「貿易・サービス収支」と「所得収支」と「経常移転収支」からなり
ます.「資本収支」は「投資収支」と「その他資本収支」から構成されます.

特に「経常収支」と「貿易・サービス収支」が重要です.

それはなぜかというと,国際収支表はその作成の原理から,国際収支のすべて
の項目を集計すると貸方と借方が等しくなりすべてバランスします.従って,
全部を集計した国際収支をとりあげることは意味がありません.国際収支表の
どこで線を引いて見るかが重要になるのです.

国際収支全体を整理すると次のようになります.この新しい分類は1996年
から実施されています.昔の旧い分類で覚えた方は修正してください.
---------------------------------
経常収支(current account)
  貿易・サービス収支(trade in goods and services)
    貿易収支   ← ものの輸出入 (trade balance)
    サービス収支 ← サービス貿易 (services)
  所得収支     ← 投資収益が主 (income)
  経常移転収支   ← 送金,財関連の援助等 (current transfers)

資本収支(capital and financial account)
  投資収支     ← 直接投資,証券投資 (financila account)
  その他資本収支  ← 資本移転,資金援助等(capital account)
----------------------
外貨準備増減金(changes in reserve assets)
誤差脱漏(errors and omissions)
----------------------------------

英文表記は,大蔵省のホームページの表記に従いました.大蔵省の英語版ホー
ムページから「statistics」,「Balance of Payments」と選ぶと「平成11
年度中(概要)」と同じデータにたどりつくことができます.1999FYの
FYとは Fiscal Year の略称で,会計年度を表します.4月から始まり翌年
の3月に終わるのが日本の年度です.

Balance of Payments 1999 FY: 
    http://www.mof.go.jp/bop/p11all_a.htm

経常収支は,マクロ経済の貯蓄投資バランスから,次のようにとらえることが
できます(講義で説明済みです).

 経常収支 = 民間部門の貯蓄超過 -  政府の財政赤字
      = 国内の貯蓄 - 国内の投資

国内の貯蓄超過の分が経常収支の黒字となって現れるのです.逆に投資超過で
あれば,経常収支は結果的に赤字となります.

日本銀行による,国際収支統計の解説は次を参照してください.各収支につい
ての詳細な説明があります.

国際収支統計の解説(日本銀行):
   http://www.boj.or.jp/siryo/exp/exbs.htm

【国際収支のデータ】
1985年以降の国際収支の時系列データは日本銀行のホームページにありま
す.大蔵省のホームページにもその旨が記され,日銀へのリンクがはってあり
ます.実は詳しい国際収支のデータは日銀が管理しています.従来からある紙
媒体の『国際収支統計月報』は日本銀行発行です.

国際収支の時系列データは日本銀行のサイトにあります.国際収支のデータに
たどりつくには2とおりの道筋があります.1つは「時系列データの掲載内容
等について」のコーナーです.国際収支統計1から8まであります.どれか1
つをダウンロードするなら,「主要項目(経常収支,資本収支)」です.

時系列データの掲載内容等について:
   http://www.boj.or.jp/down/long/historic.htm

主要項目(経常収支,資本収支):
http://www.boj.or.jp/down/long/data/hkok1.txt

サービス収支: http://www.boj.or.jp/down/long/data/hkok2.txt

所得収支: http://www.boj.or.jp/down/long/data/hkok3.txt

経常移転収支: http://www.boj.or.jp/down/long/data/hkok4.txt

投資収支(資産): http://www.boj.or.jp/down/long/data/hkok5.txt

投資収支(負債): http://www.boj.or.jp/down/long/data/hkok6.txt

その他資本収支: http://www.boj.or.jp/down/long/data/hkok7.txt

経常収支(季節調整済):http://www.boj.or.jp/down/long/data/hkok8.txt

銀行等対外資産負債残高:http://www.boj.or.jp/down/long/data/hgin.txt

もう1つは,「時系列データ」のコーナーから国際収支統計を選ぶ道筋です.
上と同じテキストデータがあります.時系列データコーナーの利点は,国際収
支統計の解説があることです.

時系列データ: http://www.boj.or.jp/dlong_f.htm

国際収支統計: http://www2.boj.or.jp/dlong/bs/bs.htm

国際収支統計の解説:
   http://www.boj.or.jp/siryo/exp/exbs.htm

1985年1月から最近までの月次テキストデータをダウンロードすることが
できます.これを表計算ソフト・エクセルで開いて加工することができます.

1996年に新方式の国際収支表に移行して以来,国際収支は円表示だけにな
ってしまいました.また,新方式の国際収支表形式でさかのぼって作成してあ
るのは1985年までです.少なくとも1970年ぐらいまでさかのぼってほ
しいところなのですが,今のところ残念ながら日銀では発表していません.
従って,1984年以前の国際収支表と1985年からの国際収支表を断絶な
くつなぐことができないという問題があります.

【その他のサイト】
ジェトロ(JETRO,日本貿易振興会)のサイトにも国際収支のデータが部分的
ではありますが掲載されています.

日本の貿易統計・国際収支統計:
  http://www.jetro.go.jp/ec/j/trade/

1999年の国際収支(ドル建て):
  http://www.jetro.go.jp/ec/j/trade/bop1.xls

1999年の資本収支(ドル建て):
http://www.jetro.go.jp/ec/j/trade/bop2.xls

ドル換算レート算出法:
  http://www.jetro.go.jp/ec/j/trade/rate.htm

特徴はドル建て表示になっていることです.ただしデータは1996年からで
す.

【sasayama seminar】
国際収支の定義については,私のマクロ経済学講義ノート「第17講 開放経
済の分析」を参照してください.

http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/macroecon/lecture17.html

また,貯蓄投資バランスの観点からとらえた経常収支については,講義ノート
「第4講 ISバランス」を参照してください.

http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/macroecon/lecture04.html

日本の国際収支のグラフは,同じく講義ノートの「付録B経済データ」を参照
してください.

  http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/bop.gif

  http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/bop2.gif

  http://www.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/bop3.gif

最初のグラフは新方式による1985年以降の経常収支と資本収支の暦年デー
タをグラフにしたものです.この期間を通して経常収支は恒常的に黒字を,資
本収支は赤字を記録していることがわかります.しかも,両者は横軸を中心に
して線対称形になっていることにも気づくことでしょう.最近の経常収支の黒
字は約12兆円,逆に資本収支はほぼ同額の赤字を記録しています.

これは決して偶然のことではなく,国際収支の定義からいえることなのです.
つまり一国の経常収支の黒字は,結局は海外への投資として環流していくので
す.資本収支の黒字とは,自国への資本流入超過を,赤字は海外への流出超過
を意味します.経常収支が黒字なら資本収支は赤字,経常収支が赤字なら資本
収支は黒字になります.ともに黒字あるいは赤字というのはありえません.ア
メリカは経常収支は赤字ですが,資本収支は黒字です.

2つめのグラフは旧方式に基づく経常収支等のグラフです.1970年代以降
日本が経常収支の赤字を記録したのは第一次石油ショック後の1974年と第
二次石油ショック後の1979と80年の2つの期間だけであることがわかり
ます.また,73年以降の変動相場の時代になって経常収支の黒字が大きくな
っていることもわかります.

3つめのグラフは貿易・サービス収支のGDPに対する比率と円レートをグラ
フにしたものです.比率でみても80年代前半に貿易・サービス収支の黒字が
急激に増加していることがわかります.これは80年代前半の米レーガン政権
による高金利・ドル高が結果として円を相対的に安くし,それが日本の貿易黒
字を増加させました.85年9月のプラザ合意後の急激なドル安・円高により
日本の貿易・サービス収支の黒字も減少したことが見てとれます.

【用語解説サイト】
用語辞典がわりに簡単な意味を知りたい場合は,ワシントンポストの「
Business Glossary」が便利です.

Washington Post Business Glossary: current account balance
trade deficit
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/business/specials/glossary/
index.html

■まとめ------------
・1996年から日本の国際収支表は新方式に移行した.
・国際収支作成の原理から,経常収支が黒字(赤字)なら資本収支は赤字(黒
字)になる
・マクロ経済の貯蓄投資バランスから,経常収支は国内の貯蓄超過に対応して
いる.
・日本の経常収支は2つの石油ショックの時期を除いて,70年代以降恒常的
に黒字を記録している.
・最近の日本の経常収支の年間の黒字は約12兆円(1200億ドル).
-------------------------------------

ぜひ,みなさんも,実際にウェブサイトにアクセスして確認してください.

☆【上級者向け課題】
日本銀行のダウンロードコーナーから,国際収支の主要項目(経常収支,資本
収支)のデータをダウンロードし,それをエクセルのデータに変換しなさい.
次にエクセルで経常収支と資本収支のデータを折れ線グラフに作成し,両者の
関係を考察してみなさい.

(注意)日数が経過してサイトにアクセスすると,それぞれのウェブサイトの
構成に違いがでてくることがあります.またURLが変更されている場合もあ
りますので,了解してください.
(アクセス日)2000年6月6日

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【統計Q & A】1999年の日本の経常収支の黒字は?
          → 約12兆円

【今回のサイト】 大蔵省国際収支状況: http://www.mof.go.jp/1c004.htm
         日本銀行国際収支統計: 
            http://www2.boj.or.jp/dlong/bs/bs.htm
          
【評価】★
    ★★

私の評価の基準:最高が★★★,次が★★,最後が★です.
        ★1つは普通という評価です.
      データが十分提供されているかどうかが評価のポイントです.
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【著者】 笹山 茂
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【第11回】 IT

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2000年6月6日の日経夕刊には,以下のような記事がありました.

「米商務省は5日,情報技術(IT)が米経済に及ぼす影響などを分析した「
デジタル・エコノミー2000年版」を発表した.IT産業は1995ー98
年の平均物価上昇率を0.5ポイント押し下げた.IT産業の生産性向上が物
価抑制につながったと分析している.IT産業の米GDPに占める比率は99
年で8%であるが,経済成長率に対する寄与は95−99年の平均で30%と
推定している.(要約)」

日経の記事によると,データソース(原データの作成,提供者)は「米商務省
」であることがわかります.
商務省(U.S. Department of Commerce)のホームページを探して「デジタル
・エコノミー2000年版」のオリジナル資料をダウンロードしてみましょう.

商務省(U.S. Department of Commerce): http://www.doc.gov/

商務省によるデジタル経済あるいは e-commerce(electronic commerce,イー
・コマース,電子商取引)の報告書は1998年から発表されています.最初
の2年間は Emerging Digital Economy, Emerging Digital Economy II とい
うタイトルでしたが,2000年版からは Digital Economy 2000 に変わり,
Emerging が消えました.Robert Shapiro による2000年版の序文によれば,
もうすでに emerging の段階は終了して本格的なデジタル経済に入ったという
認識のためです.

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The first two reports were titled, The Emerging Digital Economy. This
third edition has a new title, because the digital economy and
digital society are no longer "emerging." They are here. Americans
have definitively crossed into a new era of economic and social
experience bound up in digitally-based technological changes that are
producing new ways of working, new means and manners of communicating,
new goods and services, and new forms of community.
(Robert Shapiro, Introduction, Digital Economy 2000, June 2000)
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Digital Economy 2000を含めて,これまでの商務省の報告書は同省の
ecommerceサイトから全文を pdf ファイルでダウンロードすることができます.

商務省 U.S. Electronic Commerce Policy:
   http://www.ecommerce.gov/

Emerging Digital Economy(April 1998):
   http://www.ecommerce.gov/emerging.htm

Emerging Digital Economy II(June 1999):
   http://www.ecommerce.gov/ede/

Digital Economy 2000(June 2000):
   http://www.esa.doc.gov/de2000.pdf

【Digital Economy 2000の要点】
Digital Economy 2000 の主な論点を整理しておきましょう.

・アメリカ経済の拡大は2000年で10年目にはいり,減速するきざしはな
い.労働生産性は2倍になり,同時にインフレと失業率は低い水準にある.

・IT産業が米国のGDPに占める割合は2000年で8.3%であるが,1
995年から99年の経済成長率の約1/3に貢献している.

・90年代後半の米国の労働生産性の増加のうち半分以上はIT投資関連が寄
与した.ただし,医療やサービス産業では,IT投資が増えたにもかかわらず
生産性が低下した.

・情報技術(IT)関連の財とサービス価格の低下は,1994年から98年
の間に米国の物価水準を2.3%から1.8%へと0.5ポイント押し下げた.
IT価格の低下は90年代に後半に加速し,96年から98年の間では平均で
8%も低下した.

・コンピュータ価格は1987年から1994年の間に年平均で約12%低下
し,95年から99年の間では年平均26%も低下した.通信機器の価格は年
2%低下した.

・IT機器やソフトウエアへの投資は1995年から99年の間に2倍以上も
増え,2430億ドルから5100億ドルへ増えた.そのうちソフトウェア部
門は同期間中に820億ドルから1490億ドルへ増加した.

・1999年第四四半期では,米国での企業と消費者間のオンライン取引(B
to C, business-to-consumer, B2Cとも省略されます)は53億ドルに達し,
全小売り販売額の0.64%に相当する.

・ニューエコノミー(下の解説を参照してください)は,コンピュータのハー
ドウェアとソフトウェアの発展だけでなく,急速に低価格化が進む関連電子機
器の接続によって形成されている.特にインターネットは大企業だけでなく中
小企業にも企業間(B to B, business-to-business, B2Bとも省略されます)
での電子商取引の機会を広げた.

・情報技術(IT)の発展とインターネットの普及は個人にも大きなメリット
を与えている.2000年では,世界中で3億400万人がインターネットを
利用していると推定される.99年に比べて80%の増加である.
(注)日本では2000年2月現在で,1937万人がインターネットを利用
しているとの調査結果があります.

・1994年から99年の間で,米国のR&D(研究開発)投資は約6%増加
したが,増加率の37%はIT産業で占められている.98年のIT産業の投
資は448億ドルであり,企業全体のR&D投資の1/3を占める.

・1998年で,IT関連産業で働く労働者数は740万人であり,米国の全
労働者の6.1%である.ソフトウェアやコンピュータ産業の労働者は92年
の85万人から98年には160万人に倍増した.

・米国はIT産業が発達しているが,IT財の貿易では赤字国であり,199
9年では66億ドルの貿易赤字を記録している.この理由は米国企業は米国国
内から輸出するよりも海外の子会社から輸出する方が多いからである.97年
での米国の海外子会社からの輸出は1960億ドルであり,米国国内からの輸
出は1210億ドルと推定されている.

・米国国内でもITの広まりにはばらつきがある.インターネットに繋がって
いない家庭も多い.ITを持つ者と持たざる者との間に生じるデジタル・デバ
イド(digital divide,情報格差)の問題もある.
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ポイントは,1995年以降の米経済の高成長率,高労働生産性,低インフレ
率にIT(情報技術)が大きく貢献しているということです.

【ITとは】
IT(Information Technology,情報技術)とは,情報を作り出したり,並べ
替えたり,貯蔵したり,移動したりするコンピュータのハードウェア,ソフト
ウェア,それらをつなぐネットワークであるインターネット,情報通信関連分
野で主に使用される技術をさして言う総称です.IT産業とか,IT革命とい
うような表現で使われます.2000年の沖縄・九州サミットの主要テーマも
ITです.「Digital Economy 2000」の3章にIT産業の一覧があります.

【E-Commerceとは】
E-Commerce(電子商取引)とは,インターネット技術を利用して行われる商取
引ととらえるのが比較的一般的な見方です.企業間同士の取引を B to B(あ
るいは B2B),企業と消費者との間の取引を B to C(あるいは B2C)と呼び
ます.

【ニューエコノミーとは】
ニューエコノミー(The New Economy)とは,情報技術産業部門によって成長
が続いている1990年代後半のアメリカ経済の状態を特徴づける表現として
使われています.情報技術部門の生産性の上昇が他の部門にも波及し,経済全
体としての生産性が増し,高雇用と高賃金水準を実現させています.その一方,
コンピュータ関連製品の価格の大幅な低下により経済全体の物価水準(インフ
レーション)は低い水準で安定しているのがニューエコノミー論の特徴です.
IT関連産業の成長により米の株高が引き起こされているという側面はありま
すが,株高はニューエコノミーを構成する要素ではありません.最も重要な要
因は,労働者1人あたりどれだけの生産物を生産したかを測る概念である生産
性が高くなっているかどうかです.

このニューエコノミー論については,すべてのエコノミストが完全に賛同して
いるわけではありません.米ノースウエスタン大学のゴードンは高い生産性を
実現しているのはコンピュータ産業だけであり,他の産業には波及していない
のではないかと論じています.また,マサチューセッツ工科大学(MIT)の
クルーグマンは,ネットワークが必ずしも「収穫逓増」をもたらすわけではな
いことを示し,「Alas, the fact that a story is entertaining doesn't
mean that it is true.」と楽観的なニューエコノミー論に警告を発していま
す.

以下はニューエコノミー論に関する論文です.最初の3つは専門的な論文であ
り,pdf ファイルでダウンロードできます.クルーグマンの小論は短いので読
むには手ごろかと思います.

・Gordon, Robert(Fall,2000),"Does the 'New Economy' Measure Up to the
Great Inventions of the Past?"
http://faculty-web.at.northwestern.edu/economics/gordon/GreatInvention.pdf

・Jorgenson, D.W. and K.J. Stiroh(May,2000). "Raising the Speed Limit:
U.S. Economic Growth in the Information Age"
http://post.economics.harvard.edu/faculty/jorgenson/papers/dj_ks5.pdf

・Oliver, S. and D. Sichel(May,2000). "The Resurgence of Growth in
the Late 1990s: Is Information Technology the Story?"
http://www.federalreserve.gov/pubs/feds/2000/200020/200020pap.pdf

・Krugman のエッセイ:Networks and Increasing Returns:A Cautionary
Tale
  http://web.mit.edu/krugman/www/metcalfe.htm

【日本の電子商取引についての報告書】
米の「Digital Economy 2000」のような継続的に発表されている本格的な調査
報告書は日本にはありませんが,通産省とアンダーセン・コンサルティングの
共同調査がよく引き合いにだされます.以下の文書は調査報告書全文ではなく
スライド形式で作成されたものです.B2Bは企業間の,B2Cは企業-消費者間の
電子商取引を表す略称としてよく使われます.

・「日米電子商取引の市場規模調査ーインターネット技術を用いた電子商取引
規模の予測ー」1999年3月31日 通産省,機械情報産業局電子政策課:

  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/index.htm

日米電子商取引規模比較:
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld004.htm

日本のB2C電子商取引市場規模(現状):  
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld009.htm

日本のB2C電子商取引市場規模(予測):
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld010.htm

日本のB2C電子商取引市場規模(予測:商品・サービスセグメント別):
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld011.htm

B2C電子商取引市場規模の日米比較(全体):
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld012.htm

日本のB2B電子商取引市場規模(現状):  
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld015.htm

日本のB2B電子商取引市場規模(予測):
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld016.htm

日本のB2B電子商取引市場規模(予測:商品・サービスセグメント別):
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld017.htm

日本のB2C電子商取引市場規模(予測:商品・サービスセグメント別の電子商
取引比率):
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld018.htm

B2B電子商取引市場規模の日米比較(全体):
  http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/sld019.htm
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報告書の結論を整理しておきましょう.

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         日本              米国
   1998年   2003年   1998年   2003年

B2C  650億円  3.16兆円  2.25兆円  21.3兆円
   (0.02%) (1%)    (0.4%) (3.2%)

B2B  8.62兆円 68.4兆円  19.5兆円  165.3兆円
   (1.5%) (11.2%)  (2.5%) (19.1%)
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(注1)( )内は電子商取引化率. 1ドル=120円で換算
(注2) 2003年の値は予測値

この報告書によれば,1998年の日本のB2C市場規模は約650億円であり,
B2B市場規模は約8兆6200億円です.日米の電子商取引市場の規模を比較
すると,B2Cでは,日本は米国の35分の1,B2Bでは2分の1です.上記サイ
トの日米比較のグラフを見ると,その差が直観的にわかります.

なお,この報告書は通産省の「白書・報告書」のコーナーに掲載されてありま
すが,そのURLからわかるように,実際は,財団法人日本情報処理開発協会の
サイトにあります.

通産省,白書・報告書の「各種報告書」コーナー: 
    http://www.miti.go.jp/report-j/g300001j.html

日本情報処理開発協会: http://www.jipdec.or.jp/

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上の報告書の継続版が「電子商取引推進協議会」からでています.これは日本
の消費者向け(B to C)電子商取引市場を1999年から2004年までを展
望した調査報告書です.

電子商取引推進協議会:
  http://www.ecom.or.jp/

・「日本の消費者向け(BtoC)電子商取引市場ー1999年の現状と20
04年までの展望ー調査結果」:
  http://www.ecom.or.jp/qecom/seika/press/000119/index.htm

【関連雑誌紹介】
・「IT時代の日本経済入門」
『週刊東洋経済』2000年6月10日号 東洋経済新報社

『週刊東洋経済』最近のバックナンバー:
  http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/kokuji/index.html

日本の出版社はインターネットで情報を公開することを極力避けています.『
週刊東洋経済』のサイトはありますが,目次しか掲載していません.インター
ネットで情報公開すると雑誌の売り上げが減ると考えるからでしょう.従って,
残念ながら,雑誌の内容はインターネットで読むことはできません.図書館の
雑誌コーナーで読んでください.

・WIRED Magazine: 
   http://www.wired.com/wired/

1993年3月号からバックナンバーを読むことができます.
1999年6月号(vol.7 No.6)の Wired index を参照してください.
Wired が作成した Wired Index に含まれるネット関連企業40社の概要がわ
かります.

・HOT WIRED日本語版サイト:
   http://www.hotwired.co.jp/

ワイアードと読みます.線(インターネット)でつながっているという意味で
す.アメリカのインターネット関連の新しいタイプの雑誌です.日本語版もあ
ったのですが,残念ながら数年で廃刊になってしまいました.ただし,日本語
版のホームページは存続しています.こちらは,インターネットで雑誌の内容
が公開されています.このあたりにも日本とアメリカの出版界によるインター
ネット戦略の違いがはっきりでています.

【用語解説サイト】
用語辞典がわりに簡単な意味を知りたい場合は,WIREDの「Encyclopedia of
the New Economy」が便利です.

・WIRED, Encyclopedia of the New Economy:
   http://hotwired.lycos.com/special/ene/index.html

■まとめ------------
・1995年以降の米経済は高成長,高生産性,低インフレを示しているが,
これらはIT(情報技術)の発展によるものである.
・1995年から99年の米国の経済成長率の約1/3はIT産業による貢献
である.
・米のコンピュータ関連産業の生産性上昇は明らかであるが,他の部門まであ
まねく広がっているかどうかはいまだ証明されていない.
・米のニューエコノミー論については懐疑論もある.
・電子商取引については,日本は米国に大きく遅れをとっている.
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ぜひ,みなさんも,実際にウェブサイトにアクセスして確認してください.

☆【上級者向け課題】
米商務省のecommerceサイトから,Digital Economy 2000 をダウンロードし,
その要約である「Executive Summary」を読んでみよう.さらに余裕があれば
約80ページからなる本文も読んでみよう.

(注意)日数が経過してサイトにアクセスすると,それぞれのウェブサイトの
構成に違いがでてくることがあります.またURLが変更されている場合もあ
りますので,了解してください.
(アクセス日)2000年6月15日

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【統計Q & A】2003年の米と日の電子商取引(B2C)の規模予測は?
          → 米国:約21兆円
            日本:約3兆円

【今回のサイト】 米商務省Electronic Commerce Policy:
            http://www.ecommerce.gov/

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【発行】 熊本学園大学 経済学部 国際経済学科
【著者】 笹山 茂
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Copyright 2000

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