アジア通貨危機(1997年7月)

アジア通貨危機は1997年7月,タイの通貨バーツに対する投機売りで幕を開けた.タイを震源地として発生した通貨危機はタイと共にASEAN4と呼ばれるインドネシア,マレーシア,フィリピン,さらにはシンガポール,韓国へと次々に波及していき,通貨危機から各国の金融危機へと拡大していった.

1997年のアジア通貨危機は,従来型の通貨危機とは異なる要素を含んでいた.国際収支の悪化から外貨準備が底をつき投機アタックにより通貨危機が発生するという第一世代型の危機でもなく,通貨の切り下げ期待そのものが通貨危機・金融危機を引き起こすという自己実現型の第二世代モデルでも十分説明することはできなかった.

事実上米ドルにペッグして過大評価されていた通貨が,短期資本の急激かつ大幅な流出によって大きく価値を下げた.対外短期債務が比較的大きいインドネシアや韓国がより大きな影響を受けた.金融機関のモラルハザードが安易な信用拡大をもたらした側面も指摘されている.通貨危機から始まり,国内の金融危機に発展していったことも特徴.このころ,日本は北海道拓殖銀行(11月17日)や山一証券(11月22日)の破綻でアジア各国を救済するどころではなかった.


熊本学園大学公開講座 2003年11月12日(水)


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