ランダムウォーク

y(t)= 定数項 + φ* y(t-1)+ 攪乱項(t)

1次の自己回帰モデルの係数φ=1の場合をランダムウォーク(random walk)という.
為替レートの場合で書けば,次のようになる.

円ドルレート(t)= 円ドルレート(t-1)+ 攪乱項(t)

今日の円相場は,昨日の円相場に今日発生する攪乱項を加えた値に等しくなる.昨日の円相場はわかっているが,今日の攪乱項は確率変数であり,この攪乱要因をだれも正しく予測することはできない.従って,今日の円相場もだれも正しく予測することはできない.

為替レートや株価がランダムウォークに従っているとするならば,誰もそれらの明日の値を正確に予測することはできない.予想が当たったとしたらそれは単なる偶然にしかすぎない.

今日と昨日の値の差である撹乱項がホワイトノイズであるということは,残差に自己相関(昨日が円高(安)なら今日も円高(安)という関係)がないことを意味し,今日の円相場は過去の相場に含まれている情報をすべて含んでいるという意味で効率的であるとみなすことができる.このような考え方を「効率的市場仮説」 (efficient market hypothesis)という.ランダムウォークは,この効率的市場仮説の考え方に通じる見方.

他方,残差に自己相関がある場合には,今期の値にすべての情報が含まれておらず,効率的でないということになる.このような場合には過去のデータを基にして将来を予測する,いわゆる罫線分析家(チャーチストと呼ばれます)が活躍する余地があるといえる.

今期と前期の円ドルレートの自然対数値を計算してその
差をとり,これらのデータをグラフにして,それがホワイトノイズになっているかをチェックする.結論を言えば,円相場の収益率は,厳密な意味ではホワイトノイズの条件を満たしていないというのが現在の大方の見解である.

ホワイトノイズのグラフの例:


熊本学園大学公開講座 2003年11月12日(水)


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