1.CALSの概要と移り変わり

CALSとは…
調達から設計、生産、運用管理、保守に至る製品のライフサイクルに関する情報を統合データベースで一元管理し、各工程をサポートしようという米国のビジョンを指す。


CALSの略は3度変化

簡潔な言葉で的確に定義することが極めて難しいと同時に、CALSの概念自体が変化


CALSの根源

日本語訳

1985

Computer Aided Logistic Support

全産業的電子システム

1987

Computer−aided Acquisition and Logistic Support

生産・調達・運用支援
統合システム

1993

Continuos Acquisition and Life-cycle Support

生産・調達・運用支援
情報システム

1994

Commerce At Light Speed

継続的な調達と
製品ライフサイクルの支援




CALSの起源は1985年9月25日、米国国防総省内においてCALSはComputer Aided Logistic Supportとして ロジスティクやメンテナンスといった、軍隊における後方補給支援活動をコンピュータにより効率的に行うために設定された規定である。 その概念が、資材調達(Acquisition)まで適用されるようになるにつれ、その活動の領域をより正確に記述するために、1988年には “Acquisition(調達)”が加えられ、Computer−aided Acquisition and Logistic Supportに変えられた。

 CALSに資材調達業務が加えられ、国防総省への納入業者としての防衛産業に準拠することが義務づけられたことにより、 民間企業にも浸透していく。それは徐々に複雑な機器、部品構成の多い製品、すなわち航空・宇宙産業などの複雑な調達・ 部品補給・メンテナンス業務にも広がるようになり、一般企業にもCALSが広がった。これにより、1993年Continuos  Acquisition and Life-cycle Supportという新しい解釈が生まれた。ここでは設計・製造など技術関連の業務プロセス全般を ネットワークで接続し、電子データ交換を実現する。各プロセスがネットワークでつながることにより、営業と製造、設計と製造、 マーケティングと製造は緊密な関係のもとで業務を遂行することができるようになる。そして様々なデータを共有しながら業務を 進めることにより、無駄の排除、意思決定の迅速化、業務の高度化(高付加価値化)が実現され、複数部門にまたがる業務の抜本的改革、 リエンジニアリングが達成されるのである。

 その後、EDI(Electric Data Interchange 電子データ交換)、受発注などにおける帳票類の交換に世界各国で積極的に 行われているものが、CALSと合体することで、企業内外のデータ交換の電子化は大きく進むことになり、それに伴って期待できる 派生効果は莫大となる。例えば電子商取引や企業間のデータベースを企業間のネットワークで統合することによる各企業の工程の統合 (EI:Enterprise Integration企業統合)や、さらにその延長線上として、各企業が特定の機能のみを受け持ち、ネットワーク全体として 一つの企業活動を実行する「バーチャルコーポレーション(仮想企業)」が実現されるようになった。こうした状況の中で、CALSの 政府の公式な活動は国防総省から商務省および商務省管轄のNIST(National Institute of Standard and Technologies 標準技術局) に移り、EDIとCALSを統合した形態で標準化活動が進められるようになった。また、産業界でもCALSの活動範囲も広がり、米国以外にも 世界の各国で民間企業、政府機関を取り込んでCALSの活動を行うことが1994年に宣言された。これらのことによ、「国防総省の技術関連である」 というイメージのCALSに一般商取引という意味合いを含むためにCommerce At Light Speedと当て語を変えることになった。

戻る    次のCALSの適用へ