ネットワーク形成ゲーム理論を概説すると次のようになります。複数のプレイヤー(個人や、企業、国家など)が存在し、各プレイヤーは自分以外のプレイヤーとリンク(友好関係や貿易協定など)を結ぶことにより、リンク形成利得W(利益、収入)を得ることができ
ます。しかしながら、リンクを維持(もしくは形成)するにはリンク維持費用
(交際費、通信費などと考えればよい)が必要となるため、利得と費用を比較しながら各プレイヤーは自分の利得を最大にするようにリンクを形成して
いきます。ネットワークから得られる利得とその維持費用に応じて、様々な形状のネットワークが形成されます。リンク形成利得はリンクを通じて分配され
ますが、その価値はリンクを1つ経由するごとに減少します。シミュレータでは、このリンク形成利得の残存率をδ(0≦δ≦1)で表してい
ます。 |
たとえば、図のようにAさんはBさんとCさんの2人と、CさんはAさんとだけ、BさんはCさんとだけリンクを形成しているとします。 |
|
このとき、AさんはBさんとCさんからそれぞれ直接リンクを通じてδの割合の利得を得ることができます。BさんとCさんもAさんからは直接リンクを通じてδの割合の利得を得
ます。しかし、BさんとCさんとは直接リンクではつながっておらず、Aさんを仲介した間接リンクでつながってい
ます。この場合、BさんはCさんからリンク形成利得を得ることができますが、Aさんを仲介してその利得を得るため、δ^2(δ^2≦δ)の割合の利得しか得られない。Cさんも同様で
す。たとえば伝言ゲームを考えるといいでしょう。情報が他人に正確に伝わる確率をδとすると、1人を仲介して正確に情報が伝わる確率はδ^2となり、仲介する人数が多いほど正確に伝わる確率は減少
します。 |
しかし、間接リンクは直接リンクと比較して得られる利得は少なくなるものの、リンク形成費用はかかりません。よって、間接リンクから得られる利得が大きい場合には、リンク維持費用を支払ってまで直接リンクを形成しようとはし
ません。各プレイヤーはどの相手とリンクを形成するのが望ましいのかを戦略的に判断してリンクを形成して
いきます。 |