熊本市の西方、金峰山(きんぽうざん)山麓にある洞窟。うっそうと茂る樹木におおわれ、神秘的な霊場として知られる雲巌禅寺(うんがんぜんじ)の裏山にあり、洞窟内には岩戸観音(いわとかんのん)の名で知られる観音像が安置されています。晩年の5年間を熊本で過ごした宮本武蔵(みやもとむさし)が、この洞窟にこもって兵法書「五輪書(ごりんしょ)」を著したことは、あまりにも有名。霊巌洞の歴史は寺より古く、いい伝えによれば異国から観音像を運んでいるときに舟は転覆しましたが、観音像だけは板にのって流れ着き、霊巌洞に安置されたといいます。この洞窟には武蔵だけでなく、平安期の歌人・桧垣(ひがき)も訪れています。雲巌禅寺から霊厳洞に至る岩山を削った細道には、五百羅漢が安置されており、さまざまな表情を見せてくれます。