アメリカのメディアの関心は非常に高いんですね。というのは夕べのABCテレビのネットワークニュース(1995年11月7日)のトップで扱われましたし、それから今日のニューヨーク・タイムズの朝刊(11月8日)、このように一面に大きく写真が載っている訳ですね。この写真はアメリカには非常に異様に感じられるわけです。というのは、アメリカではこういう形で被告の護送をしないわけですね。私の知り合いのアメリカ人も「日本ではいつもこういう形で被告の身柄を護送するのか」と、何かそのお巡りさんたちがよってたかって、その被告をいじめているように印象さえする。だから日本側というか、沖縄県警の善意がストレートに伝わっていかないという訳ですね。しかも、この映像にさきほどの家族の記者会見がoverlapして (重なって) 伝えられますというと、もう事実関係というものを乗り越えて情念の世界に入ってしまうような気がするわけですね。ちょうどロス暴動あるいはO. J. シンプソン裁判で見られたような大衆心理、めらめらと燃え上がってくるような大衆心理、に発展してしまう、しかねない、そういう恐れを感じます。
ビデオには出てこなかったのですけれども、三人の母親の一人は「うちの息子を狼に渡してしまった」という発言もありました。
また家族立ちの間には日本の法廷では公正な裁きが受けられるはずがない、という考え方が、もう固定観念になってしまっているという感じさえします。そしてその記者会見の場では、その三人の息子たちを守るために募金運動を始めるということを名言していまして、つまり自分たちで雇ったアメリカ人弁護士を沖縄に派遣して守るんだと、こういうことを言っているわけですね。
今のところそうした家族たちの怒りというのは、息子たちを見捨てたかっこうになっているアメリカ軍、あるいはアメリカ政府に向けられている訳ですけれども、これがいつか、日本、あるいは日本人に向けられてくるかも知れない、そういった恐れさえ感じます。
久米宏氏のコメント