アイデンティティーについて

  1. 文化の定義とこのテーマの関係について
    1. 「ある程度共有された必然性のない当たり前」のなかの「 ある程度共有された」は「だれか」を前提にしている
    2. 「アイデンティティー」について考えることはその「だれか」について考えることである
    3. このことは「外国人だから」などのような思い込みや差別を避ける上で大事だと思う
  2. 「アイデンティティー」という言葉の意味
    1. 日本語では「同一性」と訳されることが多い
    2. 英語には「Please identify yourself」かと「Can you identify him」などのような言い方がある
    3. つまり、identityに関する話は「だれ」に関する話
    4. この授業では次のように定義する
      アイデンティティーは属性を構成要素とする「だれか」に関する観念である
      例えば
      • 「私はアメリカ人です。」
      • 「あなたは学生です。」
  3. 属性とアイデンティティー:自分のアイデンティティーを表す図を作ろう
    1. まず、配った紙を縦に机において、真ん中に線を書いて、下半分のところに、思いつくだけの自分の属性を書いてください
      例えば
      • 性別
      • 年齢・世代
      • 職業
      • 体の特徴
      • 家族と関係
      • 趣味
      • 大事にしている価値観
      • 性格の特徴
      • などなど
    2. 次に
    3. 最後に、それぞれの円の中の属性の「意味」について考えてみてください
      • 例えば、「学生」がその属性の一つだったら、自分にとって「学生」であることは何を意味するか
        • 遊び
        • 部活
        • 友達作り
        • 自分探し
        • 勉強
        • 就職のための手段
      • こうして、属性の「意味」に関する解釈についてさまざまで、人によって異なることがある
    4. 要約:「アイデンティティー」は属性の組み合わせやそれぞれの重要度や意味によって決まる
  4. アイデンティティー摩擦:「自己のアイデンティティー」と「他人から見たアイデンティティー」とのずれ
    1. 発想
      • 「自己のアイデンティティー」:今、図で表したもの
      • 「他人から見たアイデンティティー」:他人があなたを見て、頭の中で描く図のようなもの
      • 両者との間のずれを感じたときに、相手は「自分をことを理解していない」と思う
    2. 二種類のずれ
      • 属性の重要度をめぐるずれ
        例えば
        • 「父親」と「外国人」
        • 「ミュージシャン」と「障害者」
        • 「起業家」と「女性」
        • 「思慮深い人間」と「子ども」
        • こういう摩擦は頻繁におこるが、現時点では適切な呼び名がない。当分の間「属性の重要度をめぐる意識のずれ」や「属性の重要度摩擦」とでも言おう
      • 属性の意味をめぐるずれ
        例えば
        • 学生:「まじめに頑張っている」と「遊ぶ人」
        • 外国人:「外国出身の住民」と「一時的なお客さん」
        • この種類のずれや思い込みは「固定観念」という言葉で指摘されてきた
    3. アイデンティティー摩擦の避け方・解決方法:上記の摩擦の根底に「思い込み」があるから、考え込もうとすること
      • 属性の重要度
        • 複数の属性を意識しようとする:一つしか意識しないと「思い込み」を避けることができない
        • 自分が相手を見たときに一番意識する属性以外の属性が相手にとって一番重要かも知れないので、その可能性について考える
      • 属性の意味
        • 属性をめぐる解釈についてあれこれ考えようとしながら、交流する
        • どの解釈が一番適切かに関する結論を留保する
    4. 差別とアイデンティティー
      「差別」というのは一つの属性で人間を振り分けること
      • 属性の重要度
        • 一つの属性のみを通して人間見る場合は人間として見ていない
      • 属性の意味
        • 「外国人=マナーを守らない人」等のように、一つの解釈のみでその属性の意味を考えている
        • この意味合いでも人間として見ていない
  5. ナショナリズムとアイデンティティー
    少なくとも二種類の愛国心教育が考えられる
    1. 属性の重要度
      儀式などを通じて、子どもたちのこころの中での「日本人」や「アメリカ」という属性の重要度を上げようとするような教育
      • メリット
        • 団結が強くなる
        • 「国民」として指導者に従う
      • デメリット
        • 「我々」を強く意識すると「彼ら」を過度に意識すれるかも知れない
        • 戦争につながる場合がある
          戦争には人間性の否定が必要。相手を一つの属性のみを通してみることは人間性の否定への第一歩。
    2. 属性の意味
      国の良い伝統や偉人について教えるような教育
      • メリット
        • 継続すべき伝統などに関する理解が深まる
        • 外国人とその知恵等を共有できる
      • デメリット
        • 傲慢にならないように注意する必要はある
  6. 属性の重要度や意味について思い込まないためには、多くの属性は社会的に構築されていることを覚えておくと良い
  7. 生理学的な特徴 社会的に構築された概念

    (社会的位置づけ・規範)

    肌の色など 「人種」
    性別 ジェンダー
    年齢 「子ども」など
    障害 「障害者」

  8. まとめ
    1. 自他のアイデンティティーは属性の認識の仕方できまる
    2. 人の交流するときに、相手のアイデンティティーを理解しようとしよう
    3. 属性の重要度や意味について思いこまないようにしよう
    4. アイデンティティーの概念について考えること、は外国人と付き合いのみならず、さまざまな人との付き合い方やナショナリズムなどについて考える上で役に立つ

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